商業施設新聞
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No.690

伊豆のへそで地方創生


笹倉 聖一

2019/1/22

ホテルや自転車試乗施設を併設する道の駅「伊豆のへそ」
ホテルや自転車試乗施設を併設する道の駅
「伊豆のへそ」
 首都圏に近い静岡県伊豆の国市で、昨年秋に開業した道の駅「伊豆のへそ」(伊豆の国市田京195-2)による、地方創生を予感させる取材機会を得たので紹介する。道の駅「伊豆のへそ」では、特産品のいちごをテーマに、オリジナルスイーツを展開するいちご専門店「伊豆いちごファクトリー」をはじめ、伊豆の新鮮食材や土産品を多数取り扱う農産物販売所「伊豆・村の駅」を2018年11月23日に新装開業した。敷地内には、台湾の世界的自転車ブランド「MERIDA」の世界最大規模を誇る展示・試乗施設や、静岡地ビールを楽しめるバイキングレストラン、源泉掛け流しの温泉が自慢の宿泊施設なども併設するなど、“食とサイクリングの聖地・伊豆”に最新のおでかけスポットが誕生した。

 農産物販売所「伊豆・村の駅 伊豆のへそ店」は、年間120万人が訪れる大人気の“食のテーマパーク”「伊豆・村の駅」(本店は静岡県三島市)が伊豆のへそに進出したもの。地元野菜や果物、椎茸、わさび、桜えび、お茶などの静岡・伊豆の特産物をはじめ、新鮮な海産物やこだわりの日の出卵を使ったスイーツ、土産品など約2000点の幅広い商品を販売する。道の駅「伊豆のへそ」駅長の中野篤氏は「伊豆の国市は、椎茸が名産品。今後全国へのPRを強化する」と語った。ぜひとも、椎茸による地方創生につなげてもらいたいものだ。

いちごずくめの「いちごファクトリー」店内
いちごずくめの「いちごファクトリー」店内
 いちご専門店「伊豆いちごファクトリー」は、いちごの和洋スイーツが楽しめるいちご専門店。村の駅が自社栽培したいちごを主体に、パフェやバームクーヘン、プリンなどの洋菓子から、大福やわらび餅などの和菓子まで、様々ないちごスイーツを提供する。また、食事メニューも展開し、テイクアウトはもちろん、イートインも可能。外観は桃色のデザインで、女子旅にも好まれる。いちごも椎茸と並ぶ伊豆の名産品だ。

 さらに、台湾の世界的自転車ブランド「MERIDA」の世界最大級の展示・試乗施設「MERIDA X BASE」は、18年9月に先行して開業した。「伊豆半島は『サイクリングの聖地』として注目が集まり、五輪会場でもあることで立地場所として選んだ」と、設置した(株)ミヤタサイクル ブランドマネジメント部の山崎祐路氏は話す。伊豆は東京ではないが、五輪大会の自転車競技開催を誘致しているのが興味深い。

 「MERIDA X BASE」に隣接する「HESO HOTEL」は、源泉掛け流し温泉が自慢で、日本でも屈指の強アルカリ性泉質(ph10.3)となっていて、クレンジング作用が高く、美肌効果が期待できる。北欧風の内装が可愛い1泊3990円~の経済的な宿でもあり、これも女子旅を意識しているものと思われる。ホテルを併設する道の駅は珍しいので、開発した(株)時之栖(静岡県御殿場市)の先見性を称えたい。

 また「G・K・B&Village」は、地産地消をテーマに全60品目もの和・洋・中がすべて食べ放題のバイキングレストラン。特に、静岡地ビール醸造所を併設しているところに注目したい。そして、伊豆の国ビールと御殿場高原ビールの2つのクラフトビールを味わえるのは同施設だけということなので、静岡の地ビールファンにはたまらない場所だろう。

 伊豆の観光客は、1988年の年間7344万人をピークに、2011年には3666万人にまで下がり、その後は三島のスカイウォークの開発、韮山反射炉の世界遺産登録など地元の努力が実り、15年には4449万人にまで回復し、その後も増え続けている。そして今回の「伊豆のへそ」が伊豆への観光客増を後押しするのは間違いないだろう。地方創生を強く予感させる施設だ。全国で疲弊が心配されている地方社会の、創成を先駆ける事例になってくれることを願う。
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