商業施設新聞
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No.667

統合型リゾートと聞いて錦糸町を思う


高橋 直也

2018/8/7

 昨今、街づくりにおいて「ミクストユース」が方向性の1つになっている。街や建物に多様な機能を集めて賑わいをつくろうというものだ。例えば、オフィスだけの街なら休日や夜間は閑散とするが、住宅や商業施設を導入すれば、恒常的に街に人が存在する。賑わいにもつながる。都市間競争やオーバーストアが進む中、デベロッパーはこのミクストユースにより、街や施設に人を呼ぼうとしている。そこで思ったのである。錦糸町ってすごいんじゃないか、と。

 錦糸町は東京都墨田区の街だ。錦糸町駅はJR総武線のターミナル駅であり、東京メトロ半蔵門線も乗り入れる。駅周辺を見ると、駅街区にはヨドバシカメラ、ファッションや飲食店が出店する「テルミナ」がある。駅に隣接して、縦積み型のショッピングセンター(SC)「アルカキット錦糸町」もあり、駅北側には緑溢れる錦糸公園や墨田区総合体育館があって、若いファミリー層やスポーツを楽しむ人が多い。錦糸公園に隣接するSC「オリナス」は現在改装中だが、普段はファッション、食品関連、飲食、映画館など幅広い業種が揃っており、大いに賑わっている。さらに駅東側の「楽天地ビル」にはスパがあり、中低層の旧LIVINは大規模リニューアル中。ここにはパルコが出店する予定で、ファッション店などを求める若い層が増えるはずだ。

 一方、錦糸町の「ミックス感」がすごいのは駅の南側。まず、駅前に競馬の場外馬券場があり、土日は大変賑わう。しかも馬券場の近くにはパチンコ屋もあり、場外馬券場の南側はラブホテルや夜の店が多い。駅前に「マルイ」があるので幅広い層はいるが、一歩路地に入ると、少々緊張感が漂うエリアだ。

 これだけでも日本有数のミクスチャータウンなのだが、この南側エリアに外資系ホテルとして名高いマリオット・インターナショナルの「モクシー東京錦糸町」が出店したのだ。そのため、錦糸町には外国人観光客まで訪れるようになった。ちなみにこのモクシーには、地域に開かれた広いラウンジがあり、その中でパソコン作業や読書、勉強などができる。このスペースを求めて、ラブホテル前を闊歩する層が現れたのだ。ちなみに筆者はその一人である。

錦糸町はファッション、家電、競馬、外資系ホテルとあらゆるものが揃う
錦糸町はファッション、家電、競馬、外資系ホテルとあらゆるものが揃う
 話が逸れたが、錦糸町は家電、ファッション、食、公園、スポーツ、外資系ホテル、競馬、パチンコ、ラブホテルと、これ以上ないくらい多様な目的が存在するのだ。賑わうわけである。

 このほど、IR実施法が成立した。IR(統合型リゾート)とはホテル、商業、MICE施設、ゴルフ場などのリゾート施設、そしてカジノなどを1つの施設やエリアに集める事業だ。筆者はIR(統合型リゾート)という言葉を知ったとき、「なんだか錦糸町みたいだな」と思っていた。錦糸町の賑わいとは毛色が違うだろうが、「超複合」という意味では一緒。IRが開業すれば、多様な目的を求めて多くの人が集うはずだ。

 昨今の商業施設はオーバーストアに加え、ネット通販の勢いに押されており、苦戦を指摘する声も多い。IRには反対意見も多いが、錦糸町の混沌とした賑わいを見ていると、IRがどれだけの人で溢れるか、想像しただけでワクワクする。早期に実現してほしい。
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