電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第321回

(株)トクヤマ 代表取締役社長執行役員 横田浩氏


高純度ケミカル事業に注力
9月末に中国工場稼働へ

2019/4/26

(株)トクヤマ 代表取締役社長執行役員 横田浩氏
 半導体分野でポリシリコン(多結晶シリコン材料)やフォトレジスト用現像液などを製造する大手化学メーカーの(株)トクヤマ(東京都千代田区)は、中国・浙江省嘉興市に半導体製造などに使われる高純度薬液の供給拠点を着工した。4月初旬に現地で開催された起工式に出席した横田浩社長に今後の成長戦略について伺った。

―― 2019年の業績目標について。
 横田 18年は前半まで好調に推移したが、後半から資源価格の高騰や米中貿易摩擦などにより、世界経済の減速傾向がはっきりとした。この影響を受けて中国も減速している。19年は18年業績を下回らないパフォーマンスを維持できるように全社を挙げて取り組む。

―― 今後の成長分野は。
 横田 当社は自動車や建設、工業、医薬など多業界にわたってビジネスを展開している。そのため、特定業界のビジネス環境が悪化しても、全体としての抵抗力は強い方だといえる。今後は全事業での最適バランスを追求し、より強い会社にしていきたい。今秋から5G通信関連のビジネスが立ち上がるので、5GやIoTの根幹技術たる半導体分野で使われる高純度ケミカル事業を特に強化していく考えだ。

―― 高純度薬液事業について。
 横田 当社はこれまで、日本を中心に韓国や台湾、シンガポールに高純度薬液の工場を展開してきた。製品は、主に半導体ウエハーや電子デバイス製造の精密洗浄に使われる電子工業用イソプロピルアルコール(IPA)とフォトレジスト用現像液のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)を生産している。日本と韓国は精製から充填まで一貫生産し、台湾とシンガポールはバルクで輸入した原液をボトリング(小分け充填)して現地の半導体工場などに出荷している。

―― 中国の新工場について。
 横田 4月4日に浙江省嘉興市で工場を着工した。上海周辺では化学工場の建設認可の取得が難しくなっているが、当社は別製品を生産している既存工場の敷地内に新工場を建設するため、早期着工が可能になった。9月末に工場を完成させ、電子工業用IPAとTMAHのボトリングを始める予定だ。顧客企業からの要請が強く、できれば1カ月でも前倒しして操業させたい。

―― 工場の投資規模は。
 横田 新工場の投資額は約10億円を見込む。そのうち、全体の2割程度の2億円を分析装置に充てる。両製品とも顧客企業ごとに品質設計が違うため、ボトリング後に誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP―MS)やガスクロマトグラフ質量分析装置などで分析して全品検査する必要がある。

―― 中国市場の展望は。
 横田 当面は中国に工場を進出した海外の半導体大手向けの供給体制の整備が優先となる。これら3社はいずれもメモリーを製造しているので使用量が多い。また、大量産中の液晶パネル工場向けの供給も大幅に増加している。早期に現地拠点を設けて安定供給できる体制を確立するように、顧客企業からも求められている。
 「中国製造2025」が発表されてから、中国の半導体製造は急成長している。現時点では一部の顧客企業で計画の遅れはあるものの、中国の半導体国産化の流れは止まらないと考えている。今回の高純度薬液の現地供給体制の整備にとどまらず、将来的には川上の原料精製からの一貫生産体制も視野に入れ事業の舵取りをしていく考えだ。

(聞き手・上海支局長 黒政典善)
(本紙2019年4月25日号8面 掲載)

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