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第252回

シチズンファインデバイス(株) 水晶デバイス部 部長 中野明彦氏


水晶ブランクから一貫生産
SMDの需要旺盛で2割増産へ

2017/12/15

シチズンファインデバイス(株) 水晶デバイス部 部長 中野明彦氏
 シチズンファインデバイス(株)(山梨県南都留郡富士河口湖町船津6663-2、Tel.0555-23-1231)は、水晶デバイスの結晶振動子片(ブランク)加工から、音叉型やATカット型の水晶振動子、水晶発振器までを手がける一貫メーカーだ。なかでも高精度なブランク加工に強みを持ち、多くの水晶デバイスメーカーに供給している。直近の市況や現在の取り組みを水晶デバイス部 部長の中野明彦氏に聞いた。

―― 水晶ビジネスの歴史について。
 中野 御代田事業所(長野県北佐久郡)で1975年に時計用として音叉型のブランク加工を開始し、翌76年に水晶振動子、82年には高周波用ブランク加工にも着手した。2001年に中国・梧州市に子会社「領冠電子(梧州)有限公司」を、16年にはフィリピンに「CITIZEN FINEDEVICE PHILIPPINES」をそれぞれ設立している。現在は主にフィリピンでブランクを加工し、悟州で水晶振動子の97%を生産している。

―― 御代田事業所でもブランク加工やデバイス製造を手がけていますね。
 中野 水晶原石のブロックをワイヤーソーでウエハー状にカットし、ラップ~エッチング~ポリッシュを経て厚みを100μm程度に整え、フォトリソグラフィーなどデバイスの製造プロセスに入る。デバイスの仕様に応じた周波数の偏差を粗調、微調で調整したのち、真空封止~検査を経て出荷する。ATカット型のブランクは広く外販も手がけている。

―― 足元の市況は。
 中野 ATカット型については、最大市場であるスマートフォン向けの需給が緩んでいる。台数伸び率が鈍化していることに加え、アプリケーションプロセッサーメーカーのシェア変動によって、今夏からTCXO(温度補償水晶発振器)に過剰感が出ており、年内の解消は難しい状況だ。当社のブランク出荷にも影響が出ている。
 一方で、車載向けは好調だ。台湾勢が一部出てきてはいるが、当社がブランクを納入している日系デバイスメーカーのシェアがかなり高く、引き続き引き合いが強い。また、スマートメーター向けにも数量が出始めた。当社はフィリピンで全量を生産しており、品質への要求も高くなってきている。

―― 水晶デバイスに関してはいかがですか。
 中野 音叉型の樹脂モールドタイプ・パッケージタイプのSMD品が足りず、フル生産している。当社は悟州で32.768kKHzのチューニングフォークを一貫生産しているが、ユーザー側で中国の人件費高騰に伴う生産の自動化ニーズが高まり、既存のシリンダー型からSMD型への移行が進んでいることが背景にある。SMD型はスマートメーターや加熱式タバコ、時計に搭載されており、特に「CM315」(サイズ3.3×1.6×0.9mm)の需要が旺盛で、これより小型品の需要も増えている。
 悟州のラインを30日フル稼働しても需要に追い付かないため、御代田事業所のラインを再稼働させることに決めた。12月には本格稼働させる予定で、これによりSMD型の生産能力を20%アップさせる。

―― 今後の方針は。
 中野 AT型ブランクの小型化と高周波対応を進める。現在60MHzまで対応しているが、5G通信に向けて100~120MHzへの対応が求められており、ブランクの形状や厚みの最適化で実現したい。
 小型化に関して、現在は3225(3.2×2.5mm)の需要が最も多いが、すでに1612が商品化され、1210への移行が始まっている。当社は1008まで試作を完了しており、さらなる小型化と性能の両立を図っていく。

(聞き手・編集長 津村明宏)
(本紙2017年12月14日号12面 掲載)

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