電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
新聞情報紙のご案内・ご購読 書籍のご案内・ご購入 セミナー/イベントのご案内 広告のご案内
第231回

(株)安川電機 ロボット事業部 事業企画部 部長 富田也寸史氏


海外でロボットの生産体制強化へ
クリーンロボ分野にも再注力

2017/7/21

(株)安川電機 ロボット事業部 事業企画部 部長 富田也寸史氏
 (株)安川電機(北九州市八幡西区黒崎城石2-1、Tel.093-645-8801)が、産業用ロボットの取り組みを強化している。世界的なロボットの需要増を受け、生産体制の増強を計画しているほか、海外企業との連携も積極的に進めている。ロボット事業部 事業企画部 部長の富田也寸史氏に話を伺った。

―― 直近の需要動向から。
 富田 2016年度(17年3月期)におけるロボット事業の売上高は前年度比9.1%減の1400億円だった。これは上期を中心に円高で推移した影響が大きく、台数ベースで見ると前年度を上回った。市場別では中国での伸びが目立ったほか、欧米も堅調に推移した。用途別に見ると、主力の自動車向けも伸びているが、それを上回る勢いで3C(コンピューター、家電製品、通信機器)や3品(食品、医薬品、化粧品)、物流といった一般産業向けも伸びている。

―― 生産体制は。
 富田 現在、国内では八幡西事業所(北九州市八幡西区)と中間事業所(福岡県中間市)、海外では中国・常州市にある「安川(中国)機器人有限公司」でロボット製品を生産しており、全体で月産3000台(国内2400台、常州600台)の体制を構築している。需要の増加を受けて常州拠点の増築を計画しており、早ければ18年度に稼働を開始する。これにより、常州拠点での生産能力を1200台以上に引き上げる計画だ。また、欧州市場の対応力を高めるため、スロベニアで組立工場の建設を10月から開始する予定だ。18年9月の稼働開始を計画しており、20年ごろに月産300台の生産能力を確保する。

―― 企業間連携も増えていますね。
 富田 4月に中国のEMS企業「深セン市長盈(チャンイン)精密技術」と合弁会社の設立で合意した。スマートフォンの製造現場で使用する産業用ロボットを開発し、まずはチャンイン社の工場内での活用を進め、外販を目指していく。
 また、当社は15年10月に中国の大手家電メーカーである美的集団と産業用ロボットの合弁会社「広東安川美的工業機器人有限公司」を設立し、家電工場で活用できるロボットシステムを開発した。現在、様々な引き合いをいただき、もちろん外販も目指しているが、まずは美的の工場への導入を進めている。

―― 美的とはサービスロボット分野でも連携しています。
 富田 16年3月に介護リハビリ向けのサービスロボット事業を展開する合弁会社「広東美的安川服務機器人有限公司」を設立し、5月末に第1弾の製品を発売した。当社と美的のノウハウを融合することで、開発、製品認可、部品調達などもスムーズに進み、17年内に4製品、19年までに20製品の開発を目指している。

―― 電子デバイス分野での取り組みは。
 富田 当社ではスポット溶接、ハンドリング、組立、塗装用ロボットのほか、ウエハー搬送やFPD搬送用のクリーンロボットも展開している。近年は自動車や一般産業向けを強化していたが、半導体や有機EL市場の活況を受け、クリーンロボット分野も再び注力していく考えであり、その一環として3月にクリーンロボットを専門に取り組む部隊を組織化した。

―― 製品面では。
人協働ロボット「MOTOMAN-HC10」
人協働ロボット「MOTOMAN-HC10」
 富田 6月から人協働ロボット「MOTOMAN-HC10」の販売を開始した。安全柵なしで人と協働して作業できるロボットで、生産設備の自由度が向上し、これまでロボットの設置が困難とされていた工程などでも導入がしやすい。また、人協働ロボットは安全柵なしで使用できるため、将来的にはAGV(無人搬送車)などの移動体を組み合わせた「ロボット×モビリティー」いう方向性も重要性を増してくると見ている。当社でもそういった将来図を見越し、AGVメーカーなどと連携してすでに取り組みを始めている。

―― 今後の見通しを。
 富田 17年度のロボット事業の売上高は前年度比12.1%増の1570億円を計画している(17年度より決算期を3月から2月に変更し、17年度は11カ月の変則決算。数字は12カ月換算時の参考値)。中国や欧州を中心に受注が好調に推移しており、自動車向けを軸に、近年強化してきた3Cなど一般産業向けでのさらなる拡販を図っていく。こういった取り組みを進め、18年度には売上高1700億円を目指していく。

(聞き手・浮島哲志記者)
(本紙2017年7月20日号1面 掲載)

サイト内検索