シャープ(株)(堺市堺区匠町1、Tel.072-282-1221)の八尾事業所(大阪府八尾市北亀井町3-1-72)は、冷蔵庫やエアコン、調理機器などの白物家電を担当する健康・環境システム事業本部の中心拠点である。同社は1957年に冷蔵庫、掃除機、洗濯機の生産を開始して白物家電60周年を迎えるが、八尾事業所は参入から数年を経た59年に稼働した。生産の主力は海外に移っているが、新製品の試作や自動化、省力化技術の開発などのマザー工場として、重要な役割を担い続けている。
現在の八尾事業所では各種白物家電の開発を行っているほか、冷蔵庫を量産している。冷蔵庫工場は1700台/日規模を生産しており、大型・中型の2ライン体制である。5階建てで、冷蔵庫の本体となる金属板の加工から組み立てまでを一貫で生産している。
1階では塗装済み金属板の切断、穴開け、成型といった加工からスタートし、熱交換パイプや断熱材を取り付けて冷蔵庫の形状に折り曲げる。バックプレートを設置して防爆室でウレタンフォームを封入した後、コンプレッサーを取り付けてエレベーターで3階に上げる。3階では配管、庫内部品やドアの取り付け、冷媒の充填などの組み立てを進め、外観や動作などの検査を行う。その後、エレベーターで5階に搬送して梱包し、出荷する。このほか、2階では庫内部品、4階ではドアを製造している。どちらも組み立て後に3階のラインへ自動で運ばれてくるようになっている。
冷蔵庫生産の一連の工程は完全にコンベアーライン化されており、特に1階は大半が自動化している。一方、3階の組み立ては大半が手作業。これは製品ごとに細かな形状や構造が異なり、毎日複数の種類をロット単位で生産していることから完全自動化が困難なためである。ただし一部の工程ではロボットを使用しているほか、取り付ける庫内部品の供給などを自動化して効率化を図っている。また、工程全体をネットワークで管理しているため、生産する品目の切り替えにおいてもスピーディーに対応できる。
冷蔵庫の生産はタイに全世界向けに出荷するハブ工場があり、中国とインドネシアに現地向け中心の拠点がある。八尾工場は国内向けの生産に特化しているが、マザー工場として自動化や省力化技術を開発し、海外拠点に展開する役割を担っている。今後の冷蔵庫事業の拡大に当たっては、まず外部のEMSに委託している生産を親会社の台湾鴻海グループに移管し、さらに次のステップとして自社および鴻海での生産増強という流れを想定している。海外に生産の主力が移っている中で八尾工場での能力拡張は考えにくいが、今後工場のスマート化が進む中で先進的な生産技術を開発する役割の重要性は変わらないだろう。