商業施設新聞
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第148回

(株)安成工務店 代表取締役 安成信次氏


設計・施工からリーシングまで
開発案件1.5倍の25カ所目指す

2018/9/25

(株)安成工務店 代表取締役 安成信次氏
 商業開発に積極的な(株)安成工務店(山口県下関市綾羅木新町3-7-1、Tel.083-252-2419)は、他の建設会社のように施工だけを行うのではなく、企画提案から設計・施工、テナントのリーシングまで取りまとめる。最近では、開発で培ったノウハウを伝えるための普及活動にも尽力している。今後の展開について同社代表取締役の安成信次氏に話を聞いた。

―― 会社の概要から。
 安成 当社は、山口県下関市に本社を置き、福岡市や山口市、北九州市にも営業所を持つ総合建設会社だ。主な業務として注文住宅、一般建築、商業開発を行っている。売り上げの中心は環境共生住宅を建てる住宅事業と賃貸マンションや医療施設などを企画開発、設計施工する建築事業で、それぞれの売り上げは全体の45%ずつを占めている。2017年度の当社の売上高は90億7000万円で、グループ8社全体では、150億5000万円となっている。

―― なぜ、商業開発を始めたのですか。
 安成 当社は1984年から、事業の中心を公共事業から民間に移行していくため、自社での設計施工体制の確立と商品開発による受注業態からの脱却を図ってきた。そして設計施工だけでなく企画提案も行い、受注を受ける「創注型」の建設業を目指している。それらの流れの中で、05年から商業開発を始めた。
 その上で、当社の商業開発では、設計施工に加えてサブリース(転貸)の要素も加えて提案している。

―― 具体的には。
 安成 例えば、土地所有者が建物投資をしていただければ問題ないのだが、見つけた土地が借地である場合もある。その際に、当社がその土地を借りて、立地に応じて出店ニーズの高い業種を提案し、建物を建てて賃貸借などを行う。こうすることで、設計施工による収益だけではなく、賃貸借料も得られ、建設業でも継続的な収益構造を確立できるようになった。
 現在は山口県や福岡県で、食品スーパーなどを核に近隣住宅街など小商圏をターゲットにしたネイバーフッド型の商業施設や、コンビニ、ドラッグストアなど17カ所を開発し、当社の売り上げ全体の10%を占めている。

―― 一方で、全国の建設会社にも商業施設のノウハウを伝えていますね。
 安成 17年7月に建設産業政策会議が作成した「建設産業政策2017+10」にも示されているが、建設業界は、働き方改革や生産性の向上など様々な課題を抱えている。私はそれらの問題を解決するためには、従来の請け負って完成したら終わりの受注産業から脱する必要があると思っている。
 そのため、当社は経営コンサルティング業のハイアス・アンド・カンパニー(株)と連携し、「地方創生まちづくりネットワーク」を設立した。当社が培ってきたノウハウを伝え、中心市街地の開発にも参画する「創注型」の建設会社の普及に努めている。2月から建設事業者の募集を開始し、現在全国で17社が加盟している。18年末までに計30社の加盟を目指している。

―― 今後の展開は。
 安成 当社自身では、17年に商業開発事業部を設立した。4月に買収した「くりえいと宗像」(福岡県宗像市)を運営する(株)くりえいとのノウハウも取り入れて、管理を強化していく。開発エリアは福岡県や山口県が中心だが、現在長崎県や大分県でも開発案件が動いている。開発件数は3年で現在の17カ所から1.5倍の約25カ所に増やしていきたい。そして商業開発の売り上げ構成比を5~10年かけて現在の10%から30%へ拡大を目指す。
 一方で、「地方創生まちづくりネットワーク」では、現在加盟している17社の中から早く成功事例を出し、将来的には加盟数を計150社に増やしていきたい。各県に2~3社の仲間ができ、皆で受注形態から脱し、新たな建設業の姿を模索したい。それは今後、建設業が地方都市で公民連携の街づくりを担う新たな挑戦でもある。

(聞き手・北田啓貴記者)
※商業施設新聞2259号(2018年8月28日)(1面)
 デベロッパーに聞く 次世代の商業・街づくり No.273

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