電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第280回

太陽誘電(株) 代表取締役社長 登坂正一氏


3年後に3000億円企業狙う
大容量MLCCの量産体制構築

2018/7/6

太陽誘電(株) 代表取締役社長 登坂正一氏
 太陽誘電(株)(東京都中央区京橋2-7-19、Tel.03-6757-8310)は、3年後の2020年度に売上高3000億円、営業利益率10%以上を計画する。従来の情報通信機器に加え、車載・産機など重点市場への拡大がテーマとなる。その戦略商品となるのが積層セラミックコンデンサー(MLCC)、インダクター、高周波フィルターの製品群である。この事業戦略と並行し、新たなビジネスモデルの構築に動き出している。「モノ」の供給に加え「コト」も付加し、顧客へのソリューション提供にも乗り出す。21年度以降の業績拡大と企業体質の改善を視野に、次代に向けた経営戦略を代表取締役社長の登坂正一氏に伺った。

―― 3000億円企業に向けた注力市場と製品は。
 登坂 重点市場のなかでも、今後高い成長が期待できるのが車載市場。MLCCで既存コンデンサーからの置き換えを加速させていく。用途の幅も広がっており、ADAS(先進運転支援システム)などのセーフティー系からパワートレイン系まで採用が進んでいる。搭載される半導体の高機能化に歩調を合わせ、MLCCの大容量化が背景にある。従来は静電容量1μF帯が中心だったが、10~47μF帯が要求されるようになってきた。この容量帯域は当社が得意とする大容量ゾーン。さらに今後のEV化などをにらみ、高耐圧化など市場のニーズを捉え、車載市場を攻略する。

―― エルナーを50億円で子会社化した意図は。
 登坂 これも車載市場を開拓する戦略の一環。欧州を中心に48Vマイルドハイブリッド市場が立ち上がりつつあり、エルナーの保有する導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサーが市場特性と非常にマッチしている。自動車の急速な電動化に対応するため、子会社化で一体となって市場攻略に乗り出す。主要な用途はDC―DCコンバーターの平滑やデカップリング(半導体への最適駆動電力の供給とノイズ除去)になる。

―― 1000μFのMLCC量産体制を構築しました。貴社における同製品の位置づけは。
 登坂 当社が世界で初めて商品化に成功した静電容量1000μFは、MLCCの進化において1つのマイルストーンになる。これにより100~1000μFまで商品ラインアップが揃うことで、この容量帯をすべてMLCCで設計できるようになる。

―― 具体的なターゲット市場は。
 登坂 サーバーや基地局通信装置など、ICTインフラを支える産業機器からの需要が強い。1000μFを商品化できたことで、これら機器の電源回路に使われるコンデンサーをすべてMLCCに置き換えることができる。この市場は5G(第5世代移動通信システム)の立ち上がりなどで今後も非常に高い成長が見込まれており、注力している。

―― 20年度の車載・産機の売上構成比率の目標は。
 登坂 17年度の車載・産機売上比率は31%。これを20年度には38%にまで引き上げる。車載は、MLCCを主体に、現状の9%から15%にまでアップさせる方針だ。

(聞き手・松下晋司記者)
(本紙2018年7月5日号1面 掲載)

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