SDGsという言葉を耳にしたことはあるだろうか。「持続可能な開発目標」の略称で、2015年の国連サミットで採択された、環境保護や社会的平等を重視しながら開発を行うための目標で、17のグローバル目標と169のターゲットからなるものだ。近年は政府機関だけではなく、民間企業もSDGsへの貢献を掲げ、施設の省エネやジェンダー平等、持続可能な資源利用などに取り組んでいる。このSDGsを、先日、意外なところで意識するきっかけがあった。
11月22日に、渋谷の代表的な商業施設である「渋谷PARCO」がリニューアルオープンした。充実したファッション店の集積や、任天堂初の直営ショップ「ニンテンドートウキョウ」などが各メディアで大きな注目を集めたが、その他の部分も見逃せない。開業に先立って行われた内覧会で多くの人を集めたのは、地下1階に展開した「カオスキッチン」ゾーンだ。同ゾーンは「食・音楽・カルチャー」をコンセプトに、飲食テナントのほか占いコーナーやフェスショップ、レコードショップなどをミックスして独特の雰囲気を作り出した。
その中でも特異な店が「米とサーカス」だ。高田馬場で1号店を開業した同店では、よくあるシカやイノシシだけではなく、アナグマやラクダ、ダチョウなどを提供するジビエ料理で人気を集めていた。そしてもう一つの目玉が、虫である。つまり昆虫食だ。
この昆虫食メニューは、渋谷PARCO店でも健在で、内覧会でイナゴの佃煮、ゲンゴロウやタガメの素揚げが展示されていた。店員の話によると、タガメはさわやかな味がして美味しいとのことだ。タガメを食べることはなかったが、同時に展示されていたコオロギバーガーは実際に食べてみた。パテの肉にコオロギを混ぜたもので、食べてみるとコオロギが入っているとはあまりわからないものだった。ただ食べてからしばらくすると、これはコオロギの破片かもしれない、という感じのものが口の中に残るのだが……
この「米とサーカス」が何故、最先端の商業施設である「渋谷PARCO」に出店することになったのか。スタッフの人に聞いてみると意外な答えが返ってきた。近年様々な企業が「持続可能な開発」を意識しており、その点でパルコも例外ではなく、これまで使われていなかった獣肉や昆虫などを提供するこの店にスポットが当たったのではないか、と。なるほど、確かに農業や畜産業に使われるエネルギーの規模は馬鹿にならないという話はよく聞くところであるし、牛肉の代わりに昆虫を食べれば、その分環境保護に貢献できるのかもしれない。これからの地球と人類の未来を考えて生きたい人々は、積極的に昆虫を食べていくのも一つの選択肢かもしれないと思う経験だった。