電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第358回

中国半導体産業は米中貿易戦争下においても6年間20%成長


~SEMI China 2019訪日ツアーが語る日本と中国との絆の深さ~

2019/11/8

 米中貿易戦争が長期化し、かつ激化する状況下にあって、SEMI China 2019訪日ツアーが2019年10月に開催された。今回のツアーは仙台を中心に東北エリアを回るというものであり、産業タイムズ社はこの企画に全面賛成し、かつ特別協力というかたちで参加させていただいた。

 「中国の半導体産業は2014年から2020年の間に毎年20%成長で伸び続けている。2013年当時には300億ドル程度であった規模は、2020年には1430億ドルまで行く見通しだ。つまりはほぼ5倍規模に上昇しているわけであり、世界のあらゆる国の中でこれだけの伸びを示している例はない」

 こう語るのはSEMI Chia代表の居龍総裁である。10月21日午後に仙台において開催された、SEMI China主催の中日半導体関連企業交流会の冒頭における挨拶での発言だ。

 2018年に4700億ドルまで膨れ上がった世界の半導体産業は、2019年にいたって大きく失速した。世界ランキング1位の米インテルはマイナス2%(前年比)、2位の韓国サムスンはマイナス33%(同)と大きく後退しており、3位の台湾TSMCもマイナス9%(同)となっている。おそらく2019年の世界半導体は、少なくとも前年比マイナス15%以上はいくと思われる。とりわけメモリーの不況と投資の低迷が響いている。

 中国においてはやはり、半導体工場のゴールドラッシュが続いていることが最大のインパクトであろう。一方で、中国のIC設計は世界シェアで言えば12%くらいしかなく、伸びもそれほど大きくはない。これに対して米国のIC設計は世界シェア59%を持っているわけであるから、やはり半導体王国の米国に対しては、設計という点で中国は後れをとっている。ただ、合肥をはじめとする各エリアで雨あられの半導体投資が断行されているという事実に変わりはない。

 「半導体設備投資において中国が積極的であるばかりではない。中国は巨大な半導体の消費国であり、要するに世界で一番半導体を使う国であるからして、この存在の重要性は変わることがない。ただ、懸念すべきはやはり米中貿易戦争である。今後の見通しについても実に不透明であり、これが与える影響は決して少なくないわけであるから、ウォッチングを続けていく。しかして、これは政治的な側面が大きいために、我々半導体業界がどうやってもコントロールできる問題ではない。ここに深い悩みがある」(居龍総裁)

 今回の訪日ツアーでは合肥、上海、天津、瀋陽など様々なエリアからキーパーソンが多く訪れた。筆者もこの交流会の冒頭に講演をさせていただいた。日本企業も三菱電機、安川電機、レーザーテック、新川、JSR、トクヤマ、AGCなど多くの方が参加され、実に和やかな交流会となったのだ。

SEMI China 2019年訪日団の中日半導体関連企業交流会の様子
SEMI China 2019年訪日団の
中日半導体関連企業交流会の様子
 あちこちで交わされる話題としては、やはり米中をめぐる貿易摩擦がいつまで続くのか、ということがかなり多かった。そしてまた、これを跳ね返して中国は成長しなければならないという意見も多かった。中国は設備投資について、これからも決して手を抜かないとの気勢も上がっていた。また、日本企業は韓国との間で様々な問題を抱えており、なおかつ米中問題でも苦しみながら、それでもIoT革命を推進する最大の核弾頭は半導体なのだという意識が非常に強く表明されていた。

 「日中の絆は非常に深いと思っている。とりわけ日本企業は半導体製造装置や素材の分野で非常に強いわけであるからして、中国としてはこれからも親密な付き合いを続けていきたいと思う。中国は半導体については80%の材料を輸入しているのが実状だ。やはりこの分野は日本の企業が長い伝統と技術力を持ち、強いことが確かだ」(居龍総裁)

 また、会場にいるすべての人が祈念していたのは、2020年における半導体市場の回復だといってよいだろう。今のところは10%ぐらいの成長を果たすと言われているが、これもまた米中貿易戦争がさらに激化するようであれば、シナリオが狂ってくる。しかしながら、最近ではかなり凍結されていた半導体設備投資が、一部解禁されて発注する動きが表面化してきている。メモリーの在庫指数もかなり減ってきた。そしてまた、価格についても下げ止まりの様相が出てきている。

 2020年はやはり5G高速、次世代自動車、そしてさらにはエッジコンピューティングが半導体需要を引っ張ることは間違いないだろう。スマホの頭打ち状況はあるものの、複合化していくIoT社会が半導体のベースを支えていく方向性はこれからも続いていく。「来年が良い年でありますうように」という思いが込められ、この交流会は終了した。

 しかしながら、あれだけ伸びていた中国の自動車は新車販売台数でこの1~8月は前年同期比11%減という状況である。新築住宅件数についても前年同期比8.6%減となっており、高速鉄道などのインフラ特別債はすでに底をついている。決して予断は許さないのが、中国の現状ではあるのだ。


泉谷 渉(いずみや わたる)略歴
神奈川県横浜市出身。中央大学法学部政治学科卒業。35年以上にわたって第一線を走ってきた国内最古参の半導体記者であり、現在は産業タイムズ社 社長。著書には『自動車世界戦争』、『日・米・中IoT最終戦争』、(以上、東洋経済新報社)、『これが半導体の全貌だ』(かんき出版)、『心から感動する会社』(亜紀書房)、『君はニッポン100年企業の底力を見たか!!』(産業タイムズ社)など27冊がある。一般社団法人日本電子デバイス産業協会 理事 副会長。全国各地を講演と取材で飛びまわる毎日が続く。
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