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第304回

フェニテックセミコンダクター(株) 代表取締役社長 谷英昭氏


設立50周年迎え、FAB4竣工
6インチシフトで生産能力増強

2018/12/21

フェニテックセミコンダクター(株) 代表取締役社長 谷英昭氏
 アナログファンドリーのフェニテックセミコンダクター(株)(岡山県井原市木之子町150、Tel.0866-62-4121)は、去る10月25日、設立50周年および第一工場FAB4落成を祝う記念式典を開催した。今後、本社工場から第一工場FAB4へ生産を順次移管するのと並行して、2020年に向けて6インチの生産比率を高めていく予定だ。足元の取り組みや今後の計画を代表取締役社長の谷英昭氏に聞いた。

―― 設立50周年おめでとうございます。
 谷 当社は1968年にシンコー電器として設立され、抵抗器の生産からスタートした。半導体の製造に参入したのは76年で、2インチの小信号スイッチングダイオードから始めた。当時、地元・岡山には半導体の前工程工場がなく、地元の建設業者も最初はクリーンルームの作り方が分からなかったと聞いている。設備も自分たちで改造しながら何とか立ち上げ、使いこなしてきた。

―― 今は備後地区に製造装置メーカーなど半導体関連産業が多く集積していますね。
 谷 当社の設立がそのきっかけになったのであれば大変喜ばしい。そうした企業からも大きな支援を受けながら、当社も90年に第一工場を完成させて5インチラインを立ち上げ、99年には第一工場FAB2、2003年には6インチの第一工場FAB3を完成させて、アナログファンドリーとしての生産能力を順次拡大することができた。

―― 現在は電源ICファブレスのトレックスセミコンダクターの子会社という位置づけです。
 谷 トレックス製品を製造するファンドリーパートナーの1社であり、今後も協業をさらに深め、シナジーを高めていく。電源ICは近年、小型化と高精度化がさらに進んでおり、これに対応して当社も製造技術をますます高度にしていく必要がある。

―― 貴社のビジネスの状況は。
 谷 生産枚数ベースでファンドリーが5割、自社設計のツェナーダイオードなどのディスクリート製品が5割という構成だ。ファンドリー事業に関しては、9月までは対応しきれないほどの引き合いをいただいていたが、今は少し落ち着いた。自動車向けは引き続き好調だが、中国の産機向けとスマートフォン向けが落ちている。

―― 第一工場FAB4が竣工しました。
 谷 8月に建屋が竣工し、本社工場から設備の移設作業を順次進めており、一部の工程で試作を始めたところだ。FAB4は、建屋が古く地震対策が不十分な本社工場から生産を移管すると同時に、今後の需要増に対応して6インチ比率を高める狙いで建設した。移設作業の最終的な完了は20年度になる。

―― 移設スケジュールや能力増強に関して詳しく。
 谷 当社は現在、月産能力として本社工場に5インチ換算で4.5万枚、第一工場(FAB1~3)に5インチと6インチを各2万枚、鹿児島工場に6インチ2万枚を持つ。このうち本社工場の能力を、増床した第一工場と新設した第一工場FAB4に順次移管する。本社工場にある特殊プロセス(AuやPtなどの重金属を拡散できるプロセスなど)もFAB4へ移し、本社工場には試作用の小ロット4インチ以下を残す。
 移設作業は7段階に分けて進める予定で、ようやく第1段階が終わったところだが、19年秋には一貫生産できる製品が増えてくる。移設完了後の20年には、第一工場(FAB1~4)は5インチが3.4万枚、6インチは4万枚に倍増となる。これにより6インチの比率は、移設前の24%から移設後は64%に高まる見通しだ。

―― 6インチだとウエハーや製造装置の調達が難しくないですか。
 谷 製造装置の確保のめどは立っているが、ウエハーは価格が上昇し、供給もタイトだ。既存の生産に対応する量の供給は保証いただいているが、6インチが増える分は海外から調達することになる。

―― 鹿児島工場の稼働率アップも進めていますね。
 谷 15年にヤマハから取得した工場で、当社が従来持っていなかったプロセスノードを提供できるのが強みだ。現在は0.35μmでアナログ電源ICを立ち上げており、順調だ。
 また今後は、パワーデバイスのファンドリーを拡大するべく、6インチSiCプロセスの開発も進めている。当社はSiCに関して後発であるため、安価に量産できるよう、業界に一石を投じる新技術を準備しており、今後に期待していただきたい。

―― 今後の抱負を。
 谷 日本に半導体工場を持つ必然性は、高品質を提供できる安心感にあると思っている。当社もすでに大学からの委託案件などを生産しているが、今後は半導体メーカー以外からの受注が増えてくることも想定し、日本初のアナログファンドリーであることを誇りに、さらに身近なファンドリーであることを心掛けたい。そのためにも、トレックスのアナログ設計能力を生かすとともに、自社でも設計能力を高め、パワーデバイスやディスクリートの性能をより向上させたい。
 小回りの利く6インチは車載や産機向けの小ロット生産にきわめて有用だ。特に車載の比率は毎年伸びており、現在は約2割まで高まっているが、今後もこれをさらに伸ばしたい。

(聞き手・編集長 津村明宏)
(本紙2018年12月20日号1面 掲載)

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