電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第287回

(株)テムザック 代表取締役CEO 高本陽一氏


車椅子ロボットの本格展開を開始
積水ハウスと建築施工用を開発

2018/8/24

(株)テムザック 代表取締役CEO 高本陽一氏
 (株)テムザック(福岡県宗像市江口465、Tel.0940-38-7555)は、世界でも数少ないサービスロボットの専業メーカーとして知られる。多様な実用ロボットを手がける日本のロボット開発のパイオニアでもあり、直近は自社ブランド品の展開や企業との共同開発などを加速させている。代表取締役CEOの高本陽一氏に話を伺った。

―― 直近の取り組みから。
車椅子型ロボット「RODEM」
車椅子型ロボット「RODEM」
 高本 自社ブランド品として「RODEM(ロデム)」に関する取り組みを強化している。ロデムは車体の後方から乗る設計を施した車椅子型ロボットで、狭い場所でも旋回でき、スマートフォンで遠隔操作もできる。座席を上昇させることもでき、歩行者と視線の高さを合わせられるため会話がしやすいといった特徴も持つ。そのロデムの屋内走行モデルを2017年11月に発表し、国内で初号機の納入を8月末に予定している。10月以降にデンマーク、ドイツ、オランダ、英国といった海外での展開も進めていく予定で、19年に1000台の販売を目標にしている。

―― ロデムに関して開発面での取り組みは。
 高本 スマートシティ用の小型モビリティーとしての活用を目指し、屋外で走行できるロデムの開発を進めている。7月には京阪バス(株)や(株)NTTドコモと連携し、京都・嵐山で実証を実施した。屋外用のロデムにはサスペンションなどを搭載することで走行性能を高めている。
 加えて、NTTドコモのノウハウを活かし、観光スポットの推薦や経路案内、多言語翻訳などができるタブレット端末を搭載し、土地勘のない方や日本語の話せない海外の方でも観光を楽しんでいただける仕様となっている。実証では高い評価を得ており、早ければ18年内にも本格活用を開始する見通しだ。
 そのほか、海外でも屋外用ロデムの実証を計画しており、その1つとして英国で自律移動型の取り組みを進める。具体的には、自転車シェアリングのように街中にレンタルスポットを設けて、利用者が目的地まで運転して移動するもので、途中で乗り捨ててもロデムが自動運転でレンタルスポットへ戻るといった仕組みを実現させていきたい。

―― 企業との連携も増えていますね。
 高本 受託開発や共同開発案件も増えており、その1つとして積水ハウス(株)と共同で、天井に石膏ボードを張る作業を代替する建築施工ロボット「Carry」ならびに「Shot」を開発した。2台1組で使用し、ロボット同士がコミュニケーションを取りながら、施工場所の認識、作業員へ必要な石膏ボードサイズの伝達、石膏ボードの運搬・昇降、ビス打ちなどを協調して行う。そして現在、次の段階として「石膏ボードの運搬」や「ビス打ち」といった特定機能だけを持つロボットの開発を進めており、19年以降の商品化に向けて取り組みを強化している。

―― ロボットに搭載する部品などについて。
 高本 屋内用ロデムの使い勝手をさらに向上させるため、筐体をより小型化していきたいと考えており、コストパフォーマンスの高いインホイールモーターなどは常に求めている。そのほか、逆光の状態でも白飛びしない画像処理システムなどがあればロボット開発の幅がさらに広がると感じている。

―― 今後の方針をお聞かせ下さい。
 高本 今期(19年5月期)は、屋内用ロデムの拡販に向けた取り組みや、屋外用ロデムの実用化に向けた実証の加速、建築施工ロボットの単機能タイプの開発など、幅広い取り組みが進む当社にとって非常に重要な年と捉えている。人手不足や職人の後継者不足などを背景に、様々な業種の方から受託開発に関する依頼も増えており、20年の東京オリンピック・パラリンピックに向けた話もある。こういった案件への対応力を高めるため、技術者を中心に人材の拡充も積極的に進めていく必要があり、人とロボットが共生する社会の創出に共に取り組んでいただけるような人材も随時募集している。

(聞き手・浮島哲志記者)
(本紙2018年8月23日号9面 掲載)

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