(株)メイコー(神奈川県綾瀬市大上5-14-15、Tel.0467-76-6001)の自動車、スマートフォン(スマホ)向け基板の受注が好調だ。IoT時代の本格到来を踏まえ、今後は通信用モジュールのほか各種センサー用モジュール基板の需要拡大に期待する。重要保安部品対応の車載基板に注力するため、ベトナムでは新たな工場を建設、旺盛な需要増に対応する。再び拡大路線に転じる同社の名屋佑一郎社長に足元の受注環境ならびに2017年度の事業展望を聞いた。
―― 17年4~6月期の決算は前年同期比で大幅増収増益となりました。
名屋 売上高は同14%増の255億円、営業利益も同63%増の15億円強を確保した。車載やスマホ向けが好調に推移した。中国市場では日系自動車メーカーの販売が好調で、韓国スマホメーカー向けには良かった。中華系スマホメーカー向けも一時調整があったが、4~6月は堅調に推移した。
―― 足元の市況について。
名屋 引き続き、好調に推移している。国内外の工場はほぼフル稼働が続いている。牽引しているのは、やはり車載ならびにスマホで、一部産業機械向けも動いている。4~6月の好調な流れをそのまま引き継いでおり、当初計画どおりの受注をいただいている。
―― 17年度の事業計画は。
名屋 通期の全社売上高は、前年度比7%増の1030億円、営業利益は同7%増の62億円の増収増益を目指す。車の先進運転支援システム(ADAS)やエコカーの普及で車の電装化比率の向上が寄与する。スマホもインドなどの新興国需要や、先進国でも買い換え需要が引き続き期待されることで売上増に貢献する。さらに、ビッグデータ処理などにデータセンター向けのハイエンドサーバーに搭載されるSSDの需要が伸長している。
―― ベトナムで新棟建設の動きがあるようですが。
名屋 旺盛な車載用基板の需要増に対応する。いわゆる「走る」「曲がる」「止まる」といわれる重要保安部品向けの信頼性の高い基板市場に本格参入する。許可が下りれば18年の早い時期に着工し、同年秋には稼働させたい。
ベトナムの既存工場(タクタットとタンロン)でもビルドアップ基板の能力増強を実施中だ。タクタットは月産5万m²に引き上げており、10月から稼働させる。スマホ、モジュール基板などを増産する。タンロンは現在、同1.5万m²まで引き上げているが、早急に同2万m²まで拡大する。スマホ向けを中心に拡大する。
MSAP技術を使ったスマホ向けメーン基板の量産にも対応できるよう準備は進めるが、需要動向をしっかりと見極めたい。
―― 中国での生産状況を教えて下さい。
名屋 2拠点(広州と武漢)を展開しているが、広州は現在月産17万m²の生産能力があり、このうち9割は車載向けで推移している。足元は車載基板の受注が好調で、現在の生産量を今後とも維持したい。車載用のBU基板の能力も拡大したい。武漢は同19万m²体制で稼働中だが、このうち月5万m²はスマホ向けに供給している。車載用が6~7割を占めている。
―― 国内工場の状況を教えて下さい。
名屋 山形工場は車載専用工場になっており、現在は24時間フル稼働が続く。石巻工場ではLEDヘッドライト向けの放熱基板が忙しい。国内向けのスマホ基板も量産している。今後、石巻では車載用BU基板の増産も計画している。
―― FPCやミリ波用特殊基板などにも展開中です。
名屋 タクタット工場で、FPCやリジッドフレキ基板も手がけている。月産1.5万m²あるが、これを倍増の同3万m²まで拡大したい。部品実装までの工程を請け負うことで付加価値もつける。
アルミや銅ベース基板の量産も検討している。一部の製品は、熱伝導率の高い樹脂材料を必要とするため、樹脂メーカーとも共同で開発を進めている。認定が下りれば18年にも量産したい。
―― 拡大・成長路線に戻りましたね。
名屋 18年度投資額は今年度よりも大幅に増額して、100億円前後になるだろう。この水準を当面維持し、中長期的には売上高1500億円を目指す。引き続き、車載を中心にスマホ向け、各種モジュール基板などで売り上げを拡大していく。
(聞き手・副編集長 野村和広)
(本紙2017年9月28日号5面 掲載)