商業施設新聞
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第158回

阪急阪神不動産(株) 執行役員 開発事業本部 うめきた事業 部長 兼 都市マネジメント事業部 部長 谷口丹彦氏


都心型SCにコミュニティ形成
うめきた2期はMDを策定へ

2018/12/4

阪急阪神不動産(株) 執行役員 開発事業本部 うめきた事業 部長 兼 都市マネジメント事業部 部長 谷口丹彦氏
 阪急不動産(株)と、阪急電鉄(株)および阪神電気鉄道(株)の不動産事業を統合し、4月に誕生した阪急阪神不動産(株)(大阪市北区芝田1-1-4、Tel.06-6376-4660)。同社の開発事業本部 都市マネジメント事業部では、「グランフロント大阪 ショップ&レストラン」や「うめきた2期地区」などのプロジェクトを進め、大阪・梅田エリアの街づくりに大きく貢献している。同事業部の事業部長 谷口丹彦氏に話を聞いた。

―― 都市マネジメント事業部の取り組みについて。
 谷口 現在は「グランフロント大阪」を管轄するチーム、梅田の街づくりを考えるチーム、スタートアップ企業を支援するチームの3チームに加え、11月1日より「うめきた2期」を計画するチームが、「うめきた事業部」として分離独立している。
 グランフロント大阪は、阪急阪神グループとしては「阪急三番街」と並ぶ規模の大型SCで、地下1階~地上9階に店舗を設けることや、30~40代の男女をターゲットに設定した施設は、実は阪急阪神グループとしては初めての試みとなる。
 同施設は「ハービスプラザ/プラザエント」のようなハイエンドではなく、「ヘップファイブ」や「NU茶屋町」のような若者をターゲットにするものでもない、そして百貨店とは趣向の異なる買い物が楽しめる施設として、梅田に新たなセグメントを創造できたところに意義がある。最近は「ルクア大阪」と誘致合戦を繰り広げているが、規模の大きさや専門性の高いテナントを誘致することで、阪急阪神グループとしては郊外型の「阪急西宮ガーデンズ」、都心型のグランフロント大阪と、それぞれの型を代表するSCとなっている。

―― 梅田の街づくりは。
 谷口 近年、グランフロント大阪に「ウメキタフロア」、阪急三番街に「うめだフードホール」、ルクアイーレに「キッチン&マーケット」が設けられたように、都心型SCにも欧州に見られるバルのようなタイプを設置する動きが増えている。
 都心型SCは、これまではファサードを備えた飲食店街が主流であったが、今後は明確な区切りを設けず、料理だけでなく、お客様同士のコミュニケーションを楽しむ空間づくりを強化する流れが増す中、例えば、うめきた2期地区では敷地内に設けられる公園を武器として生かし、新しいコミュニティをマネジメントできるような商業施設を作る。こうした取り組みは、新規の案件だけでなく、既存の施設にも導入することが進んでいくだろう。今後は画一的な小売を提供するよりも、都市の多様性や面白さを提供していきたい。

―― 現状、梅田エリアに不足するものとは。
 谷口 2つある。ひとつは訪日客の受け入れ体制の整備だ。DMOの環境整備はもちろんのこと、インフォメーションシステムの構築など、課題は山積みである。将来を見据えた場合、梅田エリアに訪日客が増えることはほぼ確実な情勢のため、訪日客に対しては、国内のお客様が享受するサービスと同等、もしくはそれ以上のサービスを提供することが求められる。
 もうひとつは超富裕層への対応だ。梅田エリアには百貨店、商業施設、ホテルなどが十分に揃っているが、それらの都市機能が本当に超富裕層を満足させているのかどうか。梅田エリア全体のマーケットを確認しながら、技術サポートも行い、超富裕層への対応策も検討していく必要がある。

―― スタートアップ企業について。
会員制オフィス「GVH#5」
会員制オフィス「GVH#5」
 谷口 新規事業の開発、自社に役立つ新規事業を提供する企業の発掘、エコ環境を作るスタートアップ企業の支援の3つの取り組みがある。とりわけ、起業家支援では会員制オフィス「GVH♯5」を組織し、エコシステムの環境整備を進める一方、アジア全体に網を仕掛け、関西で挑戦しようとする企業を支援するためのアクセラレーションプログラムを2019年度から運営するなど、スタートアップ企業の成長を後押ししていく予定だ。現時点で30~40社に支援を行ってきたが、これらの中から、次世代のテナントが生まれることを願っている。

―― うめきた2期地区の進捗について。
 谷口 8月に選定されたばかりで、まだ基本設計の途上であり、商業施設のMDは19年以降に策定する予定だ。同地区ではコミュニティの形成や富裕層への対応など、新しい商業施設の在り方を提示したい。

―― 最後に、梅田エリアの将来像を。
 谷口 阪急阪神グループにとって、梅田エリアは開発の余地が少ないことから、今後は付加価値、新価値で、リピート率を上げる取り組みが重要だ。また、「阪急ターミナルビル」など築年数を経た施設も多いため、施設の再開発により事業床を増やす手法も考えられる。梅田エリアは買い物ができる場所で、働くこともできる場所ではあるが、何でもある街から何かが起こる街へと変えていくのが、当社の使命になるだろう。

(聞き手・岡田光記者)
※商業施設新聞2270号(2018年11月13日)(1面)
 デベロッパーに聞く 次世代の商業・街づくり No.279

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