商業施設新聞
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No.727

生活スタイル動線


松本 顕介

2019/10/15

 生活スタイルによって、生活動線や関わる世界が大きく変わるのは世の常。小学校生活の6年間は長いという声を聞くが、筆者は途中引っ越しを経験しているので、環境が変わったという点でもアクセントになった。ちなみに東京都下から川崎市の新興住宅地に来たときは、まさに開発前夜とも言える状態で、更地が広がり何もなかった風景がまぶたに焼き付いている。それが今では、住宅が立ち並び、むしろ若い世代と生産年齢を過ぎた人たちの住み替えが課題になっているほどだ。なお、かつて住んでいた東京都下は、以前取材で訪れたところ、イオンモールが企業のグランド跡地に開業し、住んでいた公団団地はその後建て替えられ、土地区画整理事業が実施されたのであろう新しい道路が生まれていた。こちらもかつての記憶とは大きく変貌していた。

散歩は多くの発見がある
散歩は多くの発見がある
 小学生から話を戻すと、一貫校などを除き、中高大は3、3、4年と周期が短いため、場所、関わる人、嗜好もどんどん変わる。町内会レベルから区、市、全国へと広がり、地方出身の友人の発音やアクセントは新鮮そのものだった。だが、これが社会人になると、“10年ひとくくり”と言ってもいいほど、さほど代わり映えしない日々が続く気がする。気が付くと年男になっていたりするから注意が必要だ。だが、転勤や転職、結婚は大きな転機となるだろう。子どもが生まれたりすれば、新しい生活動線がまた生まれる。独身を謳歌していた時分は、都心に足が向かい、夜が長くなる。ショッピングも都心のセレクトショップだったが、子どもができると玩具店へ向かう頻度が増える。昔は街のおもちゃ屋だったが、今日ではトイザらスだ。特に小さいころはベビーザらスに通うことが増える。子どもの成長に連れて、だんだんベビーザらスからトイザらスに変わり、ベビーザらスの売り場から足が遠のく。やがてトイザらスも卒業を迎え、子どもも成長して、だんだんと手がかからなくなり、お互い親離れ子離れしていくのだ。

 そんな時、我が家にペットが来た。すると新しい生活動線が生まれた。ショッピングセンターに行けばペット売り場に顔を出すようになり、スーパーに行けばトイレシートの値段が気になる。アマゾンでも、ペット関連を検索するようになっている。

 そして、最も大きなものは散歩。新たな世界が一気に広がった感じだ。今まで通らなかった脇道や、決して曲がることはなかった家の角を曲がると、近所なのに新しい風景を見ることがあり、小さな感動を覚える。丁寧に庭の手入れをしている家や、昭和に建てられた家屋と思われるもの、最新テクノロジー満載と思われる家などなど。

 さらに、散歩をしていると知らない人への挨拶が急増し、声をかけられることも多い。ペットを媒介にこれほどまでに多くの人とコミュニケーションが取れるなんて想像だにしていなかった。いずれ別れが訪れ、その場所も通らなくなるときが来るが、今は今を楽しみたい。
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