―― 2017年の総括からお聞かせ下さい。
井口 16年は低迷して全社売上高が12億ドルまで下がったものの、17年は13億ドルを達成し、予定どおり15年と同等にまで戻すことができた。モバイル市場が好調で、スマートフォン(スマホ)向けのパワーマネジメントIC(PMIC)、AC/DCアダプターの採用が順調に増え、LEDバックライトドライバーも数量が拡大した。ウエアラブル製品向けBLEチップも堅調だった。
LEDバックライトドライバーではテレビや車載用ディスプレーなどで直下型が増えており、これによりドライバー数が増えているようだ。ウエアラブル向けBLEチップは市場シェアトップを獲得している。非常にローパワーであることが高く評価されている。
日本オフィスの業績も順調に伸長し、17年の売上高は16年比38%増となった。
―― 足元の状況は。
井口 第2四半期(18年4~6月)まで順調に推移している。PMIC、LEDバックライトドライバー、BLEといった当社の注力製品すべてで採用が拡大している。注力分野の車載ではIVIやADAS向けPMICに注力しており、SoCメーカーと共同で製品化を進めている案件もある。BLEチップはキーレスエントリー向けに採用され、タイヤプレッシャー向けもプロモーション中だ。
―― 17年末に買収を発表した企業とのシナジーは。
井口 米シレゴテクノロジーとオーストリアのamsのバックライトドライバー事業を買収した。19年の業績に反映される見通しだ。LEDバックライトドライバーは、当社を含めて世界で4社の強豪が市場シェアを占めている。amsもその1つで、当社は市場シェアの約半数を獲得することになった。シレゴはオーディオやカメラ、プリンターといった民生向けが強く、当社にない分野の製品を補完することができた。これにより、周辺コンポーネントを集積した汎用品のようなFPGAを展開していく戦略で、シナジー効果は非常に大きいとみている。
―― 日本市場での製品戦略について。
井口 日本でも車載分野に注力しており、SoCメーカーとの協業を進めている。IVI向けでのプロモーションを進めており、採用も伸びている。日本が強い分野であるゲームとプリンターへPMICのデザインインも進めている。
このほか、日本のお客様が強い製品としてDECTがある。マンションのドアフォンや業務用の無線などに使用されており、非常に好調だ。18年のDECT向けの売上高は前年比3~4割増の見通しだ。
―― BLEチップで世界第2位のシェアを獲得しています。日本での展開は。
井口 血糖値計や血圧計などのヘルスケア製品、ウエアラブル製品にプロモーション中で、プリンターへの搭載も進んでいる。
BLEは、低価格品と高機能品の2方向の展開を考えている。今後のIoT化によって身の回りのモノがすべてコネクテッド化していく時、コネクテッド機能を使用する/しないにかかわらず、すべてに機能が搭載されていることが理想だ。モバイル機器では値段の壁があると普及しづらく、安価な方が普及しやすい。今後広がっていくBLEの世界に入っていきたい。
一方で、スマートウオッチなどには少し高機能化したタイプを展開していく考えだ。19年末にBLEの68xシリーズを上市する計画で、これはコアにARM-M33を採用し、充電機能やDC/DCコンバータなどを搭載する予定だ。
―― 日本オフィスの強みについて。
井口 デザインセンター機能も持ち、日本のお客様のニーズに沿ったIPを作ることができる。外資系には珍しい大所帯で、昨年から10人ほど増員し、現在は設計部隊が40人ほどいる。このため日本のお客様との打ち合わせが密にでき、レスポンスも早いと、非常に高評価をいただいている。日本のお客様は世界でリーディングカンパニーのポジションにあることが多い。彼らのニーズに深く入り込み、応えていきたい。
(聞き手・澤登美英子記者)
(本紙2018年8月30日号1面 掲載)