商業施設新聞
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No.357

韓国の流通法の行方


嚴 在漢

2012/3/6

 韓国の地方自治体は、大型割引店と企業型スーパーマーケット(SSM)の営業時間の制限と休日を義務化する制度を施行するための準備に入っており、関連する流通業界が困惑している。

 今年1月に、「流通産業発展法(流通法)」の改正案が公表された。その中身は、既存の市場を保護するために、市長や町長など地方自治体の首長が大型割引店とSSMの義務休日を指定するほか、深夜営業が制限できるというものだ。これを受けて大型割引店側では、消費者の利便性が損なわれ、雇用の減少につながるとともに、営業権の侵害、そして売上高減少への懸念などを理由に激しく反発している。違憲訴訟まで提起する一方で面、小規模の商業者は街の商圏保護などを理由に、さらに強力な規制を求めている。

 韓国では、2011年末、大型割引店とSSMの営業制限を骨子とする流通法が国会を通過しつつ、地方自治体がこれを適用するために最近、後続き措置に突入している。地方自治体が推進する主な内容は、①月1~2回の日曜日休日、②夜中12時~午前8時営業禁止などの制限を盛り込んでいる。

 すでに、韓国南西部の全州市などが条例改正案を通過させており、光州広域市も条例案を準備している。また、ソウル市も同様の規制のために、25個区役所に条例を改正するよう公文書を送っており、可能なら総選挙日(4月11日)前に施行するという立場だ。

 イー・マートやロッテマートなど韓国大型割引店の立場を代弁する韓国チェーンストア協会は、訴状を通じて「流通法と全州市の条例が強制休日と営業時間の制限を定めたのは、従業員に対する職業の自由を侵害した」とし、「コンビニエンスストアやインターネットショッピングモールは24時間営業できるにもかかわらず、大型割引店とSSMだけを規制するのは平等権を侵害した差別だ」と訴えている。
 チェーンストア協会によると、「全州市の条例のように、大型割引店とSSMが毎月2回、日曜日に休業する場合、年間3兆4000億ウォン(約2518億円)の売り上げが減少する」と主張する。

 一方、小商人団体連合会側は、「外国でも24時間営業はほとんどない。今回の規制だけでは弱い側面もあり、品目規制などをさらに追加すべきだ」といい、「大型割引店とSSMは日曜日に休業しても売上高が少し減るだけだが、我々街商圏の在来市場は死活問題だ」と訴える。
 このような騒ぎは、韓国の格差問題と深く関係する。大型割引店とSSMを運営する企業の大半が大手財閥、つまり韓国財閥の規模拡大戦略に伴って、街商圏が次第に侵食されているからだ。

 韓国30大財閥の総資産は1460兆5000億ウォン(約108兆円)、売上高は1134兆ウォンでGDPの96.7%(11年基準)。特に、サムスン、現代自動車、SK、LG、ロッテの5大財閥の売り上げ割合は、GDPの70.4%を占める(10年)。1980年から11年まで30大財閥の資産は70倍、売上高は48倍にまで膨らんだ。
 しかし、このような庶民向けの政策は、12年4月の総選挙と12月大統領選挙を控える韓国政界の政治的なしぐさという皮肉もある。空約に等しい福祉政策が蔓延し、ポピュリズム公約が乱発する「政治季節」が韓国に到来するからだ。
大手財閥の資金が投入されたSSM
大手財閥の資金が投入されたSSM
ソウル市内のある在来市場
ソウル市内のある在来市場

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