電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第284回

リコー電子デバイス(株) 代表取締役社長 田路悟氏


グループシナジー創出へ
前工程の増強に着手

2018/8/3

リコー電子デバイス(株) 代表取締役社長 田路悟氏
 リコー電子デバイス(株)(大阪府池田市姫室町13-1、Tel.072-748-6266)は、電源ICを主力とするCMOSアナログに特化した半導体メーカーだ。3月1日付で日清紡ホールディングス(株)が80%の株式を取得し、日清紡グループ入りした。既存事業の強化に加え、日清紡とのシナジー創出にも取り組んでいく。代表取締役社長の田路悟氏に話を聞いた。

―― 日清紡グループ入りの経緯と事業体制について。
 田路 当社は(株)リコーの半導体事業部門としてスタートし、2014年に分社化された。リコーは数年前から事業構造改革に取り組んでおり、半導体事業への成長投資を続けることが困難な状況にあった。外部資本の導入により再成長を果たすため、当社の株式譲渡を決定した。
 日清紡グループであると同時に、リコーは20%の株式を保有しているため関連会社としての関係を維持している。また、社名に加えてブランド、国内外の生産販売拠点、顧客との取引ルートなど、ビジネス体制に変わりはない。従来どおりの事業体制をそのまま継続している。

―― 日清紡グループとのシナジーは。
 田路 様々な可能性を検討しており、順次取り組みを開始している。日清紡グループはブレーキ事業を通じて車載関連と関係が深いほか、センサーや無線などの分野にも展開しており、当社とのシナジーが期待できる。また、グループには同じく半導体メーカーの新日本無線(株)がある。同社とはリアルタイムクロックの生産委託で長年の付き合いがあり、アナログ技術という共通点があるものの、製品はあまり重複していない。製品開発や生産面で様々な相乗効果が期待でき、両社の強みを組み合わせてシナジー創出を目指したい。

―― 足元の業績動向について。
 田路 17年度は中国スマートフォン(スマホ)市場が低調だったものの、車載や産業機器、ゲーム機が好調で、全体としては計画を上回る増収増益を確保した。18年度は春から中国スマホが回復してきたことに加え、車載や産業機器、ゲーム機市場が引き続き好調だ。米中の貿易摩擦など先行きに不透明感はあるものの、17年度実績を上回る成長を目指している。

―― 中期経営計画の事業目標について。
 田路 17~19年度の中期経営計画を進めている。日清紡グループに入っても目標に変更はなく、最終年度の19年度に営業利益率10%以上の達成を目指す。車載・産業機器・医療機器分野の比率を従来の40%からできるだけ50%近くに高める。付加価値の高い新製品比率の拡大も目指す。

―― 車載機器への採用が拡大している。
 田路 注力分野として取り組んでおり、軽負荷から高負荷までの幅広い領域を1チップでカバーできるほか、低ノイズ特性が評価されて採用を伸ばしている。インフォテインメントに加えてタイヤやヘッドライト、パワーウインドウ、ドア周りなどだ。車載カメラやADAS、センシングなど自動運転関連で、さらなる採用拡大を目指している。また、欧州市場で普及が進む48Vバッテリー対応のPMICも強化している。

―― 車載ヘッドアップディスプレー向けLDドライバーを開発した。
 田路 高シェアを持つ複写機向けLDドライバーの技術を応用した。すでに技術を確立し、サンプル提供を開始している。また、ゲーム機や医療分野向けのヘッドマウントディスプレーにも応用展開する。18年度内のサンプル提供開始を予定している。

―― IoT関連機器への取り組みは。
 田路 産業インフラ用のエッジコンピューティング機器をターゲットとしている。低消費電力で低ノイズの当社の電源ICが、優位性を発揮できる用途と期待している。

―― 生産能力の増強について。
 田路 前工程のやしろ工場(兵庫県加東市)に6インチが月1万2000枚、8インチが月6500枚の能力があり、後工程は外部委託している。需要の拡大でフルキャパ状態が続いており、8インチラインに装置を増設して早期に拡充させたい。段階的に月1万枚程度に引き上げる。
 また、能力拡大と並行して微細化にも着手する。現状で自社のプロセスは最小0.35μmであり、0.18μm以下は外部委託している。今後は自社生産においても0.15μm前後への微細化を検討する。自社工場に加えて、従来の外部パートナーとの協業拡大などの可能性も模索する。

(聞き手・中村剛記者)
(本紙2018年8月2日号3面 掲載)

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