電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第288回

泉谷渉の26冊目の本『日本vs.アメリカvs.欧州 自動車世界戦争』発刊


~センサー、半導体、電池、部品/素材分野で日本勢圧勝を予言~

2018/6/8

 1台の自動車に使われている半導体はせいぜい3万円程度である。しかして、これがハイブリッド車になれば7万円以上に跳ね上がり、増えた分の半導体の8割以上はパワー半導体が占めているのだ。そしてまた次世代EVになれば、さらに金額は上積みされる。自動走行運転やコネクテッドカーまでバージョンアップされれば、1台の車に30万円以上の半導体が入ってくる。

 すなわち次世代自動車という分野は、そこに使う半導体を10倍以上に押し上げる牽引力を持っているのだ。こうした状況を何とかして最新取材でまとめたいとの思いから、筆者はこのほど『日本vs.アメリカvs.欧州 自動車世界戦争』という本を執筆し、東洋経済新報社から発刊した。

 日本対アメリカ対欧州という世界バトルに中国も加わり、EV、自動運転、IoT対応の行方がどうなっていくのかを徹底的な聞き込みでリポートしてみた。定価は1500円+税。アマゾンおよび全国の書店などで一斉販売しており、お読みいただければまことに幸いと切に思っている。

 世界のあらゆる工業製品の中で自動車産業は最大マーケットを誇っている。今や自動車の年間生産台数は世界全体で1億台の大台が射程に入ってきており、関連産業を加えればおおよそ400兆円を超える巨大市場が構築されようとしているのだ。

 この巨大産業の自動車業界にIoT革命の大きなうねりが訪れようとしている。ADAS(先進運転支援システム)、完全自動運転、コネクテッドカーなどの動きが推進されており、自動車の電装化率も高まっている。さらに環境意識の高まりから史上空前のエコカー旋風が巻き起こってきており、EV(電気自動車)、FCV(燃料電池車)、さらにはPHV(プラグインハイブリッド車)などの一大ブームがついに来たのだ。

 次世代自動車を巡る世界バトルがますます激化するなかで、日本のデバイス企業の存在感はいやがうえにも高まっている。カメラモジュールの中核をなすCMOSイメージセンサーの世界チャンピオンはソニーであり、次世代モーターで世界首位を行くのが日本電産なのだ。

 またEVやハイブリッド車の中核をなす車載向けリチウムイオン電池は、パナソニックが世界シェアの40%以上を押さえている。そしてまた車載マイコンではルネサスが世界トップを疾走している。車載向けコンデンサーでは村田製作所がトップを走り、車載向け回路基板についても日本メクトロンが最先行しているという展開となっている。

 いわば今回の本は、130年に一度ともいわれる次世代自動車革命の全貌をとらえる一方でセンサー、電池、マイコン、電子部品、さらに素材の分野において日本企業が圧勝するというストーリーを予見した内容となっている。

 ちなみに筆者は2017年の初めに『日・米・中IoT最終戦争』(版元は東洋経済新報社)という本を執筆させていただいたが、最近になって日本を代表する証券会社の幹部からお褒めの言葉をいただいた。それは次のようなものであった。

 「東芝が経営破綻の危機を迎え、2部市場に転落するという情勢のなかで、君はただ一人といってよいくらい東芝大復活を予言した。史上最悪の赤字を出した東芝は、早くもその後の1年間で史上最大の大黒字を計上した。半導体メモリーが東芝を救ったわけだが、これを予測した記者はほとんどいなかった」

 筆者の予見性に対する最大のお褒めの言葉であり、身に余る光栄と受け止めている。今回の『自動車世界戦争』は、筆者にとっては26冊目の単行本となるものだが、ここで予測したことが1年後にどうなっているかが一番気にかかるところではある。

 次世代自動車に向けた世界大戦争のうねりのなかで戦っていく日本勢は、何と言っても「人間の命が最も大切」という哲学を強く持ち、これが他国とは全く異なるといえるのだ。コストよりも、見た目のカッコ良さよりも一番大切なのは生命、という日本人の考え方が卓越した部品技術、素材技術を生み出していく。

 今回の本は、世界の自動車戦争を巡る様々なトピックスを最新取材で紹介するだけでなく、「ニッポンここにあり」との意志を世界に発信していく日本企業の戦いぶりを描いたものである。読者皆様の今後のご意見、ご鞭撻を切にお願い申し上げる次第である。


泉谷 渉(いずみや わたる)略歴
神奈川県横浜市出身。中央大学法学部政治学科卒業。30年以上にわたって第一線を走ってきた国内最古参の半導体記者であり、現在は産業タイムズ社 社長。著書には『半導体業界ハンドブック』、『素材は国家なり』(長谷川慶太郎との共著)、『ニッポンの環境エネルギー力』(以上、東洋経済新報 社)、『これが半導体の全貌だ』(かんき出版)、『心から感動する会社』(亜紀書房)など19冊がある。一般社団法人日本電子デバイス産業協会 理事 副会長 企画委員長。全国各地を講演と取材で飛びまわる毎日が続く。
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