電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第295回

シャープ(株) ディスプレイデバイスカンパニー 第三ディビジョン 第五事業部 事業部長 井原雅生氏


IGZOで狭額縁とFFDを実現
横幅1.5m超の大型も1枚で提案

2018/10/19

シャープ(株) ディスプレイデバイスカンパニー 第三ディビジョン 第五事業部 事業部長 井原雅生氏
 シャープ(株)は、1990年から車載ディスプレー分野に参入した。車載ディスプレー事業としては、業界の伸び以上の成長を毎年達成することを目標としている。ディスプレイデバイスカンパニー 第三ディビジョン 第五事業部 事業部長 井原雅生氏に製品と事業展開について伺った。

―― まずは製品ラインアップから。
 井原 現在は3~14インチを手がけ、クラスター、CID(Center Information Display)、ミラーなどの様々な用途の車載ディスプレーを手がけるが、メーンはクラスターとCID向けだ。
 クラスター向けでは、メーターとメーターの間のディスプレーで3~5インチ、クラスターすべてがディスプレーになっているフルグラフィックタイプで10・2~12・3インチを手がけている。クラスター部分では、機械式メーターのみ↓ハイブリッド(機械式メーターと、メーターとメーターの間がディスプレータイプ)↓ディスプレー(フルグラフィックタイプ)と移行が進んでおり、現状最も多いのがハイブリッドタイプだ。CIDは純正品が増えてきており、オーディオの操作パネルなどで5インチ、ナビゲーション付きで6・5、7、8、9、14インチを手がけている。このほか、ミラー向けとして8~12インチを手がけている。

―― ディスプレーのバックプレーン(駆動回路)について。
 井原 当社のバックプレーンはa-Siのほか、LTPSとIGZOを採用している。現状a-Siが大部分だが、a-Siは今後拡大傾向になく、新規提案や引き合いはLTPSやIGZOが増えてきている。低消費電力で狭額縁を叶えるIGZOは17年度から出荷を開始し、LTPSは18年度から出荷予定だ。

―― 生産体制について。
 井原 車載ディスプレーの生産は、三重工場(三重県多気郡)のa-Siの4G(680×880mm)ラインとIGZOの4.5G(730×920mm)ラインで生産しているほか、亀山工場(三重県亀山市)のK2(IGZO)ラインも一部使用している。前工程では、これまでラビング処理していた液晶の配向工程を光配向にするなどの投資を行っている。今後の設備投資は、実装工程(中国・無錫工場)で自動化率を高めていく予定だ。

―― 貴社ディスプレーの特徴について。
 井原 IGZOをバックプレーンに使用した低消費電力で狭額縁なディスプレーだ。IGZOはデザインの自由度も高く、14年には角を丸くして表面も曲面化した「フリーフォームディスプレー(FFD)」を発表している。FFDはIGZOの駆動能力を活かし、ゲートドライバー回路を大幅に小型化して画素内に分散配置している。これにより3辺狭額縁化を実現し、デザインの自由度を高めている。また、IGZOを使用したことで透過率が向上しており、メーターやCIDに展開しているほか、ミラー向けにも提案している。
 生産体制も当社の強みだろう。大型サイズのディスプレーでも亀山工場で対応することが可能だ。このほか、有機ELディスプレーの展開も視野にある。

―― 今後の事業展開について。
 井原 エリア別の売上高は、現状は北米向けが最も多く、残りを欧州と日本を含むアジア向けが分け合う比率だ。しかし、3年後にはそれぞれが3分の1程度を占める見通しだ。
 今後の製品展開としては、横幅1・5m以上あるインパネ全面を1枚のディスプレーで製造するなど、自動車のインテリアの付加価値を高める製品を提案していく。さらに「ディスプレーによって自動車が変わる」というような製品を提案していく。

(聞き手・編集長 津村明宏/澤登美英子記者)
(本紙2018年10月18日号6面 掲載)

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