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第339回

ソニーセミコンダクタソリューションズ(株) 車載事業部 副事業部長 春田勉氏


技術優位性でさらなる差別化
大手ティア1と緊密連携

2019/9/6

ソニーセミコンダクタソリューションズ(株) 車載事業部 副事業部長 春田勉氏
 昨今の自動車市場では、ADAS(先進運転支援システム)の搭載率が急速に増加するとともに、将来の自動運転(レベル4/レベル5)の実現に向けて、様々なセンシング技術の開発が進められている。なかでも、車載カメラ(イメージセンサー)は、ビューイングやセンシングなど複数の機能を実現でき、車載センシングシステムのコアとして重要な役割を担っている。ソニーセミコンダクタソリューションズ(株) 車載事業部副事業部長の春田勉氏に、車載用CMOSイメージセンサー(CIS)ビジネスの概要、今後の成長戦略などについて伺った。

―― 車載用CISのサプライヤーとしては後発になりますね。
 春田 当社の一般民生向けCISは、以前からリアビューカメラ向けなどで採用いただいていたが、2014年10月に車載グレード(AEC-Q100)に対応した「IMX224MQV」(127万画素)を初めて商品化するとともに、16年1月には「車載事業部」を立ち上げ、本格参入への一歩を踏み出した。

―― 同製品の特徴・優位性について。
 春田 IMX224MQVは、車載向けに高感度なセンサーを提供することを目的に開発したもので、光を電子に変換する効率を高めたフォトダイオードを採用。これにより、人の眼で見えにくいような暗闇相当の環境下でも、非常に高画質な映像の撮影を可能としている。
 自動車事故対策機構が、「平成30年自動車アセスメント」(5月30日付)の評価結果を公表しているが、そのなかでトヨタ「アルファード/ヴェルファイア」が満点を獲得し、「予防安全性能評価大賞」を受賞した。同車種搭載のデンソー製車載カメラに採用されているのが当社製の車載向けイメージセンサーであり、当社技術の優位性を評価・実証いただいた一例と言える。

―― 製品ラインアップについて。
 春田 現在、当社では車載用CISとして、100万画素クラスから700万画素クラスで、9製品をラインアップしている。17年4月には、業界初となるLEDフリッカー抑制(LFM)と120dBのHDR(ハイダイナミックレンジ)を両立した245万画素「IMX390CQV」を業界に先がけて開発・製品化した。これは、当社独自の画素構造(サブピクセル構造)と露光方式を採用することで実現したものとなる。
 昨今、クルマのヘッドライトやブレーキランプ、さらには信号灯や交通標識などにおいてLEDが多く用いられている。また、車載カメラは、昼間のトンネルの出入り口など明暗差の大きな場面でも、HDRの映像を高画質で撮影できることが求められており、LFMとHDRの両立は不可欠な要素となっている。

―― 今後の開発ロードマップや方向性については。
 春田 次世代技術の方向性については、まさに今年度が見極めの年となる。LFMについては、当初想定していたよりもニーズが拡大している。ビューイングだけでなく、センシングにおいても一部で必要との声が聞かれることから、ラインアップの拡充を検討する必要がある。
 また、高感度化においては、すでに業界をリードしているが、ユーザーと緊密に連携しながら対応していく。感度と小型化はトレードオフの関係にあることから、そこの見極めも重要となってくる。
 HDRは現在、120dBを実現しているが、さらなる向上も引き合いに応じて検討していく。例えば、HDRを120dBから140dBへ20dB向上させる場合、明るさとしては10倍の照度に対応することになる。それでも黒潰れや白飛びを起こさず、ノイズの少ない鮮明な映像を得るためには、画素構造や露光方法において従来にはない工夫が必要だ。

―― 今後の展望をお聞かせ下さい。
 春田 当社では、世界の大手ティア1をはじめ、画像処理プロセッサーメーカーとも協業を進めている。17年10月に発表した「IMX324」(742万画素)は、モービルアイ社の接続デバイスとしての認定も受けている。
 一方で、車載用CISは実績がものを言う市場であり、シェア拡大も一筋縄ではいかない。民生用CISで培った知見・ノウハウを活かし、「人の眼を超えた視力」を実現することで、中長期的にはトップシェアを目指して取り組んでいく。

(聞き手・清水聡記者)
(本紙2019年9月5日号2面 掲載)

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