2017年のメモリー業界は需給が年間通じてタイトな状況が続き、それが価格に反映されるかたちでメモリー各社の業績は非常に高い収益を確保した。有力メモリーメーカーの米マイクロンテクノロジーもその1社で、DRAM、NANDともに好調をキープした。シニアバイスプレジデントの要職にあるウェイン・アラン氏はグローバルに広がる製造部門を統括する立場にある。同氏にマイクロンの今後の製造戦略について語ってもらった。
―― 足元のメモリー市場の見通しは。
アラン DRAMは非常に堅調な市場環境が続いている。我々は18年の業界全体のビット出荷成長率を17年と同水準の20%と見ている。NANDに関しては一部で調整局面となっているところもあるが、従来よりもポートフォリオは多様化しており、十分に弾性力は働いている。業界のビット出荷成長率は約50%を見込んでいるが、我々のビット出荷はこれをややアウトパフォームする計画だ。
―― わかりました。まず先端DRAMの立ち上げ状況から教えて下さい。
アラン 1Xnm世代の歩留まりはすでに安定したものとなっており、18年度(18年11月期)末までに既存プロセスを上回るビット出荷量になりそうだ。1Xnmは広島工場(Fab15)と台中工場(Fab16)で先行して生産しているが、桃園工場(Fab11)でも量産を行う。次世代の1Ynmについても開発を進めており、18年1~3月期にサンプル出荷、9月ごろをめどに生産増強を行う。
―― 広島工場で新棟を建設しています。進捗は。
アラン もともと事務棟だった施設を取り壊し、新たに生産棟を建設している。DRAMは微細化の進展に伴い工程数が増えており、ウエハーアウトプットを維持すべくクリーンルームを拡張する。工事は順調に進んでおり、18年夏ごろの完成を予定している。
―― 競合メーカーはウエハーキャパシティーの増強を行っているようですが、貴社は。
アラン ビット成長率が20%であれば微細化投資で十分対応可能だ。それに競合メーカーのキャパシティー増強投資も控えめだと認識している。当社は引き続き微細化投資に注力していく考えで、1Znmなどの開発も強化している。広島工場では現在、新棟を建設しているが、1Znm以降を見据え、さらなる拡張投資も検討している。
―― 具体的には。
アラン 広島工場内にはウエハーテスト工程を委託している(株)テラプローブがオンサイトでテストオペレーションを展開しているが、同オペレーションを今後譲り受ける(譲渡は18年5月を予定)。我々は今後、ウエハーテスト工程を台湾の工場内でメーンに展開するつもりで、広島工場内にあるテスターの一部を台湾に移設していく。空いたスペースをウエハープロセスのラインとして活用していく予定で、1Znm以降を見据え、EUV露光装置などを導入することになるだろう。これら一連の投資などで、広島工場に対する投資額は今後3年間で数十億ドル規模を予定している。
―― 3D-NANDの状況は。
アラン 現在64層世代の立ち上げに注力しており、歩留まりはマチュアな状況になっている。18年には我々が予定している出荷ビット成長率50%超に大きく貢献してくれると思っている。同時に96層世代の開発も進めており、18年初頭からサンプル出荷を開始する予定だ。
―― 生産体制は。
アラン シンガポールで集中生産体制を敷いている。北部のFab10/10Xのほか、南部のFab7(旧TECHセミコンダクター)で2D-NANDから3Dへの転換も進めており、18年中にシンガポール内の工場はすべて3Dに切り替わる予定だ。なお、2D-NANDは引き続き、バージニア州にあるマナサス工場(Fab6)で生産を行っていく計画だ。
―― あわせて後工程の生産戦略も教えて下さい。
アラン インハウスとアウトソースを使い分けているが、DRAMに関しては台湾、NANDに関してはシンガポールを「センター・オブ・エクセレンス」と位置づけており、パッケージの開発・量産はこれら各地域で強化している。台湾では17年に台中で新たに後工程拠点を取得しており、開発力の強化を図っている。3D―NANDは前工程をシンガポールで行い、後工程はシンガポールに加えて隣のマレーシアにあるムーア工場で全量行う体制となっている。
(聞き手・副編集長 稲葉雅巳)
(本紙2018年1月11日号1面 掲載)