電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第241回

明治維新150年を迎え「南国土佐」は超明るい


~工業生産出荷額で全国最下位に落ちてもめげない「高知家」の精神~

2017/7/7

 久方ぶりに南国土佐を訪れる機会に恵まれた。空港から県庁に向かう車の中で、県職幹部はため息をつきながらこうつぶやいたのだ。
 「今や高知県は工業生産出荷額で全国最下位に転落してしまいました。本当に悔しい。でも、めげてはいません。これからの展開が重要なのですから」

 日本のIT産業の一気後退は高知県を直撃した。液晶産業で頑張っていた高知カシオは売却に追い込まれ、半導体生産で一時は名を上げたルネサス高知も最盛期の半分にまで生産が落ち込んでいる。

 この間に何とか巻き返しを図るべく企業誘致に注力するも、「南海大地震が来たらもう終わりでしょう」と企業関係者に言われ、しょげ返るしかなかったのだ。しかして、高知県の有効求人倍率は1.06倍(正社員0.53倍)であり、はっきり言って工場進出をすれば雇用という点で全く問題がないところには、もっと企業は注目していいのだ。

 土佐といえば、明治維新回天の立役者である坂本龍馬を生み出したところである。明治維新そのものは、土佐の山内容堂候が後藤象二郎の発案を受けて徳川15代将軍に「大政奉還」を進言したことから始まったのだ。この頃の時代の主役であった土佐は、今や経済という点でもがき苦しんでいる。

 しかして、県の幹部に会ったところ、その表情は意外にも超明るかった。高知城の中にある県庁のあちこちに「高知家」という貼り紙、ポスター、のぼり旗があり、そこには「高知家はいろんな家族で大家族」というおふれ書きが添えてある。つまりは、これだけ困った時にこそ県民は一致団結して「高知家」を守るために深く交流し、天下にその意気を示すべしという県知事のスローガンを共有しているのだ。

 思えば太平洋戦争で300万人が死に、国の存続すら危うくなった時に見せた日本人の団結力はすさまじかった。食べるものもなく、着るものもなくても相互に助け合い、励まし合いながら国の復活をかけて戦っていった。その結果としてミラクル成長を遂げ、GDP世界2位にまで上り詰めていくわけであるが、世界中から「日本株式会社」とからかわれるくらいに、日本人および日本国は一致団結の精神で苦難を乗り越えていった。

坂本龍馬の人形と高知家の旗が県庁を訪問する人を迎えてい
坂本龍馬の人形と高知家の旗が
県庁を訪問する人を迎えてい
 高知県もまた未曾有の苦難の時であるからこそ、「高知家」としての団結力で知恵を出し力を出し合いながら、頑張っていこうというスピリッツが生まれているのだ。企業誘致が難しいなら県内企業の活性化を図るために注力する。また、じゃらん調査による「地元ならではのおいしい食べ物日本一」の評価となる食材の普及、そしてシンボルともいうべき重要文化財である高知城を前面に押し出したインバウンド戦略などを推進している。

 「苦しい時こそ負けたらいかんぜよ!!」という坂本龍馬の声が聞こえてくるようであった。来年は明治維新150年を迎えるため、高知県は全県を挙げてそのメモリアルとなるイベントキャンペーンを繰り広げている。はっきり言って、鹿児島、山口、佐賀よりも維新150年の観光キャンペーンにはかなりの力を投入しているのは間違いないだろう。南国土佐に生まれた岩崎弥太郎は、日本を代表する企業集団「三菱」を作り上げた。あの時の精神をもう一度、という気概が高知県全域に広がり始めている。


泉谷 渉(いずみや わたる)略歴
神奈川県横浜市出身。中央大学法学部政治学科卒業。30年以上にわたって第一線を走ってきた国内最古参の半導体記者であり、現在は産業タイムズ社 社長。著書には『半導体業界ハンドブック』、『素材は国家なり』(長谷川慶太郎との共著)、『ニッポンの環境エネルギー力』(以上、東洋経済新報 社)、『これが半導体の全貌だ』(かんき出版)、『心から感動する会社』(亜紀書房)など19冊がある。一般社団法人日本電子デバイス産業協会 理事 副会長 企画委員長。全国各地を講演と取材で飛びまわる毎日が続く。
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