韓国において、外食業界に本格的な構造変革の波が押し寄せようとしている。外食業界では、最低賃金の引き上げや週52時間勤務、小売景気の低迷が三重苦となって、「廃業」を考えるオーナーが急増している状況だ。
最低賃金が大幅に引き上がり、自営業者は従業員ゼロの零細自営業者に転落する流れが顕著になってきた。ソウル市内でフランチャイズコーヒーショップを営むある店主は「最低賃金が急激に引き上がり、2019年は時給1万ウォン(約1000円)を突破することから、経営はさらに厳しくなる見通しだ」といい、「すでにアルバイトの従業員を減らす代わりに、オーナーの自分がその分を穴埋めしている」と嘆く。
ソウル最大のショッピングモールでも
客足が鈍くなっている
このような流れは、外食産業の景気展望指数にも表れている。韓国農水産食品流通公社(aT)によれば、18年7~9月期外食産業の景気展望指数は67.41を記録し、前々期(69.45)、前期(68.98)と連続して下落しているという。外食産業の景気展望指数とは、前年同期比で、直近の体感景気と、向こう3カ月間の景気展望を調査し指数化したものだ。
韓国流通最大手であるイー・マート傘下の流通産業研究所が発表した「2019流通産業展望」を見ると、小売市場の規模は18年の364兆ウォンから19年は397兆ウォン(約39.7兆円)と3.9%伸びる見通しだが、これは17年の成長率(5.6%)に比べるとかなり低い数値だ。消費心理の萎縮と各種の規制が成長を妨げると分析している。特に、小売市場における成長の大半はオンラインを中心とした「eコマース」に集中することから、一般個人の自営業の低迷は一層深刻になる見通しだ。
韓国では今、低成長基調に伴う景気不振をはじめ、一人暮らしの増加や勤労時間の短縮などによる消費形態の変化が起きており、特に外食業界に大きな影響を与えている。景気低迷を含む市場環境と消費形態の変化を考えると、韓国外食業界は今後、著しい景気回復がない限り、さらなる失速を余儀なくされる見通しだ。