電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第309回

「自動化設備を作る工場は、実のところ自動化できない」


~売上100億円達成を掲げる福岡の第一施設工業の語る言葉の鋭さ~

2018/11/2

 「クリーン搬送システムで地歩を築いたわが社は、お客様の要望に応え、トータル自動化システムプロバイダーになることを志向し始めた。ロボットまで内蔵し、ひたすら自動化設備を作ってきたが、わが社の製造そのものについてはあまり自動化することができない。ひたすらきめ細やかな手作りの匠の技を駆使していく」

 こう語るのは、福岡県新宮町にあって急上昇を続ける第一施設工業の代表取締役社長、岩岡信雄氏である。同社は1967年7月に設立されたが、キーワードは何と言っても「省力化技術」である。とりわけ半導体工場や液晶工場で使われるクリーン搬送システムが同社の地位を築いてきたのだ。先ごろ同社の工場を視察する機会に恵まれたが、一番驚いたのは何と言っても製品群のバラエティーであった。すごい勢いで広がっている。

第一施設工業のクリーン搬送機はさらに拡大している
第一施設工業のクリーン搬送機は
さらに拡大している
 クリーン搬送システムで言えば、クリフター(必要なクリーン度を選んで得られる高速・低騒音の垂直搬送機)、ループキャリー(高清浄度をキープしながらクリーンルーム階層間を多量搬送できる垂直循環搬送設備)、マジックムーブ(流体力学の応用が生み出した、液晶ガラス基板や半導体ウエハーなどの浮上・搬送・プロセス処理を可能にする装置)、マジックキャッチ(ウエハーの表面部分に触れることなくハンドリング)がラインアップされている。

 同社が世に知られるようになったのは、何と言ってもFPDの大型ガラス基板を空中に浮かせて非接触で搬送する装置を開発した時だろう。筆者はこの時にはかなり驚いた。これに続いてシリコンウエハーについても非接触でハンドリングできる装置を世に出した。いわば同社の差別化ポイントは、空気のコントロール技術にあるのだ。そのほかにスパイラルリフターと言われる物流搬送装置も持っており、荷物用エレベーター、自動車用エレベーターの分野にまで踏み込んでいる。

 「2017年10月にロボット事業部を発足させた。これは世界一のロボットメーカーである北九州の安川電機のロボットメンテナンスを担当するものだ。まずは、西日本エリア内にある安川ロボットの80%を当社がメンテナンス対応していく」(岩岡社長)

 第一施設工業の装置にはすでにロボット内蔵タイプが力を発揮している。そして安川電機とタイアップすることで、さらなる自動化市場に進出を狙っていく。2019年には台湾市場、2020年には中国市場にマーケットを拡大していく方針を固めている。

 ところで、同社のモノづくりの現場をかなり詳細に見せていただいたが、実にきめの細かい手作りであることがよく分かった。これは1つに、同社の製品はすべて顧客の要望に合わせて高さ、幅、奥行きなどを決め、また仕様についてもそれぞれの企業に合わせ込んでいくため、とても自動化は図れないという事情がある。一方で、すさまじいまでの精度とクリーン度を要求されるため、匠の技を駆使して1つ1つ丁寧に作り上げていくことが求められるからだ。

 今後はとりわけ半導体自動化システムの提案に注力していく方向であり、いわばトータルソリューションを手がけることになっていく。半導体業界における人手不足は深刻であり、同社の新たな提案はかなりの拍手を持って業界に受け入れられていくことになるだろう。垂直搬送機については、これまで日本383台、台湾363台、韓国172台、そして中国157台が出荷されているが、今後はもちろん中国が急拡大していくとみている。

 「匠の技を駆使する方向に変わりはない。常にオンリーワン製品を開発する哲学にも変わりはない。2018年度は2桁成長で50億円の売り上げを見込んでいる。2020年には60億円を目指す。そして中長期的には100億円の大台乗せを考えているが、そのベースとなるのは何と言っても、従業員たちのきめ細かな手作りのスキルにあると言って過言ではないだろう」(岩岡社長)


泉谷 渉(いずみや わたる)略歴
神奈川県横浜市出身。中央大学法学部政治学科卒業。35年以上にわたって第一線を走ってきた国内最古参の半導体記者であり、現在は産業タイムズ社 社長。著書には『自動車世界戦争』、『日・米・中IoT最終戦争』、(以上、東洋経済新報社)、『これが半導体の全貌だ』(かんき出版)、『心から感動する会社』(亜紀書房)、『君はニッポン100年企業の底力を見たか!!』(産業タイムズ社)など27冊がある。一般社団法人日本電子デバイス産業協会 理事 副会長。全国各地を講演と取材で飛びまわる毎日が続く。
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