商業施設新聞
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No.722

奈良の観光は市内から市外へ


北田 啓貴

2019/9/10

 JR奈良駅や近鉄奈良駅周辺を訪れると、ここ2~3年で訪日外国人を見かけることが当たり前になってきた。駅前や奈良公園周辺、電車で奈良から京都や大阪へ向かう車内でも、アジア系、欧米系問わず訪日観光客がいる光景が日常化している。これは数字の面でも明らかで、奈良市の資料によれば、2018年に奈良市を訪れた観光客数は265万1000人と、17年の199万人から33.2%増加しており、順調に数字を伸ばしている。

 開発面で見ても、奈良市内に外資系の高級ホテルのような注目案件が集中しており、市外への恩恵は少ないように感じられる。この背景について、奈良県のインバウンド政策の担当者は「まず、奈良県に来てもらう。そのために、ゲートウェイである奈良市内で開発が進んでいるのではないか」と話しており、この戦略は成功しつつある。

 だが、市外においては、市内同様に古墳や歴史的な建造物が数多く残っているにも関わらず、インバウンド効果は経済に影響していないようだ(例えば、奈良市の商業地の地価は訪日外国人の影響で上昇傾向にあるが、天理市では下落傾向が続いている)。

なら歴史芸術文化村の完成イメージ
なら歴史芸術文化村の完成イメージ
 この状況を打開する起爆剤となりそうなのが、県が天理市内で21年度の開村を目指し整備している「なら歴史芸術文化村」である。この施設は、建造物や考古遺物から彫刻・絵画などの美術工芸品が修復できる機能を集約化した複合施設で、修復作業の公開解説や体験の要素も取り入れることで、観光スポットとしての利用も期待されている。また、敷地内には産直レストランや直売所、伝統工芸品を販売する施設などに加え、隣接地に積水ハウスとマリオット・インターナショナルが「フェアフィールド・バイ・マリオット」のブランドで宿泊施設を開発する予定で、訪日外国人の利用者も期待できそうである。

 さらに、民間から市外の活性化に向けた新たな取り組みも生まれている。JR西日本では、奈良駅から高田駅を結ぶ万葉まほろば線・和歌山線における新型車両227系の投入完了(9月30日)に伴い、万葉集の歌碑などが数多くある「山の辺の道」を歩く「(仮称)JR万葉まほろばウォーク」や、近畿大学経営学部商学科名渕ゼミと連携した桜井市の「三輪エリア」への誘客キャンペーンを実施する。そのほか、以前から検討されていた奈良県明日香村に開発する星野リゾートの宿泊施設についても、23年の開業を目指して計画が進んでおり、誘客する材料は出揃いつつある。

 県内では、以前から観光客の宿泊日数が少なく、課題とされてきた。その要因は、宿泊施設の不足だけではなく、奈良市以外の地域の魅力が十分認知されていないこともあると筆者は考えている。奈良市内から奈良市外へ。大型施設の開発や民間も巻き込んだ誘客施策により、奈良県内全体の経済が観光で潤っていくことを期待したい。
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