電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第228回

下西技研工業(株) 代表取締役社長 下西孝氏


メカトロ、磁気、熱にフル展開
積極投資で20年に売上高100億円へ

2017/6/30

下西技研工業(株) 代表取締役社長 下西孝氏
 下西技研工業(株)(大阪府東大阪市島之内2-4-16、Tel.072-966-6131)は、メカ機構製品(ヒンジ)の開発設計技術をコアとし、磁気製品、熱対策製品、さらには各種メカトロに展開するカンパニーとして近年躍進を続けている。とりわけ、産業機器向けの軽量ヒンジにおいては圧倒的なシェアを押さえている。また、ここに来て複合機などに使われる新たな重送検知センサーという画期的な磁気製品の開発に成功している。2020年3月期にはグループ売り上げ100億円突破を狙うという。同社の創業者であり、現在も代表取締役社長として陣頭指揮を執る下西孝氏に話を伺った。

―― 和歌山のご出身ですね。
 下西 和歌山市で生まれ育ったが、父もまた私と同じく自営工場をやっていた。旧制和歌山中学として知られる和歌山県立桐蔭高校を出て法政大学法学部に進み、出版流通の大手に就職する。そこでは営業、人事、勤労などの仕事に約6年間従事した。その後、米ロサンゼルスに滞在し見聞を広めた。いわゆるアメリカンドリームの姿をこの目で捉えることができた。自分の努力で道は開けるとの思いで帰国し、1990年5月に中小企業のメッカとして知られる東大阪で創業した。

―― ヒンジで社名を上げていきますね。
 下西 当初はマグネットキャッチを販売していたが、付加価値が低いことに気がついた。やはり開発から設計、さらには製造までの一気通貫で作れる部品で勝負しなければ駄目だとの気持ちが強くなった。そこで精密メカ技術を駆使した高性能ヒンジの世界にのめり込む。当社の作るヒンジは特殊な構造にしてあり、均等で安定した圧力で押さえることができることが特徴だ。

―― ヒンジのラインアップは。
 下西 チルトヒンジはカスタマイズの産業用のあらゆる機器に対応する。重量ヒンジは産業機器における様々な圧板の開閉をスムーズにするものであり、ヒンジにダンパーを組み込むなどの工夫をしている。軽量ヒンジは軽い圧板の開閉をスムーズにするものであり、任意の角度で圧板を止めることができ、様々な厚さに対応し、安定した圧力で押さえることができる。この製品はトップシェアを獲得している。

―― 磁気製品にも展開していますね。
 下西 磁石単体から応用製品まで幅広く展開している。小型アクチュエーターは、磁石とコイルを組み合わせた可動型リニアアクチュエーターであり、カスタマイズ対応に強い。マグネットキャッチはコピー機前面の蓋の固定やキャビネットなどの扉の固定に使われるが、これまた当社としての歴史を持つ製品だ。今後の計画としては、ホール素子センサーを使ったデバイスの投入を考えている。

―― 熱対策製品も数多いですね。
 下西 OA機器は動作中に部品の一部分が発熱する宿命にある。機器の誤作動を防ぐためには発生する熱を逃がす必要があり、放熱のためのヒートパイプ、アルミヒートパイプを組み込んだ放熱モジュール製品は当社の得意とするところだ。その他にも電磁波吸収体、除電ブラシ、ヒーターなども扱っている。

―― 新たなセンサー開発については。
 下西 これは重送検知センサーという新開発製品で、複合機、コピー機、印刷機などに使われている超音波式センサーに代わるものとして期待している。ぴったり重なった用紙の検知には最適なセンサーであり、コストも非常に安いことが特徴だ。

―― 現在の売り上げ構成比率は。
 下西 OA機器向けが50%、各種電気機器向けが20%、住宅住設向けが10%、その他20%となっている。17年3月期売り上げはグループ全体で50億円を超えてきた。18年3月期については30%増を計画している。東京オリンピックが開催される20年3月期についてはグループ全体で100億円突破を目指している。

―― 拡大に向けての設備投資は。
 下西 別会社でマグテックというカンパニーが和歌山にあるが、中長期的にはここをしっかりと増強していきたい。本社はマーケティング/開発の拠点として整備する。海外は香港、東莞、タイに展開していったが、この後の計画としてASEAN地域にもう1拠点作りたいと思う。国内においても積極投資を断行していく。

―― 人材登用については。
 下西 グループ全体で450人となっている。下西技研工業には開発を中心に60人がいるが、R&Dをマーケティングに結びつけることのできる人材を増やしていきたい。女性労働力も活用していく考えで、管理職も育てたい。技術系における採用は重要であり、特に開発設計・エンジニアリングを強化していく。

―― 今後の方向性は。
 下西 お家芸のメカ機構製品の開発設計をベースにメカトロ、磁気、熱に展開するという基本方針は変わらない。しかし、これからはハードばかりではなく、ソフトの自社開発も重要だと思っている。また、アフターサービスも充実させていく。IoT時代を迎えて開花するといわれるロボット分野、医療分野への本格参入も考えており、こうした分野の新製品開発に全力を挙げていく考えだ。

(聞き手・特別編集委員 泉谷渉)
(本紙2017年6月29日号12面 掲載)

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