電子部品大手の2017年4~12月期の連結決算が出揃ったが、多くが増益であり、純利益率も高いことには驚かされるばかりであった。特徴的なことは、自動車の電子制御化やコネクテッドカー、さらには安全走行運転などによる需要拡大を追い風にしていることだ。
ITの代表商品であるスマホが17年についにと言うべきか、やはりと言うべきか、マイナス成長となっている。そしてまたFacebookはめちゃめちゃであり、期待されていたタブレットは一気後退を続けており、今や落ち目の三度笠となっている。
今日にあって時代は大きく動き始めたのだ。この十数年間、電子デバイスの市場を強烈に引っ張ってきたIT産業のハードが、成長鈍化どころかはっきりと失速した。AppleもGoogleもAmazonもみなポストスマホ、すなわちポストITへの道を探り始めている。そうしたなかにあって、自動車産業は今や格好のターゲット市場と言えるのだろう。
自動車は1台の単価が平均でも100万円以上する高額商品であるにもかかわらず、年間1億台弱を出荷するという化け物商品である。IT鈍化が鮮明な現在にあって、デバイス業界が熱い視線を自動車産業に向け始めたのは無理もないことだ。かつて隆盛を誇った電気関連の展示会は少しく元気がなくなってきているのに、自動車関連の展示会は押すなへすなの大活況にある。
筆者は、まだ少し時間の余裕があったころには自動車ショーにもよく出かけ、写真を撮りまくったものだ。しかして自動車そのものというよりも、その横に艶然とほほ笑むモデルの女性の皆様を激写することしきりであった。あまりに近くに近づき、接写しているものだから、係員に注意されることも度々であった。帰社してから記者たちに「お美しいでしょう。きれいでしょう」と、写真の出来栄えを自慢するのであるが、彼らは常にこれを無視した。
それはともかく、次世代エコカーであるEV、プラグインハイブリッド、さらには燃料電池車などの急成長が予想されており、これに関連するパワー半導体やマイコンなどのデバイスが注目を集めている。そしてまた自動車はセンサーの固まりであり、CMOSイメージセンサー、圧力センサー、磁気センサー、ハプティクスセンサーなどおびただしい数と種類のセンサーが使われており、これが電子部品メーカーに大きな福音をもたらすのは間違いない。
そしてまた自動走行運転および安全走行運転(ADAS)などの進展なども、電子デバイスにはビッグインパクトになる。車全体を制御するデバイスがどうしても必要になるからだ。さらにはコネクテッドカーといわれる次世代車は、将来は人工知能(AI)も積み込み、いつでも、どこでも、誰とも通信できる機能を備えるだろう。ここにおびただしい数の電子部品と半導体が使われるのだ。
電子部品大手の17年4~12月期の連結決算を見た場合に、とりわけ目立つのは村田製作所と日本電産である。村田は1兆331億円を売り上げており、18年3月期の通期では1兆3620億円の売り上げを予想している。純利益は相変わらず高く、通期で1440億円を計上しそうだ。純利益率12%は各社の中でも飛び抜けている。車載向けを中心に積層セラミックコンデンサーが伸びているのだ。日本電産もまたすさまじい売り上げ増となっている。4~12月期の売り上げが1兆1059億円となっており、何と通期は1兆4500億円まで上げていくことになりそうだ。純利益も1280億円を叩き出すだろう。車の自動化が進むことにより、同社の切り札とも言うべきパワーステアリングモーターが伸びてくるのだ。
これまでの電子デバイスの好不況はひたすらスマホ、パソコン、テレビなどのIT製品に左右されてきた。しかしながら次の巨大市場である車載向けがIoT時代を迎えて確実に成長するのであるから、電子デバイス業界は向こう数年間はそう簡単にはへたらない、と筆者は確信している。
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泉谷 渉(いずみや わたる)略歴
神奈川県横浜市出身。中央大学法学部政治学科卒業。30年以上にわたって第一線を走ってきた国内最古参の半導体記者であり、現在は産業タイムズ社 社長。著書には『半導体業界ハンドブック』、『素材は国家なり』(長谷川慶太郎との共著)、『ニッポンの環境エネルギー力』(以上、東洋経済新報 社)、『これが半導体の全貌だ』(かんき出版)、『心から感動する会社』(亜紀書房)など19冊がある。一般社団法人日本電子デバイス産業協会 理事 副会長 企画委員長。全国各地を講演と取材で飛びまわる毎日が続く。