普段はデベロッパーや小売、外食、サービス企業などを取材しているが、珍しくロボット関連企業を取材する機会があった。その会社のロボットは商業施設などでも運用されているのだが、デベロッパーやテナントではない人は、商業施設がどう進化、変化すると予測しているのか気になった。ということで、「この先、商業施設はどうなると思いますか」と聞いたら、申し訳なさそうに「いらなくなるでしょ」と言われた。
確かに、店舗のショールーミングは当たり前になったし、服をネットで購入する人も増えた。食事だってUber Eatsが自宅まで運んでくれる。ビデオレンタル店は、Netflixなどの動画配信サービスが台頭したことで厳しさを増している。商業施設は逆風が強まるばかり。“逆風”と表現すると、いずれは風が止みそうな気もするが、おそらくこの風が止むことはない。オーバーストアもあって、商業施設の新設数は減っている。だが、六本木を訪れると、商業施設の価値とポテンシャルを感じることができるのだ。
六本木で商業施設と言えば、「東京ミッドタウン」「六本木ヒルズ」だろう。両施設とも食、ファッション、サービス系など様々な店舗が揃い、開業以来賑わっている。ここで注目したいのは、両施設とも都内屈指の大型オフィスを併設していること。いずれのオフィスも高稼働で推移していると聞く。ただし、オフィスが六本木にあるメリットはそこまで多くはない。例えば渋谷のようにIT関連など特定の業種が集積するわけでもなく、交通アクセスが特別良いわけでもない。
では、なぜこれらの施設に入居するのか。昨年の終わりごろ、東京ミッドタウンを取材したのだが、入居者は“六本木”よりも“東京ミッドタウン”という施設そのものを評価してくれる企業が多いという。東京ミッドタウンの評価ポイントを考えると、上質な商業施設やザ・リッツ・カールトン東京、ガーデンなどによって形成されたブランドだろう。両施設とも、オフィスのみの用途だった場合、果たしてどうなっていたか。つまり、商業施設はエリアの賑わいなどを創造し、オフィスなどの価値を上げる力がある。
日本橋では商業施設「コレド」が開業して
街が賑わうようになった
(写真はコレド室町テラス)
ところ変わって、東京・日本橋エリアや福岡・博多駅前でも同じだ。両エリアとも、以前は商業施設が少なく、平日は会社員が多かったが土日は閑散としていた。日本橋は「コレド」シリーズ、博多駅前は「JR博多シティ」といった商業施設の開発で平日・休日問わず賑わうようになった。これに伴い、エリアの価値も上がり、オフィスの価値も上がっただろう。
そうなると、低層にある商業施設は“稼ぐ”よりも“賑わいやブランドイメージ”を形成し、高層のオフィスなどで稼ぐというビジネスモデルが増えていくかもしれない。イオンモールが開発している「(仮称)ノリタケの森プロジェクト」は、モールとオフィスを複合する施設として話題を集める。モール部分などで賑わいが創出できれば、エリア全体の活性にもつながり、オフィスのリーシングなどに役立つはずだ。ショッピングモールはファッションの売り上げが減少傾向にあり、この減少分をどう確保するかが課題となっている。ノリタケの森プロジェクトが成功すれば、“稼げるビジネスモデル”として同様の案件が増えていくかもしれない。