電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第262回

ソニーセミコンダクタマニュファクチャリング(株) 代表取締役社長 上田康弘氏


半導体売上は8500億円に拡大
1100億円投じ月産10万枚体制確立

2018/3/2

ソニーセミコンダクタマニュファクチャリング(株) 代表取締役社長 上田康弘氏
―― ソニー半導体の今期は好調に推移しましたね。
 上田 2017年度第3四半期(10~12月)決算では、半導体事業の売り上げが前年度同期比7%増の2509億円となった。営業利益は同2.2倍の606億円に押し上げた。前年度は熊本地震の影響もあり厳しい状況が続いていたが、今年度はとりわけモバイル機器向けCMOSイメージセンサーの販売数量が大幅に伸びた。
 17年度通期では8500億円の売り上げが予想され、前年度の7731億円から大きくジャンプアップするだろう。半導体で叩き出す営業利益も1550億円となり、ソニー全社に貢献できる数字になったと思っている。

―― 今後の受注状況については。
 上田 目先はモバイル向けの需要が軟化しているが、中期的には順調に拡大してくる。今後は防犯向けやFA向けの需要が拡大してくるのが確実であり、特にIoT対応の生産ラインでは視認センサーが重要になるだろう。

―― 車載向けなど期待の新センサーについては。
 上田 偏光センサーは、これまで検知できなかった物体表面の特殊な情報が得られるなど多くの利点があり、今後伸びが期待できる。また、高速ビジョンセンサーにはソニーならではの技術を駆使しており、競合他社にかなりの差をつけていると思う。車載センサーは高画素、高耐熱性、高速対応、さらにはLED信号のフリッカー防止といった様々な機能を盛り込むことで、次世代自動運転に適応できるものとなった。事業として本格化するのはまだ数年先だと思うが、自動走行運転などには必須になると考えている。

―― 設備投資計画については。
 上田 17年度の半導体設備投資は計画どおりに1300億円を投入している。このうちCMOSイメージセンサー向けは1100億円になっている。今後も必要な投資は実行していくことになるだろう。生産能力としては、300mmウエハー換算で現有の月産8.8万枚から10万枚に引き上がることになる。スマートフォン(スマホ)向け需要が一服しているため設備投資時期は慎重に考える必要があるが、中長期的には着実に市場が拡大すると見ており、やはり能力は段階的に引き上げていくことになるだろう。

―― 注目のCrystal LEDディスプレーについては。
 上田 これは大切に考えている。大画面の高精細度向けをやろうとしており、各種商業施設や工業デザイン現場のシミュレーションなどに多くの需要がある。現在、鹿児島工場を増強中だ。

―― DRAM搭載型のCMOSイメージセンサーの可能性は。
 上田 17年2月に発表したDRAM積層の3層構造の積層型CMOSイメージセンサー(2120万画素)は、17年のXperiaシリーズに搭載されており、他社でも採用するところが出てきている。高速読み出しが可能であり、動きの速い被写体の撮影にも強い。毎秒最大1000フレームのスーパースローモーションの動画撮影も可能だ。今回は、裏面照射型の画素部分と信号回路部分との2層構造の積層型CMOSイメージセンサーに、容量1GビットDRAMを積層した。

―― IoT時代の本格到来でセンサーの急激な需要拡大が期待されています。
 上田 業界内では様々な議論がなされているが、私見によればIoTの本格開花で100億個の画像センサーが必要になる時代が迫っていると思う。これをスマホに搭載される代表的イメージセンサーのサイズで考えれば、100万枚のウエハーが必要になる。このうちソニーの半導体がどこまでやるかという議論は別にあるが、お客さまの期待に応えて、より高性能かつ最高品質なものを提供していかなければならない。開発と一体化した製造プロセスの革新により、さらなる生産性向上を図っていく考えだ。

(聞き手・特別編集委員 泉谷渉)
(本紙2018年3月1日号1面 掲載)

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