(株)フェローテックホールディングス(東京都中央区)は現在、半導体用シリコンウエハーの事業拡大を強力に推し進めている。ウエハー需給の逼迫に直面する半導体業界において、同社の動きには大きな注目が集まっている。すでに小口径(5/6インチ)で量産実績を有しており、足元では200mmウエハーの生産も強化。さらに、300mm分野への参入に向けた検討も本格的に開始するなど、攻勢を強める。注目のシリコンウエハー事業ならびに他の主力事業について、賀賢漢副社長に話を聞いた。
―― まずは200mmウエハーの立ち上げ状況から。
賀 第1期投資として中国の銀川工場で結晶引き上げ工程、上海工場でウエハー加工工程の生産ラインの建設を進めている。2017年10月時点ですでに月産5万枚の生産能力を有しており、11月に同8万枚、12月に同10万枚体制に順次増強する。年明けには当初計画の同15万枚体制となる見通しだ。
―― 杭州でも新たに200mmラインを設けます。
賀 第2期投資としてパートナーの杭州市と200mmウエハー製造の合弁会社を設立する。200mm製造にあたってはウエハー大手の台湾グローバルウェーハズ(GWC)と業務提携しており、販売合弁会社を両社で立ち上げると同時に、200mm製造における技術支援を受けている。
―― 杭州新工場の今後のスケジュールは。
賀 200mmの新工場は12月に着工式を予定し、18年10月から装置搬入を開始する。19年1月に調整作業などを行い、19年10~12月期をめどに量産を開始できればと思っている。これにより、既存拠点の銀川、上海とあわせて月産45万枚の200mmウエハー製造ラインを持つことになり、中国市場ではトップになると考えている。
―― 300mmへの関心は。
賀 ぜひやりたい。ただし、200mm以上に300mmは参入障壁が高い。そのため、19年中に300mmウエハー製造のパイロットラインを設置し、翌年の20年には本格参入するか否かを判断する。
―― 改めて、ウエハー事業を展開するにあたっての強みは。
賀 第一に、GWCの提携関係、第二に小口径ウエハーでの量産実績、最後に引き上げ装置とるつぼの内製化による立ち上げスピードの早さがある。信越化学工業やSUMCOといった既存メーカーは除いて、中国企業で300mmウエハーへの参入を目指している企業のなかでは、どの点においても、当社が一番優位に立っている。
―― シリコンウエハー事業への今後の投資金額は。
賀 300mmを量産展開すると仮定すれば、200mmの投資も含めて、18~20年の3カ年でトータル1000億円規模になってくるはずだ。投資資金は自己資金に加えて政府からの補助金、さらにはウエハー製造子会社を上場させて株式市場から調達することも有力な選択肢だと考えている。
―― わかりました。半導体製造装置用部品の事業概況も教えて下さい。
賀 上期業績は当初計画を上回る結果となった。当社は真空シールや石英ガラス、セラミックスなどを手がけているが、上期はいずれも前年同期比で2桁台の成長を遂げた。石英、セラミックスを中心に生産能力の増強を進めており、17年末には16年末比で生産能力が1.5倍になる。18年以降も積極的に供給能力を増やしていくつもりだ。
―― 洗浄事業も好調です。
賀 当社は半導体やFPDなどの顧客工場から製造装置用部品の洗浄を受託している。中国国内を中心に、現在4拠点(上海、天津、四川、大連)で展開しているが、新たに福建省と安徽省にも拠点を設ける。これにより6拠点体制となり、中国全土をカバーできる体制を整えられ、より広範に仕事を受けられる。
また、今後の展開として半導体製造装置メーカーのOEM生産にも力を入れていきたい。もともと、米系メーカーはアジアのEMSを活用した外部委託を展開しているが、EMS企業と我々が決定的に違うのは、装置の心臓部であるチャンバーの製造まで請け負うことだ。これは我々にしかできないビジネスモデルだ。
―― 最後に今後の事業目標を。
賀 17年度(18年3月期)は全社ベースで売上高850億円、営業利益85億円を計画している。半導体製造装置関連やシリコンウエハー、さらにはサーモモジュール製品の拡大を図っていくことで、18年度は売上高1000億円の大台突破を目指していく。
(聞き手・副編集長 稲葉雅巳)
(本紙2017年12月7日号1面 掲載)