オムロン(株)(京都市下京区塩小路通堀川東入、Tel.075-344-7000)は、独自のセンシング&コントロール技術を活用したオートメーション製品の世界的な企業として知られる。近年はロボットも製品群に加え、製造・物流現場の自動化ニーズにトータルで対応できる体制が整った。ロボット製品の動向を中心にロボット推進プロジェクト 副本部長の池野栄司氏に伺った。
―― 貴社のロボット事業の概要から。
池野 当社の制御機器事業は「ILO+S」(Input[センサーなど]、Logic[PLC]、Output[ドライブ関連]+Safety)のマシンオートメーション商品を組み合わせることで、お客様の課題解決に長年取り組んできた。そして2015年に米国最大の産業用ロボットメーカーであるアデプト テクノロジー(現オムロンアデプトテクノロジーズ)がグループに加わり、ロボット(R)が製品群に加わったことで、「ILOR+S」によるソリューション提供が可能となり、製造現場における部品供給、組立、検査、包装など、あらゆる工程の自動化ニーズにトータルで対応できるようになった。
―― ロボット製品の需要動向は。
池野 FA製品トータルでの提案力が評価されるとともに、当社が持つ販売ネットワークをロボット製品にも活用することで、車載、電機・電子、食品など幅広い分野で引き合いをいただいている。市場別では、中国での伸びが目立つが、日本をはじめグローバルで需要が増加しており、17年度におけるロボット製品の販売は前年度比1.5倍以上を目指している。
―― 出荷作業や物流関連でもロボットに対するニーズが高まっています。
池野 当社にもそういうお話が増えており、製品としては人工知能(AI)を搭載した自律移動型の搬送ロボット「屋内用モバイルロボットLDプラットフォーム」を17年1月から展開している。ロボットが最短ルートを自動的に判断し、人や障害物を自動で回避しながら決められた場所に荷物を届けることができる。
また、高性能の産業用ロボットコントローラー製品を手がける(株)MUJIN(東京都墨田区)と連携したソリューションの提案も始めた。同社は、ばら積みされた商品をロボットが自ら考えてピッキングできる技術を有しており、物流倉庫の仕分け作業の自動化に関する取り組みで豊富な実績を持つ。この技術と当社のロボットの技術を融合し、出荷工程に関する自動化ニーズにも対応できる体制を整えた。
―― 開発面での取り組みは。
池野 使い勝手の良さを高める取り組みを進めている。例えば、PLC 1台でロボットを含めた当社の製品を制御できるようにし、機械とロボットの連動性を高めているほか、ロボットのオフラインティーチング機能の充実を図り、新しいラインの立ち上げやレイアウト変更にも素早くかつ容易に対応できるようにした。今後はロボットだけでなく周辺機器も含めたシステム全体のシミュレーションをオフラインで行えるようにし、さらなるリードタイムの短縮を実現していきたいと考えている。
―― そのほかの取り組みは。
池野 中期的には「人間と機械の究極の協調」を実現していきたいと考えている。IoTやAIといった技術を取り込み、ロボットが人の動作を常にセンシングし、人を感知した際にも停止せずに人を避けながら動作するシステムをイメージしている。新たな技術も積極的に取り込んでおり、その1つとして6月に理化学研究所と「理研BSI―オムロン連携センター」を設立し、「人と機械が共に社会のなかで進化するための脳科学とAIの融合」について研究を進めている。
―― 今後の抱負を。
池野 当社は20年度に全社売上高1兆円(参考:16年度実績7942億円)を目指しており、うち制御機器事業では4800億円(同3310億円)を目標としている。その目標達成に向けて、「integrated(制御進化)」「intelligent(知能化)」「interactive(人と機械の新しい協調)」という3つの「i」からなる戦略コンセプト「i-Automation!」を標榜し、製造業のモノづくり現場の革新に取り組んでいる。当社ではロボットをこのコンセプトを実現していくための非常に重要な製品と捉え、先に述べたような取り組みを進めており、今後様々な分野に対応できるソリューション力をさらに高めていきたいと思う。
(聞き手・浮島哲志記者)
(本紙2017年12月28日号9面 掲載)