半導体製造装置メーカー国内最大手の東京エレクトロン(株)(東京都港区赤坂5-3-1、Tel.03-5561-7000)は、半導体設備投資の拡大に伴い、業績拡大を続けている。2018年5月には新たな中期経営計画を発表し、市場成長とシェア上昇の両輪で高い成長率と利益を獲得していく構えだ。今後の展望を代表取締役社長・CEOの河合利樹氏に聞いた。
―― まずは足元の業績からお聞かせ下さい。
河合 17年度(18年3月期)実績は売上高が前年度比41%増の1兆1307億円、営業利益が同81%増の2811億円と大幅な伸びを記録した。半導体製造装置(SPE)部門も全社売上高同様に同41%増を記録しているが、17年(暦年)のWFE(Wafer Fab Equipment=前工程製造装置)市場全体が前年比37%増だったことを考えれば、市場成長をアウトパフォームできたと考えている。
―― 18年度の見通しは。
河合 期初段階で見込んだ売上高1兆4000億円、営業利益3660億円については変えていない。ただ、第1四半期(4~6月)決算発表のタイミングで、18年のWFE市場の見通しを従来の前年比15%増から、10~15%増に変更し、下限を設けた。業績見通しに関しても、現在精査中という段階だ。
―― 足元では若干下ぶれリスクが出ていますが、中長期な市場の見方は。
河合 歩留まりなどに起因して微細化スケジュールが若干変化することはあるが、中長期の見方は全く変わらない。IoTやビッグデータ/AI、5G、自動運転など新しい半導体アプリケーションが出てくることで、市場はさらなる拡大が期待できる。こうした中長期な視点から、新しい財務モデルを策定した。
―― 改めて新財務モデルの中身を教えて下さい。
河合 20年度(21年3月期)に売上高を市場規模に応じて最大1.5倍(17年度実績比)の1.7兆円にまで高める。前提となるWFE市場は、20年度に620億ドルを想定している。まだ、半導体市場は成長の序の口にしか過ぎず、WFE市場は20年以降、さらに拡大すると確信している。
―― 中計達成に向けた取り組みは。
河合 我々は製品別で注力分野を設定している。具体的には9割近いシェアを獲得しているコーター/デベロッパーのほか、エッチング、成膜、洗浄の3つだ。これらは東京エレクトロンの強みが生かせる分野であると同時に、技術革新が継続的に期待できる市場でもある。さらに、この注力分野は将来性も高く、ここでシェアを獲得できれば、市場成長以上の拡大が見込めると考えている。
―― エッチング装置の状況は。
河合 17年は前年から3ポイント増加して、26%の市場シェアを獲得した。従来ロジック分野で高いシェアを獲得していたが、ここ最近はDRAMや3D-NANDなどメモリー分野で新規POR(Process of Record=顧客側ラインでの承認)を獲得しており、シェア上昇につながっている。特に形状制御性やエッチングレートの部分で顧客から評価されていると自負しており、18年もシェアは上昇すると見ている。
―― 洗浄装置は。
河合 前年から5ポイント上昇し、25%を獲得した。枚葉洗浄ではベベル洗浄のアプリケーションで新規工程を獲得したほか、生産性向上に寄与するメモリー向けのエッチング後洗浄工程なども売り上げ拡大に寄与した。また、バッチ洗浄も3D-NAND向けで伸びている。
―― 中計達成に向け生産体制強化にも積極的です。
河合 エッチング装置を開発・生産する東京エレクトロン宮城では、11月からフローラインの2本化が完了し、エッチング装置の生産能力が17年末比で2倍に高まる見通しだ。現中計期間内は一連の体制強化で需要に応えることができるが、エッチングや成膜装置の市場は今後も伸長が期待される分野だ。今後に備えて、先ごろ宮城工場の隣接地に新用地約11万m²を取得することを決めた。また、成膜装置などを開発・生産する東京エレクトロン テクノロジーソリューションズでも山梨と岩手で新棟の建設を進めている。
―― 社長に就任して2年以上が経過しました。社員に対しては、日頃からどんなメッセージを。
河合 お客様からの信用・信頼を得ることが非常に重要だが、我々の業界はハードウエア、ソフトウエア、プロセス技術、アフターサービスの総合力を求められるビジネスであり、一人でこれを行うことは不可能だ。それぞれの役割のなかで、一丸となってやっていくことが重要だ。欧米の競合企業とは違うアプローチかもしれないが、東京エレクトロンの今の成長は社員とそのチームワークが基礎となっている。
(聞き手・特別編集委員 泉谷 渉/副編集長 稲葉雅巳)
(本紙2018年10月4日号1面 掲載)