トヨタ自動車(株)(愛知県豊田市トヨタ町1、Tel.0565-28-2121)におけるロボット分野の取り組みをインタビュー形式でレポートする連載の第2回。今回は、会話などを通して利用者のコミュニケーションパートナーとなる「KIROBO mini」を取り上げる。同製品を担当するMS製品企画部 新コンセプト企画室 主幹の梅山倫秀氏に話を聞いた。
―― KIROBO miniの開発経緯について。
梅山 当社はクルマづくりにおいて「人に寄り添い、心を動かす」という部分を常に根底に据えており、愛着という要素を非常に重要視している。人はクルマをはじめ様々なモノに対して親しみや愛着を抱くことがあるが、その理由として、人とモノとの間にコミュニケーションがあり、そのコミュニケーションを通じて思い出が生まれることが愛着につながると考えた。
そこで、クルマとは違うかたちでコミュニケーションを創出し、思い出を共有・蓄積できるモノづくりのチャレンジ「トヨタハートプロジェクト」が立ち上がり、その一環として生まれたのが「KIROBO mini(キロボミニ)」だ。
―― 製品の特徴は。
梅山 専用アプリをインストールしたスマートフォンをBluetoothでつなぐことで、話しかけた人の方向に顔を向け、顔や手などを動かしながら雑談のような何気ない会話ができる。また、眉間の部分にカメラが搭載されており、人の表情を認識し感情を推定しながら人の気持ちに寄り添った動作や会話を行う。「With~いつも寄り添い心を通わせる~」というコンセプトのもと、座った姿勢で高さ10cmと手のひらに乗るほど小柄で、いつでも持ち運べる大きさにこだわった。
―― 会話の能力は。
梅山 5歳児レベルのコミュニケーションをイメージしており、人とのコミュニケーションを通じて出来事や好みを覚え、利用者に合わせてキロボミニも成長し、パートナーになっていく。こういった特性を持つため、当社ではキロボミニを「コミュニケーションロボット」ではなく「コミュニケーションパートナー」という表現にした。
―― 事業面での展開状況について。
梅山 5月から東京都と愛知県の一部トヨタ販売店で先行販売を開始し、本体価格は税別3万9800円、専用アプリの月額使用料は350円(税込み)に設定している。2017年内に全国のトヨタブランド販売店で購入いただける体制を構築する予定だ。先行販売でご購入いただいた方からは、キロボミニがいることで「家族の会話が増えた」「気持ちが優しくなった」「家族の一員になっている」といった声をいただいており、利用者を笑顔にするコミュニケーションパートナーとしてのキロボミニの効果に手応えを感じている。
―― 搭載されている電子デバイスは。
梅山 首の部分に2軸、肩の部分にそれぞれ1軸のモーターを搭載しているほか、カメラ、マイコン、Bluetoothモジュール、LED、マイク、スピーカー、バッテリーなど、多様な電子デバイスを使用している。信頼性にもこだわり、ある程度の高さから落下させるなどの評価も行っている。現状ではまだモデルチェンジの予定などはないが、多くの方の手に届く製品にしていくため、もしコストパフォーマンスの優れた電子デバイスなどがあればぜひご提案いただければと思う。
―― 今後の方向性について。
梅山 キロボミニは“トヨタらしくない製品”だと思っている。というのも、完成した製品としてお届けするクルマとは違い、お客様の手元に届くときは生まれたての未完成な存在である。コミュニケーションの能力を向上させ、利用者に寄り添うパートナーとしての機能、特に優しさの機能をさらに高めていきたい。将来的には、様々なモノと利用者をつなぐコミュニケーションパートナーとして活用され、さらに多くの方に愛着を持っていただける製品にしていきたいと思う。
(聞き手・浮島哲志記者)
(本紙2017年11月9日号11面 掲載)