リコー電子デバイス(株)(大阪府池田市姫室町13-1、Tel.072-748-6266)は、電源ICを主力とするCMOSアナログに特化した半導体メーカーである。2018年3月に日清紡ホールディングス(株)の傘下に入り、グループ内でのシナジー創出に取り組んでいる。また、今後の事業拡大に向けて前工程拠点のやしろ工場(兵庫県加東市)での増強投資に着手した。代表取締役社長の田路悟氏に話を聞いた。
―― 日清紡グループでのシナジー創出の取り組みを。
田路 日清紡ホールディングスは当社の株式の80%を保有し、グループ内では、新日本無線(株)とともにマイクロデバイス部門を担当する中核会社に位置づけられる。一方、元の親会社である(株)リコーは20%の株式を保有して関連会社としての関係を継続しており、ブランドや社名、拠点などは従来どおりの体制を維持している。
日清紡グループとのシナジー創出においては、当社と同じアナログ半導体メーカーである新日本無線との連携からスタートしている。当社は従来、後工程を外部に委託していたが、佐賀県やタイにある新日本無線の子会社を活用する。一方、新日本無線製品の前工程を当社のやしろ工場で受託する。加えて、新日本無線の実装・パッケージング技術と当社のCMOSアナログ技術を補完し合い、双方の競争力向上につなげる。将来的には協力して新製品を開発することも検討する。日清紡グループはIoTや医療、車載など幅広い分野に展開しており、新日本無線以外のグループ会社との連携も図っていく。
―― 足元の業績動向を。
田路 18年度は前半が好調だったものの、後半に中国スマートフォン(スマホ)やゲーム機の在庫調整の影響を受けて減収となった。一方、車載、産業機器、COT(ファンドリー)は堅調だったため、全体では増益を確保した。19年度は米中貿易摩擦の影響で不透明感が強いが、スマホの在庫調整に底打ち感がみられるほか、車載やCOTは安定的に拡大を見込む。産業機器はスマホ関連の一部で不調なものの、全体では成長が続く見通しだ。このため通期では前年度比で増収増益の達成を目指している。
―― 車載・産業機器向けの拡大を進めている。
田路 当社は車載・産業機器向けを従来の柱である民生分野に続く注力事業と位置づけ、拡大を図っている。それぞれの売り上げ比率は10%超だが、21年度に各約20%に拡大させたい。
車載はインフォテインメント領域からボディー系へ採用が拡大し、インパネや車内への搭載も伸びている。車載センサーの高精度化に対応し、当社ICの低ノイズ特性が評価されている。また、バッテリー直接駆動用では耐ノイズ特性に優れたICを供給する。車載システムの安全・安心ニーズの高まりに貢献できる電圧監視機能付き製品や、欧州市場で主流となっている48Vシステムに対応した製品のラインアップも拡充している。
―― 車載ヘッドアップディスプレー(HUD)向けLDドライバーの開発状況を。
田路 高シェアを持つ複写機向けLDドライバーの技術を応用し、開発した。セットメーカーとコラボして展示会にデモ機を出展している。自動車以外にも産業分野への展開が期待できる。また、ゲームなどのヘッドマウントディスプレー(HMD)、弱視患者用のLDゴーグル、車載LDヘッドライトなどにも応用が想定される。
―― IoT関連やCOTも拡大を目指している。
田路 IoT関連は産業用のエッジデバイス向けに、超低消費電流を特徴とする電源ICを提供する。待ち受け時の特性向上やエナジーハーベストの自律駆動に貢献する。また、バッテリーの長時間駆動に寄与する電池モニター機能や昇降圧機能を備えたDC/DCコンバーターも提供する。
COTは産業、医療、車載向けデバイスを受託し、当社の製造技術的なバリエーションの拡大にも貢献している。長期的に取引可能な顧客に向けて、安定的な成長を見込んでいる。
―― やしろ工場で増産、微細化投資を実施する。
田路 やしろ工場(兵庫県加東市)は6インチが月1万2000枚、8インチが月6500枚の能力を持つ。需要の拡大によって増産の必要に迫られていたことに加え、最小プロセスが0.35μmであり、0.18μm以下への微細化も課題だった。
そこで18年度から8インチの0.18~0.13μm対応装置の導入を開始した。まず0.18μm製品を内製化し、将来的に0.13μmの生産も検討する。8インチラインの生産能力を段階的に引き上げ、25年度までに月1万枚規模とする。トータルでは現状の1.5倍となる見込みだ。累計投資額は40億~50億円程度を計画している。
(聞き手・中村剛記者)
(本紙2019年7月18日号1面 掲載)