（株）フェローテックホールディングス（東京都中央区）は、中国・浙江省杭州市に半導体用のシリコンウエハーの加工工場を稼働させる。11月下旬から200mmウエハーの生産、2020年1月以降に300mmウエハーの試作生産を始める。代表取締役副社長の賀賢漢氏に半導体用ウエハー事業を中心として今後の事業戦略を伺った。

―― まず今年の業績目標について。
　賀　前期（19年3月期）の売上高は894億円だった。このうち日本での売上高は全体の19％、欧米は35％、中国は41％で地域別で最多となった。今期（20年3月期）の売上高は、半導体市況低迷の影響もあり、前期比5％減の850億円を見込んでいるが、来期は半導体市場の伸長から増収を予想する。
　製品別では、石英やセラミックスなどの半導体製造装置用パーツの売上高が最も多い。半導体用ウエハーの売上高はまだ少ないが、将来は200億～250億円規模に発展させたい。

―― 現在のウエハー工場の生産体制は。
　賀　中国の寧夏回族自治区銀川市にインゴット工場、上海市宝山区にウエハー工場を展開している。銀川工場は150mmと200mm、300mm口径のシリコンインゴットを引き上げている。150mmと200mmインゴットは銀川工場でウエハー状態にスライス加工し、上海工場で残りの加工を施している。
　上海工場はウエハーのべベル面（エッジ部分）の機械研削やウエハー両面を平行にする粗研磨（ラッピング）、ウエハー表面上についた機械加工ダメージ（破砕層）を取り除く化学的エッチング、ウエハー表面の凹凸をなくして平坦度の高い鏡面に仕上げる研磨（ポリッシング）を行っている。月産能力は150mmが40万枚、200mmは10万枚だ。

―― 杭州の新工場について。
　賀　杭州工場の300mmラインには180億円を投資する。銀川工場で結晶成長させた300mmインゴットを杭州工場に移し、スライス加工から先の工程を杭州工場で行う。杭州工場は200mmと300mmの生産ラインの最終立ち上げ調整段階にある。11月22日に竣工式を開催する。200mmは最終的に全3ライン（月産能力35万枚）を計画している。今回はまず第1ラインを立ち上げる。

―― 300mmウエハーの製造について。
　賀　杭州工場では、当社としては初めて300mmウエハーを正式に生産する。まず月産能力3万枚のウエハー加工以降の試作ラインを構築し、品質や歩留まりなどの状況を見ながら能力増強を行う。工場棟のフロア面積ベースでは月産能力20万枚まで拡張が可能だ。中国では新規の300mm工場が次々に立ち上がっている。これらの新興メーカーが当社の有力な営業ターゲットになるだろう。

―― 再生ウエハー工場の計画について。
　賀　中国では中国資本のメモリー工場やレガシー半導体（300mmの90nm）工場の立ち上げラッシュが続いている。これらの新規工場は、量産開始前に製造ラインの安定化のために大量のモニターウエハーを使用する。そのために必要な再生ウエハーの需要が増加しており、当社は安徽省銅陵市に再生ウエハー工場を建設することを決めた。当社既存のウエハー事業のリソースや精密再生洗浄事業のノウハウを転用することができ、また既存事業との親和性も高い。将来的にシナジー効果が期待できると判断した。
　当初の資本金額は5億元（約76.7億円）で、当社の上海子会社が70％、銅陵市政府傘下の投資ファンドが30％を出資する。銅陵市からは工場用地の確保や生産ラインの立ち上げなどで大きな支援を受ける。
　銅陵工場は10月後半に着工し、20年末までに竣工予定。最終的な月産能力は20万枚を計画している。

―― 中国事業での目標は。
　賀　中国政府は「中国製造2025」で先端半導体の国産化計画を掲げている。同文書には、いつの時点で国産化率がどれくらいになると具体的な数値目標が書かれているが、この数値に関しては立場によって多くの見方があるだろう。しかし、中国政府が半導体の国産化に本気なのは疑う余地がない。これには半導体だけでなく、装置や材料の国産化も含まれる。
　中国は最終的に半導体の現地サプライチェーンを構築するようになるだろう。当社は中国で遅れている300mmウエハーの量産化にいち早く取り組み、将来は中国でナンバーワンのウエハーメーカーになりたいと考えている。