電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第316回

東芝デバイス&ストレージ(株) 姫路半導体工場 工場長 相田聡氏


車載用パワーは24時間フル稼働中
「製品と一緒に安心・品質も提供」

2019/3/22

東芝デバイス&ストレージ(株) 姫路半導体工場 工場長 相田聡氏
 東芝デバイス&ストレージ(株)姫路半導体工場(兵庫県揖保郡太子町鵤300、Tel.079-275-6501)は、ディスクリート半導体事業部の旗艦工場の1つである。次世代半導体であるSiC製造ラインを立ち上げるとともに、車載用MOSFETの一部製品の前工程から後工程まで一貫生産も行う。また、IGBTモジュールの開発・製造の専用組織も同工場内に擁しており、今後の事業拡大の重要なミッションを担う。高信頼性が要求される車載用半導体は2年以上にわたりフル稼働が続き、生産能力の増強も継続する。相田聡工場長に足元の事業環境ならびに今後の事業展開を聞いた。

―― 姫路半導体工場は2019年で創設37年ということですが。
 相田 もともと1943年に設立された姫路工場を前身としている。82年に東芝・姫路工場から半導体部門を独立させ立ち上げた。64年には初期の半導体であったゲルマニウムベースの半導体を製造するなど、日本半導体の黎明期を支えてきた由緒ある工場である。

―― 現在の主な生産品目を教えて下さい。
 相田 MOSFETなどのパワートランジスタ、IGBTなどのハイパワートランジスタの後工程をはじめ、6インチウエハーなどの小口径ウエハーを使った小信号デバイスの前工程を行っている。一貫生産が可能な製品もある。

―― 足元の生産状況について。
 相田 特に車載用のパワー半導体製品が好調だ。主にMOSFETなどのパッケージング工程を行っているが、ここ2年間は24時間のフル稼働が続いている。これはEV/HVといったエコカー需要の拡大や先進運転支援システム(ADAS)機能などが車に搭載されるようになり、車の電装化比率の向上が背景にあるためだ。一方で、小信号デバイスは18年秋口以降、少しトーンダウンしている。スマートフォンなどの民生機器向け需要が少し弱含んでいる。

―― 車載向けは増産が必要ですね。
 相田 車載用途は市場の動きを見ながら臨機応変に対応していきたい。16年度下期以降から、第4トランジスタ課を中心に生産能力の拡大を継続して実施している。特にTO-252/263、SOPタイプではここ2年間で生産能力(個数ベース)が2倍ぐらいに拡大したパッケージもある。それでも引き合いが継続している状態で、19年も増産投資を検討する。

―― 加賀東芝エレクトロニクスとの役割分担は。
 相田 基本的に、加賀東芝エレクトロニクスでは8インチウエハーを使った量産品を中心に前工程を担っている。また、微細化対応やIGBTなどの開発も加賀東芝が中心に行っている。姫路半導体工場は、その組立工程ならびに一部の前工程を担当している。例えば、より高性能なスイッチング電源用途向けなどスーパージャンクション型MOSFETの工程の一部などは当工場で担当している。サーバー用などに継続して高い需要がある。

―― SiCの6インチラインも立ち上げました。
 相田 昨年6インチウエハー対応ラインを導入した。パッケージやモジュール工程も行っている。今後のキーデバイスになるとみており、当工場が中心となり量産を担っていく。現在は電鉄用途が中心だが、今後は車載向けなど、さらなる増産を視野に入れた能力の拡大もポイントになってくるだろう。

―― 人材育成や人手不足対応について。
 相田 東芝グループ共通の人材育成プログラムに加え、当工場独自にマシンキーパーなどのメンテナンス要員を常に育成・強化している。安心ある製品を作り続けるためにも、これは自分たちで責任を持って人材を育てないといけない。
 必ずしも最新の装置ばかりを活用しているわけではないので、自分たちである程度、理解しておく必要がある。早めのチェックも怠らず、多少の不具合であれば自ら修理・対応できる力は持っておきたい。OJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)も実践しながら、製造装置と真剣に向き合っている。
 当工場ではあらゆる電子機器に必要なディスクリート半導体を製造・販売しているのみならず、顧客に最大の安心と品質、それと使い勝手の良さを一緒に提供しているということを、私は常々、社員一人ひとりに言っている。これを原点に、モノづくりへの取り組みを強化する必要があると思っており、社員の意識を高いレベルで維持できるようにしている。
 人手不足対策は、プロセスの自動化を鋭意進めるようにしている。IoTなどの技術と融合しながら、検査工程の自動化などは積極的に進めている。また、当工場でも新規採用は継続していく。

―― BCP(事業継続計画)への取り組みについて。
 相田 いざという時のため常に対応を進めており、仕掛かり中のウエハーなどのストッカーは震度5レベルの揺れにも倒れないような工夫などをしてある。また、前工程では、加賀東芝エレクトロニクスなどと2拠点を活用して、同じ品質の製品を作れる体制を敷いているものもある。

(聞き手・副編集長 野村和広)
(本紙2019年3月21日号1面 掲載)

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