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第22回

昭和電工 プラスチック・ケミカルリサイクル施設、廃プラをアンモニア原料に活用、ホテルに水素供給開始


2018/7/3

 昭和電工(株)(東京都港区芝大門1-13-9、Tel.03-5407-3111)は、同社川崎事業所で製造する使用済みプラスチック由来の低炭素水素について、川崎キングスカイフロント東急ERIホテル向けに供給を開始した。これに併せて、プラスチック・ケミカルリサイクル施設を公開した。

 同社の川崎事業所は1930年設立。敷地面積11万2000m²の大川地区(川崎市川崎区大川町5-1)、同10万5000m²の千鳥地区(川崎市川崎区千鳥町2-3)、同34万2000m²の扇町地区(川崎市川崎区扇町5-1)がある。アンモニア、苛性ソーダ、高純度次亜塩素酸ソーダなどの工業薬品、窒素、水素、およびアルゴンなどの産業用ガスを幅広い産業分野、民生用に提供。電子材料工程に使用される高純度ガスおよび装置の表面処理を国内外のメーカーに供給。食品添加物、化粧品材料、医薬・農薬中間体、機能性高分子、高速液体クロマトグラフィー用カラムなど、様々な領域で、最先端かつユニークな技術・製品を提供している。

 プラスチック・ケミカルリサイクル施設は、扇町地区に設置。アンモニア製造工程において、原料となる水素を使用済みプラスチックから取り出す製造方法を2003年から導入している。この製造方法では、使用済みプラスチックを原料とすることで化石燃料の消費を抑えるだけでなく、製造工程で発生する二酸化炭素をドライアイスにリサイクルするなど副生物を資源として有効活用しており、従来の製造方法に比べ、環境負荷の低減に大幅に寄与している。

 この取り組みは、「使用済みプラスチック由来低炭素水素を活用した地域循環型水素地産地消モデル実証事業」として環境省の実証事業に採択。また、川崎市が推進する「川崎エコタウン事業」の一環として導入された。

破砕成形設備
破砕成形設備
 同施設は195t/日のプラスチックを処理できる日本最大級の処理施設で、塩化ビニールを含む多くのプラスチック類の受け入れが可能。敷地面積6590m²の破砕成形設備と同7400m²のガス化設備の2工程から成り立っている。

 収集された使用済みプラスチックは、まず破砕成形設備の投入コンベアーにより破砕機に投入。破砕した使用済みプラスチックは異物を除去した後、成形機により成形プラに加工される。

 成形プラは、低温と高温の加圧2段階式ガス化炉により、すべて合成ガスに改質される。

 プラスチックは圧力1Mpa、温度600~800℃の条件下において、少量の酸素と蒸気をガス化剤として熱分解および部分酸化され、分解ガス、タール、チャーから構成されるガスとなる。低温ガス化炉は、600~800℃に熱した砂を循環する流動床炉で、プラスチックはこの砂に触れることで瞬時にガス化される。プラスチックに含まれる金属類は、未酸化状態のまま炉床から回収される。

ガス化設備
ガス化設備
 低温ガス化炉で生成したガスは、1400℃の温度下において少量の酸素と蒸気により熱分解および部分酸化され、水素と一酸化炭素を主体とする合成ガスに改質される。高温ガス化炉は、旋回式ガス化改質炉で、低温ガス化炉から送られたガスは炉壁を旋回しながら徐々に熱分解されていく。また、高温ガス化炉では、ガス中に含まれる灰分を溶融すると同時に、ダイオキシンを完全分解する。

 高温ガス化炉で生成された合成ガスは、ガス化炉底部の冷却室で冷却水により瞬時に急冷される。200℃以下で瞬間冷却するため、ダイオキシンの再合成を抑制できる。高温ガス化炉で溶融された灰は、冷却水により急冷され水砕スラグとなり、炉底から回収される。

 ガス化炉で生成された合成ガス中には、塩化水素が含まれており、これをガス洗浄設備にてアルカリ水で中和し塩に戻す。

 合成ガス中に含まれる一酸化炭素は、350℃まで加熱され、水蒸気と反応させることで水素と二酸化炭素に転化する。CO転化設備はアンモニアの主原料となる水素を増やす役割を果たしている。その後、脱硫設備で硫化物を硫黄として回収した後に、アンモニア製造設備へと送られる。

 生成された水素のほとんどはアンモニアの原料として使用されているが、一部をパイプラインを通じて京浜コンビナート各社に供給している。今回の川崎キングスカイフロント東急ERIホテルへ水素供給は、このパイプラインを1kmほど延長させて実現。同ホテルではこの水素を使用した大型燃料電池により、ホテル全体の約3割の電気や熱などをまかなう。また、ホテルから出るハブラシや櫛を回収し、プラスチック原料として使用する計画である。
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