電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第365回

九州は今や巨大なカーアイランドでデバイスとクロスオーバー


~福岡モーターショーではEV、ハイブリッドの展示が圧倒的~

2020/1/10

 「EV(電気自動車)ユニットは主に、PCU、モーター、そしてギアボックスで構成されており、これがリチウムイオン電池などのバッテリーと連動しています。電気自動車を走らせる心臓であり、筋肉であるのがEVユニットなのです。この複雑な構造を作り上げる技術をよく見ていただきたいと思います」

アイシンAWの150KW・EVユニット
アイシンAWの150KW・EVユニット
 こう語るのは、福岡モーターショー2019(2019年12月20~23日にマリンメッセ福岡などで開催)に出展されていたアイシン・エイ・ダブリュ(以下、アイシンAW)の説明員の方であった。筆者はひたすらこのショーを、一般ウケのする新車を展示するイベントであると思っていたが、実際にはアイシンAWをはじめとする車載ティア1メーカーや材料メーカーなども多く出展していた。

 材料メーカーでは、まさに100年企業である帝人グループがテクノロジーサプライヤーとしてコラボレーションしているAEV ROBOTICS社との共同技術を展示していた。市場ターゲットを「LS-EV」として、シンプルかつ大胆な発想力を持つ技術・工業デザインを特徴としているものであり、帝人が追求する徹底的な軽量化ソリューションとマテリアル技術をPRしていた。チャージフリーにより、充電ステーション不要な「Well to Wheel ゼロエミッションLS-EV」の開発に挑戦しているのだ。

 トヨタは、レクサスのEVおよびハイブリッドを展示しており、さらに燃料電池車も出すというフルラインアップで臨んでいた。レクサスのところの人だまりはものすごいものがあり、来場者の関心の高さを表していた。トヨタの場合、超高級車レクサスについてはその約6割を九州で作っているだけに、福岡をはじめとする北部九州の自動車集積の厚みを感じさせる会場風景であった。

 また、プラグインハイブリッド版のプリウスも展示されており、そこにも多くの人たちが訪れていた。このタイプであるならば、中国政府も認めるエコカーがEVよりはるかに安い価格で実現できるだけに、いわばトヨタにおけるエコカーの大本命とも言えるものだ。

 注目されるのは、燃料電池車「MIRAI」である。水素を空気中の酸素と化学反応させて発電した電気で走るMIRAIは、これまで世界で1万台の販売実績を持っている。MIRAIの次期型開発モデルが展示されており、FCシステムはすべてが一新され、水素の搭載量はかなり拡大している。何よりも、従来比約130%延長の航続距離達成が計画されている。

 日産もインテリジェントモビリティという世界観を十分にアピールしていた。軽自動車規格の小型EVのコンセプトカーとなる「日産IMk」を展示しており、都市部の景観や日本の伝統的な街並みにも自然に溶け込むようなデザインのコンパクトボディが魅力であった。これは、ヨーロッパの細い路地を走るにも向いているな、と思わせる作りであった。2010年度の初代モデル誕生以来、世界で累計43万台以上の販売を達成したのがニッサンの電気自動車「リーフ」である。新たにラインアップに加わった「リーフe+」はバッテリーを従来の40kWhから62kWhへと大容量化してきた。

 ホンダの場合は、2001年の発売開始以来、世界で750万台以上を販売してきたFITが第4世代へと進化を遂げている。安全運転支援システム「Honda SENSING」の最新機能や「e-HEV」と名付けられた2モーターシステムの搭載(ハイブリッド車)に加え、車載通信モジュール「Honda CONNECT」の採用など、グローバルモデルとしての商品力を強化している。

 2020年に創立100周年を迎えるスズキは、今回のショーには2台のコンセプトカーを出展した。家族3世代が共感し、楽しさをシェアできる車である「WAKUスポ」と、車体の前後という概念を無くした斬新なスタイル「HANARE」は自分の部屋のように車内空間を自由にカスタマイズできる、という工夫を凝らしている。

 トヨタテクニカルデベロップメントは、自動運転開発を支える車載計測をテーマにした展示で関心を集めていた。4Kカメラなどの高機能カメラを駆使し、車載Ethernet/CAN-FD対応の自動運転制御の方法論がわかる内容であった。そして、「MILS/SILS向け高速シミュレータ」も出展しており、これは、車両、環境、センサーモデルをCPU、FPGA、GPUに分散して高速化を図るものだ。ちなみに実績としては、CPU+FPGAでは、通常のCPUに比べて約10倍の高速化が図れている。GPU+FPGA+GPUでは、LiDARの点群計算(約25万点)をGPU実装し、これまた100倍以上の高速化を図っている。

 かつて九州はシリコンアイランドとして世界の半導体生産の多くを集積していたが、ここに来ては、まさに巨大なカーアイランド九州とも言うべき状況になっている。九州の最大の強みは、どでかい消費地である中国、さらには将来のインド、そして朝鮮半島から台湾などのアジアに直結する近さにある。そしてまた、車載マイコントップのルネサスの主力工場が熊本にある。将来の自動運転に貢献するソニーのCMOSイメージセンサーの量産工場が長崎、熊本、大分に配置されるなど、自動車向けデバイスと完成車工場、そして研究開発拠点がクロスオーバーすることが九州の最大武器であり、今後の飛躍的発展が大いに期待できると思えてならなかった。


泉谷 渉(いずみや わたる)略歴
神奈川県横浜市出身。中央大学法学部政治学科卒業。35年以上にわたって第一線を走ってきた国内最古参の半導体記者であり、現在は産業タイムズ社 社長。著書には『自動車世界戦争』、『日・米・中IoT最終戦争』、(以上、東洋経済新報社)、『これが半導体の全貌だ』(かんき出版)、『心から感動する会社』(亜紀書房)、『君はニッポン100年企業の底力を見たか!!』(産業タイムズ社)など27冊がある。一般社団法人日本電子デバイス産業協会 理事 副会長。全国各地を講演と取材で飛びまわる毎日が続く。
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