電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第366回

今や日本の半導体設計人材の70%がソニーの仕事をしている


~パナソニック撤退の中で大阪に新たなデザインセンター~

2020/1/17

ソニーはCMOSイメージセンサーで躍進中(ソニーのニュースリリースより「IMX530」画像抜粋)
ソニーはCMOSイメージセンサーで躍進中
(ソニーのニュースリリースより
「IMX530」画像抜粋)
 「これは驚くべきことだ。今や日本の設計エンジニアの70%がソニーの半導体およびその関連の仕事に従事している。いよいよソニー半導体はキオクシア(旧東芝メモリ)を抜いて売り上げ国内トップに躍り出るのであるが、デザインの分野でもエンジニアリングを強化しているのだ」

 昨年末に開催された日本半導体設計ベンチャー協議会のセミナー後の交流会で、ある設計ツールの大手幹部が語った言葉である。さようまことに、ソニーの半導体はついに売り上げ1兆円突破が確実であり、初の国内トップになろうとしているが、設計エンジニアにとっても重要な会社として、その姿が明確化してきている。

 ソニー半導体の黄金武器とも言うべきCMOSイメージセンサーの上ぶれ間違いなし、との予想から、アナリストの業績予想は軒並み強気になっている。すでに株価は7400円台であり、これは17年ぶりの高値の領域に入っている。かなり多くの証券会社がソニー株価の1万円突破を予想しており、半導体デバイス株の中では「ひとり勝ち」の様相を見せている。

 ソニーの株式時価総額は9兆4000億円台にあり、2000年につけた10兆円台に迫っている。まさに、ソニーのミラクル復活劇なのである。東日本大震災の直後である2012年頃には、同社の株式時価総額は1兆円を割り込んだ。「ソニーのエレキはもうダメだ」「ついにソニーもフツーの会社に成り下がった」などの酷評が飛びかっていたのだ。それからたったの8年間で株式時価総額を9倍に上げてきた。サプライズとも言うべき出来事なのである。

 ソニー大復活の世評が高まる中で、ひっそりと半導体事業から撤退した会社がある。何あろう、その会社こそソニーの宿年のライバルであるパナソニックである。同社も半導体に多くのテコ入れをして存続を図ろうとはしてきた。システムLSI事業を切り離し、北陸3県の工場をタワージャズとの合弁にして切り盛りしてきたが、ついに力尽きた。事業を台湾のヌヴォトン社に売却し、半導体60年の歴史に幕を下ろすことになる。

 筆者はかなり昔のことであるが、パナソニック(その頃は松下電子工業)の新潟県新井工場で講演をさせていただいたことがある。何と新井工場の全従業員を体育館に集めての講演であった。女子工員さんたち(昔で言えばトランジスタガール)もいっぱい来ていて、そのキラキラと輝いていた眼は決して忘れない。講演を主催したのは何と労働組合であった。講演後に組合幹部および工場長たちとの懇親会になったが、「半導体こそこれからの明日を切り開く宝物。工場に働くすべての人たちにこのことを伝えたかった」という彼らの発言。これもまた、今となっては痛切であるが、決して忘れない。

 さて、ソニーはパナソニックの半導体撤退という状況下で、新デザインセンターを大阪に設けることを決めた。口の悪い向きは「パナ半導体の残党狩りでしょ」などと言っているが、パナソニックはソニーの得意とするCMOSイメージセンサーにも注力しており、秀れたエンジニアの仕事先がなくなってしまったことに対する救済と言えなくもない。

 韓国勢はここに来て、ソニー追撃の狼煙を上げている。サムスンはこのセンサーの分野でソニーに次ぐ2番手であるが、設備投資強化を検討している。SKハイニックスは、ソニーからの人材引き抜きに成功し、日本国内に同センサーの開発センターを作ることになった。

 こうした動きに対し、ソニーはパナの人材も引き連れて、ニッポン大連合でこれからの激 戦に挑む考えなのであろう。

 詳しくは、泉谷渉/川名喜之の共同執筆による『伝説 ソニーの半導体』(2019年12月2日発刊、定価3500円+税、版元は産業タイムズ社)を参照いただきたい。法人のお客様からのお申込みはTel.03-5835-5892(販売部)。個人のお客様からのお申込みは富士山マガジンサービス Tel.0120-223-223(fujisan.co.jp)。書店、アマゾンでも購入可能。サンプルはWebにて公開中(https://www.sangyo-times.jp)。


泉谷 渉(いずみや わたる)略歴
神奈川県横浜市出身。中央大学法学部政治学科卒業。35年以上にわたって第一線を走ってきた国内最古参の半導体記者であり、現在は産業タイムズ社 社長。著書には『自動車世界戦争』、『日・米・中IoT最終戦争』、(以上、東洋経済新報社)、『これが半導体の全貌だ』(かんき出版)、『心から感動する会社』(亜紀書房)、『君はニッポン100年企業の底力を見たか!!』(産業タイムズ社)など27冊がある。一般社団法人日本電子デバイス産業協会 理事 副会長。全国各地を講演と取材で飛びまわる毎日が続く。
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