電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第238回

(株)ジャパンセミコンダクター 取締役社長 森重哉氏


ファンドリー事業が好調
20年度に営業利益率10%へ

2017/9/8

(株)ジャパンセミコンダクター 取締役社長 森重哉氏
 (株)ジャパンセミコンダクター(本社・岩手事業所:岩手県北上市、大分事業所:大分市)は、2016年4月に発足した東芝系半導体メーカーだ。今は東芝向けの半導体製造がメーンだが、東芝以外の顧客からも請け負うファンドリー事業を強化中だ。車載向けで培った高性能かつ高品質のモノづくり力を武器に、世界でも有数のアナログファンドリーを目指す。同社の森重哉社長に話を聞いた。

―― 設立して1年4カ月が経ちました。
 森 川崎市内に「ファンダリビジネス統括部」を立ち上げ、その下に「戦略企画部」を開設した。試作・量産の現場となる岩手と大分とも連携して、機動的に動けるようにした。積極的に国内外から受託製造の仕事をとる。今年4月には、社内に法務部を立ち上げている。これは、受託製造の顧客との契約を迅速に進め、製品出荷を少しでも早くするためだ。法務部があるのは東芝半導体子会社の中では当社だけだ。

―― 足元の生産状況を教えて下さい。
 森 非常に好調に推移している。ミックスドシグナルIC、ロジック、リニアイメージセンサー(CCD)を当社で製造しているが、全製品にわたり旺盛な受注が続いている。特に多機能複写機向けのリニアイメージセンサーの受注が好調だ。車載向けの半導体製品も押しなべて堅調だ。家電用のマイコンも足元では強含みで推移し、ほぼ期初の予算どおりにきている。年末までの受注にはめどをつけており、2桁成長を目指したい。

―― 注力するファンドリービジネスの現状は。
 森 発足した当時のファンドリービジネスは、全社生産所要の5%にも満たなかったが、現在は10%以上にまで拡大している。特に得意としているミックスドシグナルICなどのアナログ系を中心に、各種モーター制御系半導体などは国内外の顧客から注文をいただくようになった。さらに受託製品の技術検討を進めている案件がいくつかあり、いずれも量産間近の製品だ。半年以上前倒しのペースで受託製造事業は拡大している。

―― ファンドリービジネス拡大のための施策は。
 森 当社の強みである(1)BCP(事業継続計画)、(2)品質力、(3)モノづくり力を武器に展開している。
 (1)は2つの生産拠点があることだ。本社のある岩手事業所と大分事業所は、距離にして1000km以上離れている。それぞれ免震対策を施しており、大きな揺れを伴う地震が来た場合でも、被害を極力低減できるシステムを導入している。さらには両拠点で80%以上のプロセスを共通化している。これにより、有事の際には両拠点で生産できる体制を構築している。
 (2)は世界的にも厳しい、クルマのサプライチェーンの品質マネジメント規格であるVDA6.3に対応した取り組みを進めている。17年2月の時点で欧州ティア1から合格点である90点以上の評価を受けているが、17年度上期中には98点の取得を目指し、品質改善に邁進している。当社は40年以上にわたり、車載グレードに対応した妥協のない品質を追求している。
 (3)は徹底してモノづくり力を鍛えている。特に装置に強く、モラルの高い人財の育成に注力している。多少、装置に不具合があっても当社のエンジニアならほぼ100%修理が可能だ。
 また、社内には24時間体制で解析・分析が可能な組織があり、高度で品質力の高い製品のモノづくりを支えている。

―― 東芝以外からの受託拡大が成長のカギを握る。
 森 中長期的には、東芝以外の製品受託を現状の4倍に引き上げたい。そのためには海外顧客の開拓は必須だ。すでに台湾ならびに米国では東芝の営業網を活用して顧客にアプローチしているが、今後は中国大陸ならびに欧州での営業力強化に動く。強化にあたっては専門商社との連携を積極的に図るほか、顧客の要望によっては、独自の営業拠点を検討する。

―― ファンドリー事業の今後の見通しについて。
 森 現在の生産能力は両事業所で月産10万枚(8インチ換算)あるが、装置管理やボトルネック工程の改善により、まだまだ稼働率を引き上げられる。大きな投資をしなくても操業度を向上させていく。ファンドリー事業は20年度までに17年度比でウエハー投入量を4倍まで拡大したい。これによって全体の操業度も現在の3倍の200%まで引き上げる。営業利益率では10%以上を狙う。

(聞き手・副編集長 野村和広)
(本紙2017年9月7日号1面 掲載)

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