BtoBの環境エネルギーの展示会として知られる「びわ湖環境ビジネスメッセ」は、2017年10月18~20日の3日間にわたり長浜バイオ大学ドームにおいて盛大に開催された。今年は20回目の節目を迎えることになり、出展社数も計292を数え前年を上回ることができたという。
この20年間で延べ5200組を超える出展者を獲得し、来場者数はトータル約72万人に達するというのだから、地方行政を主体にした展示会としては出色の存在であると言えるだろう。滋賀県がいかに環境保全に注力し、かつ環境ビジネスを世界に発信する意思を強く持っているかが分かる。
会場を歩いていたら、環境ビジネスや様々なエネルギー産業を主役とするこのメッセも20回目を迎え、大きくコンセプトを変えつつあることがよく分かった。すなわちメーンコンセプトを「第4次産業革命と環境産業の未来」と名付け、人工知能(AI)、IoT、データサイエンスなどの進化を、環境ビジネスに生かしていくことを強く打ち出していた。
国立大学法人滋賀大学は国内唯一のデータサイエンス学部を設けており、IoTやAIを農業、さらには環境保全などに生かしていく方向性を探っている。また、立命館大学は草津にキャンパスを持つが、水中ロボットによるびわ湖の生態観測システム、飛行ドローンによる有害鳥獣の行動監視システム、音声センシングによる野鳥観測システムなど、魅力ある出展内容で注目を集めた。
筆者はこのメッセには深く関わってきた。出展者募集についてもサポートしており、全国各地におけるプレゼンも手伝ってきた。それだけに20回目を迎えた今回のメッセは感慨深いものがあった。一番初めにこのメッセの設立を唱えた地元企業の高橋金属もお家芸の電解イオン水洗浄装置を出展しており、この展示を見ていたら少し目頭が熱くなった。地元の中小企業が地域おこしのために始めた展示会がこれだけのスケールとなり、国内外に情報発信をしていることの意味は大きいと思えてならなかった。
それにしても出展者のメンバーは大きく変わっている。あれだけ一世を風靡した太陽電池関連のカンパニーはほとんどいない状況であり、風力発電を含めて再生可能新エネルギーの退潮が目立った。わずかに地元の滋賀特機がペッパーを使いバイオマス発電の展示をしていたことが目をひく程度であった。周知のように現状において日本国政府が最も力を入れているのはバイオマス発電であり、これからこの種の展示会が増えていくことは確実だろう。
きれいなコンパニオンのお姉さんはいないかと必死になって探したが、まじめな展示会なので、全く見当たらなかった。それでも各ブースを回ればチョッチこぎれいなガイド嬢がいるのではないかと下から目線でキョロキョロしていたら、多くの人に不審の目を向けられてしまった。「おい何をやっているんだ」と肩を叩かれたが、それは関東から出展してきたメンバーの人たちだった。
この展示会は圧倒的に近畿エリアの出展者や来場者が多いわけであるが、今回は温度センシング世界一のチノー、半導体・液晶向けのドライエッチング工程で使われる湿式除害装置を武器にする東設、多機能の除菌・脱臭・空気浄化装置を新たに市場投入したダン・タクマなどが初参加であり、いずれも関東勢であった。そしてまた、新拠点「滋賀竜王製作所」を建設中の東洋電機製造も、勝負球の製品であるインテリジェントインバーターを出展し、気を吐いていた。
ただ残念に思ったことは、IoTをテーマにすることにカーブを切った今回のメッセであったが、時代の焦点となっている省エネルギーデバイスについてはほとんど出展する会社がなかったことだ。京滋エリアには村田製作所、ローム、日本電産などの有力な電子部品メーカーがおり、いずれもIoT時代に合わせた省エネルギーデバイスを持っている。こうしたメーカーを集めるゾーンがなかったことが口惜しい。パワーを制御するデバイスメーカーとしては他にも三菱電機、富士電機、東芝、新電元工業など世界に通用する日本勢が多いわけであり、今後はこうした電子デバイスメーカーにも出展してみたいと思わせるコンセプトを確立する必要があるだろう。
■
泉谷 渉(いずみや わたる)略歴
神奈川県横浜市出身。中央大学法学部政治学科卒業。30年以上にわたって第一線を走ってきた国内最古参の半導体記者であり、現在は産業タイムズ社 社長。著書には『半導体業界ハンドブック』、『素材は国家なり』(長谷川慶太郎との共著)、『ニッポンの環境エネルギー力』(以上、東洋経済新報 社)、『これが半導体の全貌だ』(かんき出版)、『心から感動する会社』(亜紀書房)など19冊がある。一般社団法人日本電子デバイス産業協会 理事 副会長 企画委員長。全国各地を講演と取材で飛びまわる毎日が続く。