IoT時代の本格開花を迎えて注目される団体が、2017年5月31日に設立された。それがエッジプラットフォームコンソーシアム(略称:EPFC 事務局=川崎市幸区堀川町580ソリッドスクエア東館10階 (株)デバイス&システム・プラットフォーム開発センター内 Tel.044-201-9030)である。
EPFCはエッジ側技術を機軸としたIoTシステムのプラットフォーム活動に賛同する企業、大学などが集結しており、現在の会員数は47となっている。センシングデバイス/コンポーネンツの会員が一番多く20社を数える。これは各種センサー開発、LSI設計・OEM、モジュール設計、電源・蓄電、エネルギーハーベスティングなどに注力する各社が集まっている。サーバー側のIoTプラットフォームには12社、サービスアプリケーションに10社、ネットワークインフラに9社、デバイス側のIoTプラットフォームに9社、クラウドに6社という陣容である。
2019年2月22日(金)に開催されたEPFCシンポジウム2019冬は、実に面白い会合となった。プログラムも充実しており、アイテイアールのチーフアナリストであるマーク・アインシュタイン氏が「2019 Global IoT Outlook」についてお話をされた。またアマゾン ウェブ サービス ジャパンのプロダクトマーケティング エヴァンジェリスト 亀田治伸氏が「クラウドの進化とエッジコンピューティングへの取り組み」について詳しく解説をされた。
休憩をはさんで日本マイクロソフトの業務執行役員 IoTデバイス本部長 菖蒲谷雄氏が「インテリジェントエッジとインテリジェントクラウドで加速するデジタルトランスフォーメーション」というタイトルでお話をされたが、具体的な応用例が手に取るように分かる講演であった。ちなみに筆者もオーラスで「2019年の世界半導体は不透明な情勢下でも伸び続けるのだ~ロジック回復、パワー加速、問題はメモリー復活」というタイトルで講演をさせていただいた。
「IoT実現に向けて、実のところアマゾンはいっぱい失敗してきた。エッジコンピューティング以外では動かないというツールは増えている。情報の区別をエッジデバイスで管理することは素晴らしいが、困難なこともある。165を超えるサービスを提供してきたが、部品をあらかじめ提供することで、失敗することを早くしてノウハウを蓄積するという手法で、エッジコンピューティングの最適ソリューションにたどり着いた」(アマゾンの亀田氏)
IoT時代には、クラウドとエッジデバイスの両面からアプローチしていく必要がどうしてもある。効率的な分散処理とセキュアなデバイス管理運用でIoTビジネスのコストを削減する動きも加速している。例えば、日本ユニシスなどではエッジ処理による大量データの効率的な処理の実現に向けて、多数のデバイス運用をきっちりと管理している。またデバイス認証・不正デバイス接続監視などIoT、セキュリティー管理も決定している。実際のところユーザーはIoTをやりたいとは思っていても、「つながるだけで安心してしまう」「データ量が増えた時にどうしていいか分からない」「デバイスは本当に稼働するのか」「サイバー攻撃などにどう対応するのか」など、様々な疑問点や問題処理が生じている。日本ユニシスはマイクロソフトを活用することで、こうした課題にきっちりと対応していったのだ。
「マイクロソフトでは、インテリジェントクラウドという大きな柱を囲むかたちでインテリジェントエッジがあると認定している。人工知能、マルチデバイス、マルチセンサーが飛躍的に増えてくる。ちなみに90億にも上るMCU搭載機器は1%もきっちりとIoTにつながっておらず、セキュリティーという点で多くの問題がある」(日本マイクロソフト菖蒲谷氏)
マイクロソフトはIoT分野のR&D投資として、4年間で50億ドル(5300億円)の投入を決めている。まさに本気で向き合っているのだ。近い将来にはデジタル世界と物理世界が融合されるわけであり、マイクロソフトは画期的なソリューションを次々と提供することによって、多くの実績を積み重ねてきた。とりわけエッジデバイスにおけるIoTは低レイテンシーで、リアルタイムの高度な制御が必要であり、プロトコル変換などもすいすいとやってのける必要がある。
まさにマイクロソフトの出番なのである。マイクロソフトのIoTソリューションの応用例は「トイレ施設をIoTで省人化」「IoT活用による工場全体の見せる化」「IoT管理による寿司屋の効率的な運営」「建設現場での熱射病対策にIoT活用」など、様々な成果が積み上がっている。
EPFCは半期に1回のセミナー/シンポジウムを開催しており、会員拡大にも注力している。またIoT事業現場のニーズと課題解決手段を提供するシーズ技術のマッチング活動も行っている。要するに、IoTをやりたいけれどもよく分からないという企業にとっては、まさに救いとなるコンソーシアムであり、今後の活動には大いに注目していきたいと思う。
■
泉谷 渉(いずみや わたる)略歴
神奈川県横浜市出身。中央大学法学部政治学科卒業。35年以上にわたって第一線を走ってきた国内最古参の半導体記者であり、現在は産業タイムズ社 社長。著書には『自動車世界戦争』、『日・米・中IoT最終戦争』、(以上、東洋経済新報社)、『これが半導体の全貌だ』(かんき出版)、『心から感動する会社』(亜紀書房)、『君はニッポン100年企業の底力を見たか!!』(産業タイムズ社)など27冊がある。一般社団法人日本電子デバイス産業協会 理事 副会長。全国各地を講演と取材で飛びまわる毎日が続く。