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第240回

(株)ジャパンディスプレイ 代表取締役会長兼CEO 東入來信博氏


蒸着式有機ELは社長直轄に
印刷方式で国内企業を巻き込む

2017/9/22

(株)ジャパンディスプレイ 代表取締役会長兼CEO 東入來信博氏
 (株)ジャパンディスプレイ(JDI)は8月9日、能美工場(石川県)の生産を停止し、(株)JOLEDが進めてきた印刷式有機ELの拠点として活用を検討することなどを含めた構造改革案を発表した。6月にJDIの代表取締役兼CEOに就任した東入來信博氏に話を伺った。

―― 有機ELパネルについては、市場の先読みが甘かったのでは、といった声もあります。
 東入來 JOLEDが2014年7月に発足した当初から、同社はJDIの新規事業としての位置づけにあった。にもかかわらず、JDIの中で有機ELに関する意識が希薄だったことは否めないだろう。しかし現状でも、JDIがJOLEDを、つまり印刷式有機ELを積極的に取り込むという狙いは当初から何も変わっていない。
 印刷式の有機ELディスプレーは、17年4月に発表した21.6型(204ppi、3840RGB×2160、厚さ1.3mm、重量500g)がソニーの医療用モニターに採用されることが決まっている。現在、装置や製造方法など量産に向けての技術開発、検証が一段落したところだ。

―― 蒸着式有機ELについてはどのようにお考えですか。
 東入來 蒸着式有機ELについては、社長・有賀の直轄の組織とし、茂原工場で開発・生産などを進めていく。当社の蒸着方式は、現状量産されている方式と異なる。縦型の蒸着装置で電鋳マスクを使用している。これは高精細化がしやすく、開口率が高く取れることが特徴だ。
 例えば、現在の主流は1ピクセルに赤(R)もしくは青(B)と緑(G)の2つのサブピクセルを搭載したペンタイル方式だが、当社の方式では1ピクセルにRGB3つのサブピクセルが搭載され、より高精細な画像にすることが可能だ。また、これまでアドバンストLTPSで培ってきたバックプレーン技術もあり、パネル本体だけでなく周辺の付帯技術にも強みを持つと自負している。
 構造改革を発表した際にも申し上げたが、蒸着式有機ELパネルは現在、開発の佳境にある。19年度に市場投入されるスマートフォン向けに作り込んでいる段階だ。

―― 印刷方式で量産するとなると、数量の出るテレビ市場を狙いたいのでは。
 東入來 今のところテレビはターゲットではない。ここはグローバルパートナーとともに進めていく方針だ。ニッチ市場かもしれないが、医療向けや業務用ハイエンドモニター、ゲーミング用モニター、さらには車載用モニターなどが当面は印刷式有機ELにふさわしいと考えている。
 印刷式有機ELについては、生産拠点として能美工場の活用を検討すると発表したが、正直なところ、この公表は社外的にも社内的にも良かったと思っている。というのは、例えば装置や設備などの見積もりを取ったりすることも前向きに検討が進められるからだ。そして、これがもっと具体化すると色々なことが見えてくるだろう。
 やはり、技術の人間がワクワクして研究できるものを残していくべきだ。当社には大変優秀な技術者が揃っており、ここは自信を持ってやっていけると思っている。

―― 有機ELパネルでは日本勢の存在感が乏しいですが、東京オリンピックの際には純国産品のパネルを数多く見てみたいです。
 東入來 私も見てみたいと思う。スマートフォンへの有機ELパネル採用が加速してきたことで、一気に普及するような流れが来ているが、まだ草創期。有機ELはまだまだこれからだ。だからこそ当社は今が正念場であると考えている。20年までには、印刷方式の有機ELが周囲を巻き込んで、日本企業みんなで有機ELパネル作りに取り組むような流れができればいい。みんなで一緒にやっていこう、という機運づくりに貢献できれば幸いだ。

(聞き手・特別編集委員 泉谷渉/澤登美英子記者)
(本紙2017年9月21日号1面 掲載)

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