商業施設新聞
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No.693

1年間の苦労、報われるか


若山 智令

2019/2/12

 「いい準備をしたい」――。最近よく、スポーツ選手のインタビューで「次の試合に向けて」といった趣旨の質問の回答で使用される言葉だ。そしても筆者も「いい準備」をして臨むイベントが控えている。それはフルマラソンである。これに向けて1年間準備をしてきた。そしてようやく3月に本番がやってくる。

 元々長距離を走るのは大嫌いだったが、友人に誘われて何度かマラソン大会に出たことはある。でも、これまでの最長はハーフまでで、今回はその倍の距離を走らなくてはならない。ネットで練習方法を調べたり、フルマラソン経験者の人に話を聞いたりしながら、2018年6月ごろから本格的に練習を始めた。

 最初のうちは、変わりゆく街並みを見ながら走ることに面白みがあった。「この場所にこんなお店ができるのか」とか、「ここの跡地は今後何ができるのだろう」など、新たな発見や想像を掻き立てることは仕事にも直結するし、実際に役に立つこともあった。だが、そんなことも2、3カ月経つと飽きてきて、自分は何のために走っているのだろうと思うこともしばしば。そんな時は「ここで頑張れば、本番が楽に走れるんだ」と自分に言い聞かせ、練習を続けてきた。

 思えば1年前、今回筆者が出場するマラソン大会が行われているのを電車の中から見て、「来年この大会に出よう」と思ったのが始まりである。1年前から準備するなんて、仕事でもあまりないのに……と思いつつ始まったのだが、思い返してみれば、社会人になってこんなに体を動かしたこともあまりなかったし、何より「1つのことを継続する」ということも社会人になってからあまりしてこなかったので、そういう視点からすればいい経験になったはずだ。

本番は荒川沿いをただただ走る
本番は荒川沿いをただただ走る
 また、通っている美容院の人にマラソン大会に参加するという話をしたところ、その人もマラソンをやる人らしく、そこで話に花が咲いた。その人は無口で黙々と髪を切るイメージであまり口数は多いほうではなかったが、そこから一気に距離が近くなった。マラソンによって友人が1人増えた気分である。

 とにかく、3月に本番がやってくる。本番前の今の気持ちは、「この1回だけでいい」と思っている。どうせ翌日は歩くのもキツイほど足が痛くなるだろうし、満身創痍で出社している自分の姿が容易に想像できる。筆者はとりあえず走り切り、2000年のシドニー五輪で金メダルを獲得して「とても楽しい42kmでした」と話した高橋尚子さんのような気持ちになれればそれでいい。あとは、練習したこの1年が無駄にならないよう、精一杯頑張りたいと思う。
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