電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
新聞情報紙のご案内・ご購読 書籍のご案内・ご購入 セミナー/イベントのご案内 広告のご案内
第348回

ルネサス セミコンダクタ マニュファクチュアリング(株) 代表取締役社長 小澤英彦氏


那珂200mmでパワー半導体増産
工場のスマート化さらに推進

2019/11/8

ルネサス セミコンダクタ マニュファクチュアリング(株) 代表取締役社長 小澤英彦氏
 車載マイコンの世界最大手であるルネサス エレクトロニクス(株)は、100年に一度といわれる大変革期を迎えた自動車産業において、CASE化の中核をデバイス技術で支えている。その製造子会社であるルネサス セミコンダクタ マニュファクチュアリング(株)(茨城県ひたちなか市堀口751、Tel.029-272-3111)は、国内に6工場を運営する前工程の統括会社だ。7月に代表取締役社長に就任した小澤英彦氏に本社那珂工場で話を伺った。

―― ご略歴から。
 小澤 1985年に三菱電機に入社し、北伊丹製作所の試作開発ラインに配属され、主にリソグラフィー工程の開発を担当した。DRAMやSRAMの量産立ち上げに携わり、95年には熊本製作所に8インチラインを立ち上げた。2001年に北伊丹製作所に復帰したが、03年のルネサス テクノロジ発足に伴って那珂工場へ移り、300mmウエハープロセスの研究開発を手がけた。

―― 以後はずっと那珂工場にご勤務ですね。
 小澤 11年の東日本大震災時は生産技術部長の任にあり、多くの方の協力を得ながら主に300mm工場の復旧に携わった。その後、開発副統括部長、那珂工場長を経て、7月から現職を拝命している。那珂工場に15年以上在籍しているが、常にお客様に「モノを作ってほしいと思っていただける工場」、従業員が「ここで、モノづくり」をしたいと思える工場にしたいと思っている。

―― 那珂工場について詳しく。
 小澤 当社の前工程能力は合計で200mm換算26万枚あるが、那珂工場はこの約4割を担い、200mmで月4万枚弱、300mmで月5.5万枚生産している。東京ドーム約4個分の広さに、建屋としてWLP(Wafer Level Package)とテスト工程を手がける3000m²×2の「N1」、200mmウエハー工程の「N2」(4500m²×3)、300mmウエハー工程の「N3」(1万2000m²×2)、ウエハーテストの「NS」(200mm、2000m²×2)と「NT」(300mm、1500m²×4)がある。

―― 生産品目や用途別の構成比について。
 小澤 まず300mmに関しては、枚葉処理を主体として車載用78%、産業・民生用14%、OA・PC向け7%、モバイル用1%という構成にある。150~40nmプロセスのマイコンをメーンに生産しており、先ごろ車載用ミックスドシグナルを90nmプロセスで立ち上げたところだ。また、SOIウエハーを用いた独自プロセス「SOTB」(Silicon on Thin Buried Oxide)で民生用省エネデバイスも一部量産に移行している。今後は90nmのBCDプロセスを増やしていくつもりだ。

―― 200mmについてはいかがですか。
 小澤 もともと0.5μmプロセスの16M DRAM工場だったが、現在は0.15~0.35μmプロセスに対応している。マイコンやASICも作ってきたが、今は車載用のパワーMOSおよびIGBTといったパワー半導体を増やしている。1年前はパワー半導体とマイコンの比率が半々だったが、現在はパワー半導体の方が多い。特にIGBTの生産を拡大しており、ゆくゆくはパワー半導体の生産がさらに増える可能性がある。

―― 米中貿易摩擦で自動車の販売が世界的に低調です。
 小澤 中国で売れ行きが落ちており、先行きを注視しているが、現在のところほぼ想定の範囲内だ。当社も一時はラインの長期稼働停止を検討したが、実際は当初の想定ほど休まずに来ている。ただし、那珂工場の稼働率は年初からずっと200mm、300mmともに6割前後で推移しており、当面はこの稼働率を維持することになりそうだ。

―― 他の工場の状況や開発面について。
 小澤 8インチでマイコンを手がける熊本川尻工場の負荷が高い状態が続いており、西条工場でマイコンの投入を増やし、パワー半導体は那珂工場にシフトしている。

―― 設備投資や改善活動について。
 小澤 合理化投資を中心として、スマートファクトリー化に注力している。設備にセンサーを追加し、異常を事前に検知して不良率を10分の1にすることに取り組んでおり、那珂工場から他工場へ順次展開する。従来は人が判定していた作業を、AIとマイコンによってエッジで判定できるようにしていく。
 また、設備の待ち時間低減やリードタイム短縮にも努めており、年間30%の改善を目標に掲げている。これにより生産TATを従来の90日から60日に短縮できており、今後も変化により追従できる体制を整えていく。

(聞き手・編集長 津村明宏)
(本紙2019年11月7日号1面 掲載)

サイト内検索