電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第326回

スーパーセンシングフォーラム 代表理事 中川聰氏


日本が誇るセンサーを昇華
水などからの超小発電技術を発見

2019/6/7

スーパーセンシングフォーラム 代表理事 中川聰氏
 一般社団法人スーパーセンシングフォーラム(東京都千代田区九段北1-14-17、Tel.03-3239-5953)は、日本企業がお家芸とするセンサーをベースに、人、モノ、環境の新しい関係性を構築していくことを目的に結成された。
 この代表理事を務める中川聰氏(東京大学工学系元特任教授)は、1987年から独自のユニバーサルデザインの開発理論や評価法を構築し、国内外の企業の製品企画やデザイン開発に関わり、多大なる貢献を果たしてきた人だ。プロダクトデザイナーであり、デザインエンジニアであり、かつデザインコンサルタントであり、自らが立ち上げたトライポッド・デザインのCEOも務めている。
 最近のフォーラムの実験成果としては、微生物や水から超小電力を取り出す手法を確立したことだ。そしてまた何と、人体からも超小電力を取り出すことにも成功している。中川代表に同フォーラムの現状と将来展望について話を伺った。

―― 茨城県ご出身です。
 中川 茨城県常陸太田市で生まれた。父は郵政省の公務員であったが、本来は教育者になりたかったらしい。そのため、多くの子供たちを集めるのが大好きだった。私は、何と3家族が同居し、なおかつ障がいを持つ方や知人関係の人に至るまで、30人以上が出入りするという生活環境で育った。父は子供好きが高じて自宅に私設図書室を設け、毎日多くの子供たちが出入りし、まさに談論風発の様相を呈していた。こうした環境が現在の自分を形成したと真に思っている。

―― ユニバーサルデザインで一世風靡する仕事をされましたね。
 中川 千葉大学でデザインを学び、その後同大学の大学院、東京藝術大学などを経て、デザインエンジニアという分野の仕事に突き進む。障がいを持つ使い手に必要な筆記具とは何か、バッグとは何か、ハサミとは何か。徹底的に突き詰めていった。少年の頃の障がいを持つ方たちとの体験が大いに役に立った。
 ありがたいことに、障がい者や高齢な方々向けのユニバーサルデザインの分野で国内外の賞も多くいただいた。2008年からは、製品開発やサービスのなかに期待学の理論を導入したプロジェクトに関わり、多くのデザイン工学的発見に寄与することができた。一緒に開発を支えていただいた皆様のおかげだ。

―― スーパーセンシングフォーラムの運動論とは。
 中川 ユニバーサルデザインを追求していくなか、目の見えない方や耳の聞こえない方などの五感の鋭さに、多くのサプライズな発見があった。五感とデザインをつなぐ感性工学という世界が見えてきた。そこから、日本企業が得意なセンサーの世界をデザインの気づきや発想で突き詰めて昇華させれば、もっともっと豊かな社会が構築できるとの思いにたどり着いた。

―― 具体的な活動は。
 中川 延べ参加数で50社以上がこのフォーラムに関わり、東京大学とニューヨークで年2回開催される発表会の参加者は500人以上になっているだろう。周知のように、日本企業はセンサーの世界シェア60%以上を握っており、重要な技術資産を多く保有している。スーパーセンシングフォーラムは、そうした日本の技術知財を先端のデザインシンキングで加速し、新たな産業領域と技術価値を生み出そうと考えている。

―― プロトタイプも開発しています。
 中川 電源からノードの設計、データアナリティクスからアルゴリズムの創生など、様々なセンサーに関わりを持つ企業と共創し、センサー+機械学習の可能性を研究している。センシング+デザインで新産業を形成できると思っている。様々な実験成果が出ており、いよいよ商業化に踏み込む段階に入った。多くの電子デバイス企業に呼びかけて、ビジネス構築の構図を創り上げたい。

―― 水や人体からの発電に成功したそうですね。
水からの発電に加え、人体からの発電も検証
水からの発電に加え、人体からの発電も検証
 中川 センサーを動かすのに重要なのは、電源だ。だが、広大な農地や大きな橋、道路、建築物など、電源が簡単に確保できないロケーションはいくらでもある。それでもセンサーを動かさなければならない。
 そこで私たちはバクテリア充電の開発に取り組み、一定の成果を得てきたが、ここにきて驚くべき2つの科学的事象に遭遇できた。1つは土壌や水道水、海水、ワインなど様々な液体を介して超小発電ができる事象、また水分の塊でもある人体からも超小電力を取り出すことができる可能性を見出した。科学的な理論の裏付けは始まったばかりだが、今後、多くの企業に参加していただき、この日本発の新産業技術の開拓を極めて社会貢献に向けたい。
 スーパーセンシングの世界は、人類にとっては「まだ見ぬ過去」と「なつかしい未来」を探っていく道程なのだと考えている。

(聞き手・特別編集委員 泉谷渉)
(本紙2019年6月6日号1面 掲載)

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