沖電気工業(株)(OKI、東京都港区虎ノ門1-7-12、Tel.03-3501-3111)は、中期経営計画2019を発表した。同計画では「安定して収益確保のできる会社」の実現に向け、稼ぐ力の強化に最注力し、持続的な成長と進化を遂げていくための基盤づくりを行う。稼ぐ事業をバランスよく保有し、次の成長の種をつくり出す力、逆風環境に耐え得る体力、攻めと守りのガバナンス運用を掲げる。
同社のEMS(電子機器の受託生産サービス)事業においては、国内生産の継続が見込まれるハイエンド領域に注力することで、中計の最終年度となる19年度に売上高600億円、さらに、2020年代には売上高1000億円を目指すとの方針を明らかにした。執行役員 EMS事業本部長の中野善之氏に事業の概況、目標達成に向けた事業戦略などについて伺った。
―― 16年度業績の総括をお聞かせ下さい。
中野 16年度売上高は前年度比1.9%増の432億円と、引き続きプラス成長を達成することができた。今年度も、足元の状況としては、すでに旺盛な引き合いをいただいている。
―― 17年度の事業計画は。
中野 売上高としては前年度比13.4%増の490億円と、2桁成長を見込んでいる。半導体計測装置・エネルギー関連の需要が旺盛なうえ、情報通信や医療機器関連なども堅調に推移しており、通期ベースで売上高490億円を目指していく。
なお、16年7月に日本アビオニクスからの事業移管を決めたPCB事業については、OKIサーキットテクノロジー(OTC)、OKIプリンテッドサーキット(OPC)の各拠点で認証の取得が進んでいる。今後、生産・出荷が順次開始される見通しで、これは通期業績に織り込んでいる。
―― EMS事業の新成長戦略について。
中野 今回、19年度に売上高600億円という目標を掲げているが、これは、20年代の売上高1000億円達成に向けた通過点と位置づけている。この3年間でしっかりとした事業基盤を築くことが大きなカギを握る。
―― 19年度に売上高600億円を達成するためには、年平均成長率12%が求められ、ハードルとしては非常に高いと思われますが。
中野 これは従来から計画していたもので、16年度の売上高が若干足踏み状態となったことで、高く見えてしまうだけだ。販売チャネルや技術、生産能力などでシナジー効果が見込める新たなM&Aに加え、新市場の開拓などを進めていくことで、着実にクリアしていきたい。
―― 具体的な事業戦略、主要市場での重点施策は。
中野 現在、当社では情報通信、計測、産業、医療、インフラの各市場をメーンに事業を展開している。既存顧客においては、顧客満足度をさらに向上させ、受注の継続を図るとともに、受託プロセスの拡大や工場まるごと移管などを推進することで、新規案件も獲得していく。
一方、今後は「航空宇宙」「電装(自動車、重機など)」を新たなマーケットと位置づけ、重点的に展開していく。
航空宇宙分野については、PCB事業から受託範囲を拡大していく。これまでも、OTCでは、JAXAの認証やJIS認証(航空)を取得し、試作案件などを手がけていたが、日本アビオニクスからのPCB事業移管を機に、さらなる事業拡大を図っていく。関連する認証の取得については、鋭意進めているところだ。
自動車や重機関連を中心とした電装分野では、ADAS(先進運転支援システム)の搭載や自動運転の実現に向けて電子化が大きく進んでいる。EMSグループで設計を手がけるOKIアイディエスは、ザイロン社とADAS用IPの国内独占使用契約を締結しており、EMSも含め、設計から試作までの受注獲得を目指していく。
―― 設備投資について。
中野 今後3年間で50億円の設備投資を予定している。PCB関連については生産能力の向上を中心に進める。EMS拠点においては、さらなる品質向上に向けてAOI(自動光学検査装置)などを中心に随時導入してく。
なお、新市場に向けては、実装工程などにクリーン環境が求められることも想定されることから、クリーンブースの導入について調査・検討を始めている。
(聞き手・清水聡記者)
(本紙2017年6月22日号5面 掲載)