電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第357回

「電子デバイスとは何か」と聞かれて答えられない人は意外と多い


~11月20~21日に開催するNEDIA第1回研修講座は基礎を知るための道標~

2019/11/1

 「半導体とは何か」と聞かれて、即答できる人は意外に少ない。ストレートに言えば、半導体とは直接的に電子回路のことを指すのではない。要するに、物性のことを言っている。

 電気抵抗が大きいものを絶縁体と呼び、これが小さいものを導体と呼ぶわけであるが、その中間に存在しているから半導体と呼ばれるのだ。導体の代表的なものは、金、銀、銅、鉄、アルミニウム、クロムなどであり、抵抗が小さいわけであるから電気は流れやすい。一方、絶縁体の代表的なものはガラス、天然ゴム、セラミック、油、プラスチック、パラフィンなどである。

 絶縁体と導体の真ん中に位置する半導体は、代表的なものとしてシリコン、ゲルマニウム、スズ、セレンなどがあり、このうち最も多く用いられている物質は周知のようにシリコンである。つまり半導体とは、電気を通す抵抗率によって分けられる基礎的な物質を指していた。

 しかし最近では、この基礎物質を用いて作る電子回路を半導体と呼ぶケースが多くなってきている。本来ならば、半導体デバイスと呼ぶべきであるが、もはや用語の定義づけは曖昧になっており、半導体と言えば電流を増幅したり、電流の流れが変えられたり、またはコントロールしたりすることができる電子回路のことを指してしまうようになってきた。

 それはともかく、「電子デバイスとは何か」という質問に対しても、答えられる人はこれまた意外と少ない。電子デバイスは大きく分けて、半導体、電子ディスプレー、一般電子部品の3種類に分けられる。半導体は論理回路(ロジック)、記憶回路(メモリー)、アナログ回路、ディスクリートに大別される。電子ディスプレーは、主流が液晶デバイスであり、最近では有機ELが台頭してきている。第3のディスプレーと呼ばれるマイクロLEDも注目を浴びてきている。

 一般電子部品は、要するに半導体でもディスプレーでもないものをすべて一緒くたにして分類して定義づけているだけであり、その種類はすさまじく多い。注目を集めるものとしては、コンデンサー、プリント回路、コネクターなどがあるが、それ以外にも各種センサー、インダクター、スイッチ、電源などあまりに多すぎて、とてもではないが一言で言えない。

 ちなみに、それぞれの市場規模を言えば、半導体が一番大きくて2018年ピークで50兆円、次いで一般電子部品が25兆円、さらに電子ディスプレー15兆円と続いている。つまりは、電子デバイスと言われるものは現状で90兆円の巨大マーケットを築いており、IoT時代を迎えて、中長期的には200兆円の巨大市場が見込まれている。

 さて、「電子デバイスとは何だ」を徹底的に追求する基礎研修講座が11月20日(水)10時~17時、11月21日(木)10時~17時の2日間にわたってお茶の水メッキセンター4F会議室(東京都文京区湯島1-11-10)で開催されることになった。主催は日本電子デバイス産業協会(NEDIA)である。筆者はこのプログラムを見せていただいたが、実に素晴らしい内容なので驚いている。

NEDIA第一回研修講座は会長の齋藤昇三氏がトップバッターで講演
NEDIA第一回研修講座は会長の
齋藤昇三氏がトップバッターで講演
 イントロにおいては、NEDIAの代表理事・会長(元東芝副社長)の齋藤昇三氏が「新しい時代を支える電子デバイスの全貌」と題して、超スマート社会における電子デバイス産業の全貌を解説される。そして、2番手には元三菱電機の半導体マーケティング部長である釜原紘一氏が電子部品、半導体、ディスプレーなどの発展の歴史とその応用分野について解説をされる。その後には、これぞ半導体の基礎を語らせたらこの人しかいない、という西久保靖彦氏が登場される。彼が執筆した多くの半導体の基礎を学ぶ本は、(筆者もむさぼるように愛読したが)まさにロングセラーとして知られている。

 2日間にわたって電子デバイスの基礎について多くのことが語られるわけであるが、その内容たるや実に魅力的と言ってよいだろう。タイトルを列記すれば、「IoTで高まるセンサー・モジュールの動向」「電子デバイスを活かす組み込みソフトウェア」「電子部品の基礎知識および特徴」「半導体のできるまでの製造工程」「半導体パッケージング、モジュール、プリント基板実装などの状況」、そしてまた電子デバイスの品質、信頼性、環境について元ソニーの相原孝氏が語るわけであるが、これはまさにレアなプログラムであり、筆者も聞いてみたいと思っている。

 このNEDIA第1回電子デバイス研修講座に付けられたサブタイトルは「これだけ知っていれば、あなたも電子デバイス関係者だ!」となっており、とにもかくにも、基礎を徹底的に学びたい人にとって絶好のプログラム内容なのである。筆者は今、半導体記者生活40年近くに及び、老朽化は著しく、頭も回らなくなり、表情もうつろになってきた。今回は、あの新人だった20代の頃の駆け出し記者時代を思い出して、この研修講座を聞いてみたいと切に思っている。

 なお、この基礎講座の参加費は2日間通しでNEDIA会員は3万円、協賛団体会員は4万円、一般は5万円となっている。詳しい問い合わせは、NEDIA事務局(Tel.03-5823-4465、E-mail:info@nedia.or.jp、URL=http://www.nedia.or.jp)まで寄せていただきたい。


泉谷 渉(いずみや わたる)略歴
神奈川県横浜市出身。中央大学法学部政治学科卒業。35年以上にわたって第一線を走ってきた国内最古参の半導体記者であり、現在は産業タイムズ社 社長。著書には『自動車世界戦争』、『日・米・中IoT最終戦争』、(以上、東洋経済新報社)、『これが半導体の全貌だ』(かんき出版)、『心から感動する会社』(亜紀書房)、『君はニッポン100年企業の底力を見たか!!』(産業タイムズ社)など27冊がある。一般社団法人日本電子デバイス産業協会 理事 副会長。全国各地を講演と取材で飛びまわる毎日が続く。
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