電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第306回

東芝デバイス&ストレージ(株) 代表取締役社長/(株)東芝 執行役 上席常務 福地浩志氏


「産業、車載、DC」向けがコア
23年度に売上高1兆円強を目指す

2019/1/11

―― 2023年度までの中長期計画を策定されましたね。
東芝デバイス&ストレージ(株) 代表取締役社長/(株)東芝 執行役 上席常務 福地浩志氏
 福地 東芝全体としては、23年度に営業利益10%以上を目指すという目標を掲げた。売り上げとしては4兆円以上と大きな伸びは見込んでいないが、高収益体質の企業に復帰しようということだ。東芝の半導体、ハードディスク(HDD)などの電子デバイスを担当する東芝デバイス&ストレージとしては、現在の売り上げ8700億円を21年度に9400億円、23年度には1兆500億円に持っていく計画を全力を挙げて推進していく。

―― 現在の売上構成は。
 福地 半導体が3700億円。このうち装置分野のニューフレアテクノロジーが約500億円ある。HDDは4000億円強、残りは転売などである。半導体はパワーデバイス、車の自動運転に向けた「ビスコンティ」と名付けた画像認識LSI、そしてSoCなどがあるが、現状はパワー系が超繁忙で、作っても作っても足りない状況だ。車載、FA向けのパワーMOSFETの引き合いがすごい。姫路工場、加賀東芝エレクトロニクスなど開発から生産まで一貫した強みを活かす。加賀東芝にエンジニアを集結させて開発から量産まで集中的に行っている。パワーMOSFETは加賀東芝で追加投資を行っており、さらに中期レンジでは新工場建設も検討していく。姫路ではSiC6インチラインが稼働し始めた。またフォトカプラも好調で、タイの組立工場にも投資している。今年度は当社全体として280億円の投資を進めている。

―― HDDも伸びてきていますね。
 福地 大容量のところはフラッシュメモリーに対して価格面で強く、データセンター(DC)などでは大容量対応のHDDを使うところが多い。この分野は世界で3社となっているため、東芝には大きな供給責任がある。ユーザーの要求に応えるべく主力のフィリピン工場に増強投資をしており、14テラバイトクラスの大容量製品を昨年7月より量産している。次世代通信の5Gになれば、高精細な映像など、より大容量データが利用できるようになり、保管先のDCは今後ますます拡大すると期待している。当社は先日16テラバイト品を発表したが、次世代ではMAMR(マイクロ波アシスト磁気記録)方式で18テラバイト品の投入を計画しており、継続的に製品の大容量化を実現する。ちなみに東芝はPCなど向けの2.5インチタイプで世界シェア30%を持つ。

―― 半導体は車載向けを最重要と考えていますね。
 福地 そのとおりだ。特に画像認識技術に強いビスコンティを前面に出していく。自動運転には必須の技術であり、ライバルのモービルアイに対抗する開発を加速している。おかげさまでお客様からの評判も良く、いよいよ実出荷を本格化している。また、この秋にはAI(人工知能)を搭載した製品のサンプル出荷を開始する。車載だけではもったいない技術なので、監視カメラなど広く産業向けの展開も考えている。

―― ニューフレアテクノロジーの今後については。
 福地 周知のように、シングルビーム式では世界シェアほぼ100%を取っている。今後はマルチビームに移行していくため、これに向けた製品開発に注力していくが、まだまだシングルビームも需要がある。エピ装置や検査装置にも力を入れ、将来的にも営業利益率20%レベルを維持していきたい。幸いにして東芝には半導体に知見のある技術者が多くいるため、こうした装置開発でも有利な展開が図れるとみている。

―― 「新生東芝」の進む方向性は。
 福地 社会の発展に貢献できる電子デバイス技術で地位を築いていきたい。そこで一番大切なことは社員のモチベーションだ。昨年、若手社員とともに「世界を変える原動力となるのは、いつも私たちの半導体・ストレージであり続けたい」というグループビジョンを作った。社員一丸で戦う体制があれば、必ずや東芝の中核ビジネスの一端をデバイスで担い続けられる。

(聞き手・特別編集委員 泉谷渉)
(本紙2019年1月10日号1面 掲載)

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